恋心

夜の帳が下り、澄んだ空に星が輝く頃。


空高く飛ぶ竜が一頭


バサバサっと羽音が響く


青く輝く竜が空から舞い降りる。


風を巻き上げ竜はバルコニーに着地した。


眠れず帰りを待ち続けたカイルは、はやる気持ちを抑え切れず竜に駆け寄る。


竜の背から滑り降りる小さな影を見つけて、おもわず抱き締める。


「良く戻った!!サラ…。


もう二度と、一人では行かせない。」

突然、抱きすくめられてサラは戸惑いを隠せない。


「カイル団長⁉︎

お怪我は?大丈夫なのですか⁉︎」

カイルが瀕死の状態だと聞いていた。


それなのにぎゅっと力強く抱きしめられ混乱してしまう。


「怪我は大丈夫だ。


サラが預けておいてくれた聖水のおかげだ。ありがとう…」


カイルは、サラを失うのでは無いかと思うと怖かった…

死ぬ事さえ怖くないと思っていた自分に初めて怖いものが出来た。


自分にとってかけがえのない大切な人だと自覚する。


「サラ…、

俺は…サラが好きだ。」


突然の告白に、サラの心臓は脈打ち顔から火が出そうなくらいだ。


「えっ…⁉︎」

頭が理解出来なくて、瞬きを繰り返す。


「だから、自分の事をもっと大事にしてくれ。帰りを待つ間、生きた心地がしなかった…」


抱きしめられていた力がフッと抜けて、温かな熱が離れて行く…。


…よく兄や父に同じ様な事言われたけど…

そう言う親心みたいなこと?


サラは今までずっと恋愛には疎くて、カイルの言う言葉の意味を、ちゃんと理解出来ないでいる。


今のは何だったの⁉︎


と、思うくらい自然にカイルはサッと離れて行ってしまう。

ブルーノを労いながら積荷を解いている。


この先も必要になるだろうと、聖水を四つの大きな瓶に入れ、持てるだけ持って帰ってきた。


足音が近付き、サラは我に帰る。


「姫! ご無事で何よりです!」


「ルイ?…良かった…みんな無事ね。」

微笑みルイのシワシワの手を両手で握り安堵する。

「お父様は?具合が悪いの?」


「ボルテ公爵は、薬を嗅がされていた様で決して良いとは言えない状態です…。

しかし、この聖水できっと元の体に戻るはずです。ルイ殿、急ぎましょう。」


カイルがそう言ってルイに聖水の入った大きな瓶を一つ渡す。


「姫、びしょ濡れではないですか!!

