セックスしても出られない部屋

「ここはあえてセックスするべきだと思うんですよ、先輩」

「姫、どうしたらそんな考えが浮かぶのかな。わたしにはわからないよ」

 文芸部顧問に閉じ込められた二人は一通り脱出手段を試すのも徒労に終わったので、不毛な会話をまた開始した。

「だからダメだって言ったよね」

「でも先輩がなんでもしてくれるっていうから。それになんやかんやで先輩も乗り気だったじゃん」

「本当に漏らす気はなかったよ!!」

「またまたまた~」

 賢明な読者諸氏は気が付いているだろう。この二人は図書準備室が防音なのを良いことにお漏らし事件のみならず、他にもやらかしていることに。そしてその全ては顧問にバレており、二人の雑な後始末の後始末を顧問はしていた。

「先輩~、やっぱりここはセックスするべきだと思うんですよ」

「二回言ってもダメなものはダメだから」

「違いますよ。アレだけ完璧な隠蔽工作していても気が付かれていたことを鑑みれば、あの顧問、私達の蜜月を覗き見ていたに決まっています。だからこそのセックスです」

「まったく話がつながってこないんだけど」

「天岩戸ですよ。相変わらず馬鹿ですね。それぐらい馬でも鹿でもわかりそうなものなのに。先輩はこれだから」

 稲荷紺は、わたしが悪いの?という顔をする。

「じゃあヤリますね。先輩の処女、貰います」


 姫路りしゅうは稲荷紺に近づいていく。稲荷紺の少し癖のついたショートボブの髪を手で何度か梳いてから、少し名残惜しそうに手を髪から離して頬に沿えた。

「先輩……」

 稲荷紺は椅子に座ったままで、姫路りしゅうに身を任せている。前髪のそろったボブヘアの姫路りしゅうの人を挑発しているかのような力強い目に睨まれると、稲荷紺はいつも固まってしまう。蛇に睨まれたカエルのように、絶対的な捕食者の姫路りしゅうという後輩に身を任せて目をつぶる。

「姫……あぁ、うん。うちゅちゅう……」

 二人の唇が触れ合い、姫路りしゅうの舌が稲荷紺のくちびるを押し開ける。積極的に舌を絡める姫路りしゅうと頬を赤らめ拒否するそぶりを見せる稲荷紺。

「ふあぁ…ひめ…やぁあ……」

 稲荷紺から艶のある声が漏れる。姫路りしゅうは制服のブレザーの上から稲荷紺の控えめな乳房を探るように揉んだ。

 ガタン!と稲荷紺が座っていた椅子が倒れた。

「先輩、相変わらず地面に這いずるのが好きなんですね」

 と、姫路りしゅうは稲荷紺を見下げて言い放つ。

「姫ががっつくからだよ……」

 と、稲荷紺はそれに反論した。稲荷紺から見て姫路りしゅうは逆光で、だけどその目がギラギラ光っていて、唇を舐める舌が艶めかしく映って見えた。

 姫路りしゅうは倒れた稲荷紺に覆いかぶさる。手はスカートの中の太ももを伝ってその奥へと伸ばしていく。

「先輩…ニーソも脱がしますか?」

「……そのままでいいよ」

 稲荷紺はそう答えた。姫路りしゅうの指が稲荷紺のショーツにかかり、無理やり脱がされる。姫路りしゅうは自身の生足と稲荷紺のニーソに覆われた足を絡めつつ、ショーツを握った手でまた稲荷紺のスカートの奥を探っていった。

 日が傾き図書準備室が赤く染まっていく。下校時刻まであと一時間以上あった。稲荷紺と姫路りしゅうの情事を成す時間は十分残されていたのだった。

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