目に見えないもの

この世界は目には見えない力で溢れている


留まり続けようとする力


共鳴し合う力と反発し合う力


意思とは関係なく引き寄せ合う力  



それはオカルト的な意味ではなく


サンテグジュペリの言葉を借りるなら


目には見えないけど確かに存在しているもの

だと彼女は言った。

 


未来のことは誰にも分からない


しかし同様に形式化された絶対的なもの


というものもまた同様に存在しない



その因果と軌跡の最前列に


こうして私たちは立っているのだと



なぜそれを私に説いたのかと聞いても


彼女は含んだ笑みを浮かべ

その問いに具体的に答えることもなく



何れ分かる


そして私たちはお互いの事をずっと前から


知っている


貴方が忘れてしまっても


その事実は絶えず存在している




そう言い


困惑する私を嘲笑うかの様に


教室を去っていった



あまりの情報量と一瞬の出来事に


静けさを取り戻した黄昏から深淵へと移り変わる教室には 


呆然と立ち尽くす私とヒグラシの声が


遠く鳴り響いていた

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