貴方はまず体を温めて休んだほうがいい。

お風邪を引かれてしまいます。

カイル団長、姫を頼みます。」


ルイはそう言って、瓶を大事そうに抱え先に行ってしまう。


「ブルーノ、お疲れ様。後でフルーツを沢山あげるからね。」

サラはブルーノを労い鼻先を撫でる。


カイルは濡れそぼったサラに自らの軍服を脱ぎ掛けてくれる。

「早く室内へ。」


そう言って、片手でビンを軽々抱え、先を行くカイルの後を慌てて追いかける。


執務室のベランダへ降り立ったサラは、そのまま自室へ戻ろうと思い、貸してくれた軍服を脱ぎそっとソファにかける。


今さっきの事もあって気まずい空気が流れる。


ふと、カイルを盗み見るとシャツに薄っすら血が滲んでいた。

「カイル団長、大変…。血が滲んでます。傷口が開いてしまったのでは?」


慌ててカイルに駆け寄り聖水のビンの蓋を開けてハンカチを浸す。


「早く、服を脱いで下さい。傷口を塞がなくては…。」

心配顔でカイルを仰ぎ見る。


「…大丈夫だ。自分で出来るから…

サラは早く風呂へ入って温まった方がいい。」

人の事には過敏な程心配するくせに、自分の事となると無頓着過ぎるとサラは思う。


「私は後でも大丈夫です。 

早く脱いで下さい。自分で脱がないのなら脱がせちゃいますよ。」


怒り顔でそう言うと、仕方が無いと言う風にため息を付いて脱ぎ出す。


「カイル団長は、自分の事に無頓着過ぎます。もっと自分を労って下さい。」


「それは、貴方にも言えるのだが…

雨の中無鉄砲に飛び出して、どれだけ心配したと思っている。」


カイルから思わぬ反撃をされてウッとなる。


「ご、ごめんなさい…。」

シュンとして俯く。


「無事だったから良かったものの……

もう、こんな思いは二度とごめんだ…。」


「私も…

カイル団長が、死んでしまうんじゃ無いかって怖かったんです…。

無事で良かった…。」

目に涙を溜めてサラが微笑む。


「…心配させて…悪かった。」

サラは首を横に振る。

どの仕草も可愛過ぎると、カイルは思わず抱きしめたくなる衝動に駆られるが、理性でなんとか抑え込む。


カイルにソファに座ってもらい、

サラは気を取り直して、傷の手当てをしようと包帯を取る。

思ったよりも痛々しい傷跡でサラはショックを受ける。

「これ…鉄砲ですか?…貫通してる…。

痛くないですか?」

ハンカチで傷口を押さえながら、サラは自分の事の様に痛そうな顔をする。


「そんなに痛く無いから心配するな。


…でも、出血が酷くて聖水が無かったら死んでたかもな…。」

他人事の様にカイルが呟く。


「これじゃあ。命が幾つあっても足りません…

この小瓶カイル団長にあげますから、肩身放さず持ってて下さい。絶対約束です。」

カイルが首から下げている空っぽになった小瓶に手をかけサラは言う。


小瓶に新しく聖水を入れカイルの首にかけ直す。

「サラ…後はいいから早く風呂へ、手が冷たい。見てるこっちが寒くなる。」


カイルはそう言って、サラが押さえていたハンカチを奪い隣の部屋を指差す。


「ここの風呂を使って、服はこの前街で買った服でいいだろう。」

そう言って、自室にサラを連れて行きクローゼットから箱を取り出す。

「マリナの店から届いていたんだが、渡すタイミングが無くてずっと預かっていた。」


「えっ?でもスカートはまずいんじゃ無いですか?」


「もう夜も遅い。

誰も起きていないだろうし、後でボルテ公爵の部屋に行くならこの服の方が良いだろう。」


「ありがとうございます。」

素直に服を貰い、お風呂に行こうとしてふと替えの下着が無い事に気付く。


「あの…、」


「なんだ?」


「えっと…替えの下着が無いので部屋に行って取って来ます…。」

恥ずかしくて、思わず顔が赤くなる。


「は?

俺が取って来るから早く風呂へ行け。どこにある?」


「えっ⁉︎ダメです、恥ずかしいです。

私が取って来るのでカイル団長は傷口を大人しく抑えてて下さい。」

慌てて言って出て行こうとする。


「ダメだ!

