彼方

@hima4200

アールヌーヴォー

絶え間なく流れる時空間と万物の存在


そしてそこに起きる日々のあらゆる事象は


時より既に形式化された決定事項で


ロマネスク建築の様に整然と


また時に重く立ち尽す


その認識の事実から逃れる事は


出来ないのだと感じる事があった




彼女と出会ったのは


まさにそんな事を考えていた頃で


高校2年の時にクラスメイトになり


フランス人の父と日本人の母を持つ彼女は


曲線美の整った体つきに


肩に亜麻色の髪を流し


欧風味がありながらも


また日本人特有の


親しみやすさのある自然体な顔立ちは


絢爛と呼ぶに相応しい出立だった




当にその時の私はというと


彼女の存在すらも予め定まった


形式だったものという意識が強く 


特段彼女に対して


興味を惹かれる事はなかった。


しかし人生というものは時より数奇な運命を


辿るものだと年を取るとまたつくづく思う




あの日、黄昏に沈み行く教室で


長くはない時間を共にしたあの日を境に


私がこれまで知る


私ではなくなった事を


今でもはっきりと覚えている。

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