国王陛下の訪問
次の日、
国王陛下は黒い竜に乗ってやって来た。
しかもお忍びと言う事で警護は僅か2人のみ、
カターナ国では考えられないが…。
初めて合うリアーナ国、国王陛下はまだ若くカイルとも親しげに話していた。
玄関まで出迎えたサラとボルテに挨拶を交わし、颯爽と室内へ入って行く。
「今年もバラが綺麗に咲いたな。」
陛下は玄関に飾った薔薇を見て嬉しそうに目を細める。
「私はここを譲り受けてから始めてバラ園に足を運びました。
亡き上皇后様が大事にされていたと聞いてはいましたが…あれほどまでに美しい場所とは知らず…」
「三年もここに居て初めてとは…
カイルはいささか忙し過ぎるな。
平和な日々が続けばもう少し休ませてやれるのだが。」
「それは陛下にも言えるのでは?
ここ数年国内のゴタゴタで旅行にも行けてないのでは?」
「たまにはいいなぁ。
のんびり何も考えず、釣りでもしたいものだ。
そうだ!その時はカイルも一緒に、もちろんサラ嬢も。」
そう言ってサラを見てにこりと微笑む。
陛下は背も高くカイルと変わらないくらいで、二人並んで歩いているととても絵になる。
陛下は上席に着くと早速ボルテに話しかける。
「ボルテ公爵、約三年も拘束されて…大変な日々だったと思います。
体調も回復したと聞きましたが、お変わりないですか?」
「お心遣いありがとうございます。
既に回復しております。
本日はわざわざ足を運んで頂きありがたき幸せであります。」
ボルテは丁寧に言葉を選びながら話す。
「サラ嬢は噂通り、本当に美しい方だ。
カイルと婚約したとの事、
嬉しい限りだ。おめでとう。」
「ありがとうございます。」
サラは深々と令嬢らしく礼をする。
「カイルとは軍教育時代から同級でその時からの仲だ。
なかなか硬い男だか、人間性は一押しだから安心してくれていい。少々、真面目過ぎて面白味がないがな。」
笑いながら言う陛下は親友の様な面持ちだ。
「今日は、サラ嬢に婚約の祝いをと思い立って急に来てしまって申し訳ない。ついでにバラ園も後で見せてもらおうかな。」
「わざわざありがとうございます。
本当に素敵なバラ園で毎日感動しております。是非ご覧頂きたいです。」
サラは緊張しながらも、微笑みを浮かべる。
「それより、せっかくですしバラ園でランチでもどうですか?」
カイルが気を取り直し、陛下を誘う。
ボルテもいかに庭が綺麗かを力説して、亡き上皇后の思い出話しに花が咲く。
それをサラは嬉しそうに微笑んで見守っていた。
夕方近くまで、陛下はカイルの邸宅に滞在し帰りは渋々家臣に連れられて帰って行った。
帰り際に、陛下はサラにこっそりと言う。
「晩餐会の時には是非、一緒にダンスを踊ろう。サラ嬢のドレス姿を楽しみにしている。」
にこりと笑顔を見せて去って行く陛下の後ろ姿を見送りながら、サラはダンスの練習をこれまで以上に頑張らなければと、焦りに似た感情に襲われたのだった。
「サラ嬢は、花は好きか?」
「はい。お花を見るとひと時でも穏やかな気持ちになるので、とても癒されます。」
「そうか。城にも年中花が咲く温室があるんだが、今度見に来たらいい。
晩餐会の前に早めに来てくれても良いぞ。」
陛下はにこやかに笑い、紅茶をひと口飲む。
「ありがとうございます。
早めに行けたら良いのですが…。」
サラは瞬時に難しいと思う。
カイルは日々忙しくしているしそんな我儘言える訳がない。それに、ドレスの完成がギリギリだと聞いている。
「カイルは警備の準備で早く城入りするのだろう?その時に一緒に連れてこれば良いのではないか?」
「陛下…、こちらの都合も考えて頂きたい。彼女もいろいろ忙しいのです。」
カイルがため息をつきながら話す。
「そうだな。
晩餐会が終わったらカイルに1か月休みを与えよう。サラ嬢とのんびりすると良い。」
そんな簡単に言ってのける陛下はさすが国王だが、大きな仕事ほど後処理が大変な事をカイルは分かっている。
それを部下に押し付けて休暇とは可能なのか?
難しい顔で考え始めるカイルを陛下は呆れたように
「あまり深く考えるな。
後の仕事は副団長に任せればいいのではないか?
お前は一人で仕事を抱えすぎている。
たまには自分の為に時間を使うべきだ。」
「少し考えるお時間を…。」
「それより、せっかくですしバラ園でランチでもどうですか?」
カイルが気を取り直し、陛下を誘う。
ボルテもいかに庭が綺麗かを力説して、亡き上皇后の思い出話しに花が咲く。
それをサラは嬉しそうに微笑んで見守っていた。
夕方近くまで、陛下はカイルの邸宅に滞在し帰りは渋々家臣に連れられて帰って行った。
帰り際に、陛下はサラにこっそりと言う。
「晩餐会の時には是非、一緒にダンスを踊ろう。サラ嬢のドレス姿を楽しみにしている。」
にこりと笑顔を見せて去って行く陛下の後ろ姿を見送りながら、サラはダンスの練習をこれまで以上に頑張らなければと、焦りに似た感情に襲われたのだった。
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