その格好で外に出るな、


…服が透けてるんだよっ。」


えっ?えーーっ⁉︎

自分の姿を見てその場にうずくまる。


「もっと早く言って下さい…。」

顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。


「…だから待ってろって言ってるだろ。取って来るから。」

シャツを羽織りカイルは廊下に出てってしまう。

「その方が恥ずかしいですって。」

サラは、慌てて膝掛けを被り走って追いかける。


廊下は薄暗く少し冷える。

「団長寒くないですか?」

心配して話しかける。


「お前の方が寒いだろ…。走るぞ。」

さっきまで流血してた人が走らないでっと思いながら、急いで着いて行く。


「だいたい何でお風呂が、団長の部屋にしか付いてないんですか?不公平じゃないですか?」

恥ずかし過ぎて、何か話さなければとサラはよく分からない抗議をする。


「それは俺のせいじゃ無いだろ。元からそうだったんだから…。」

バタバタと部屋に着いて、下着を抱えサラは出てくる。


「もう、パジャマでいいです。父に会ったら寝るだけですし…。」


何を拗ねているのか分からないが、カイルはスカート姿を見れないのかと、少し残念に思いながら部屋に戻る。


部屋に戻り、サラは言う。


「カイル団長はもう寝てて下さいね。

私1人で父の部屋に行きますから。」

そう言って、サラは風呂場へ行ってしまう。


「寝れる訳ないだろ…。」

好きな女がこんなに近くに居るのに…


さっき思わず告白めいた事を言ってしまったが…伝わっているのかいないのか…微妙なところだ。



ボルテ公爵の体調が整えばきっと、この場所から移動せざる得ないだろう。

サラと一緒に居られる時間は後、少ししか無い。そう思うとどんな些細な事でも、貴重でかけがえのない時間に感じる。



安心したら、なんか腹減って来たな。


カイルは起きてからクッキーしか口にしていなかった事に気付き、サラもきっと食べていないはずと、食堂に何か無いかと探しに行く事にした。


部屋の鍵は忘れずにかける。


カイルが部屋に戻って来た頃には、サラは風呂から上がっていた。


ガチャっと鍵を開けドアを開くと、サッとサラはソファの後ろに隠れる。

「何してるんだ?」


可愛すぎる動きにフッと笑ってカイルが聞く。


「えっ?カイル団長⁉︎

とっくに寝てるのかと思ってました…。」

ベッドとカイルを見比べて驚く。


「腹減ってないか?

食堂に行って食べ物を探して来た。」


「そう言えば…昨日からずっと食べてませんでした。」


「カイル団長も、もしかしてずっと食べてないんですか?」


「やる事が多すぎて忘れていた。」


「昨夜帰ってからずっとですか⁉︎」


「…ああ、サラが置いていったクッキーは食べた。」


「何でそんなに自分の事には無頓着何ですか?」


「…それさっきも聞いたな。…いいから食べるぞ。」

籠からパンやチーズ、トマトに夕飯の残りらしいマッシュポテトが出てきた。

後はりんごにバナナ。


「わぁ。美味しそうです。」

サラは、こんな夜中にこっそり食べるなんてちょっと悪い事をしてるみたいで、子供の頃を思い出してなんだか楽しくなってくる。

 

ニコニコしているサラを見てカイルは不思議に思い聞く。

「何がそんなに楽しいんだ?」


「子供の頃に兄とこっそり厨房から果物を持って来て、夜中に食べた事を思い出しました。」


「早く食べて、ボルテ公爵殿の所に行くぞ。

貴賓室はいくつも部屋があるし、風呂も付いてるから、今日からそこで休むといい。」


「そんな大切な部屋を父の為にありがとうございます。」


「国王陛下が来た時ぐらいしか使わないから大丈夫だ。」


いつまでも、ここにお世話になってる訳にはいかないとサラは思う。


カイルも察したのか、

「まだ、敵も誰か分からない、ここが1番安全なんだ。

長く居てくれて構わないし、気にしなくていい。」


「なんだか申し訳ないです。」


「それに、敵はサラの聖水の効果に気付いている。これ程までに癒しの力がある聖水を、手に入れたいと躍起になるだろう。


その場所を知るのは、サラとブルーノだけだ。これからは今まで以上に気を付けて行動しなくちゃならない。」


「…なぜ、気付かれたんですか?」


「誰かに尾けられたり、不審な人物に会ったりしなかったか?」


「帰って来る時に、赤い竜が飛んでいるのを見ました。ボルジーニ辺りの上空です。

雨なのに珍しいなと思って。」


「尾けられたか?」

カイルは眉間に皺を寄せ聞いてくる。


「いえ、雲の上を飛んだので。

カイル団長が前に教えてくれた景色を見てみたくなって。」

気丈に笑うサラを食い入る様に見てカイルは言う。

「怖かったな。良く、無事に帰って来てくれた。」

頭を優しく撫でてくれる。


「もう、今日は泣きませんよ。」

気持ちを吹っ切る様に立ち上がってサラは言う。

「…近くにスパイが居たんですね…

それは…。」


「今夜はもう遅い、貴賓室まで送るから食べたら行くぞ。」


「父と話しは出来ましたか?」


貴賓室へ向かいながらカイルに問う。

あれほどまでに会いたかった父だが、いざその時になるとなんだか怖い。


カイルの話しでは、長い間薬を吸わされていたらしく意識も混濁して歩く事もままならなかったらしい。

ふくよかで優しく笑う父しか想像出来ないサラはやつれて弱ってしまった父に会うのは勇気がいる。


「まだ、会話は出来ていない。

聖水を飲ませても、意識が混濁していたから…。でも、さっきサラが届けてくれた聖水でもっと良くなってるはずだ。」


カイルは軍服姿で先を歩く。

こんな夜中にわざわざ正装しなくてもと思うのに…。礼儀だからと譲らなかった。


サラはと言うと、兄のお下がりのパジャマはさすがにまずいと膝掛けをストール代わりに羽織って見た……

ルイに怒られるのは覚悟の上だけれど…。


「どうした?」

サラは無意識にカイルの制服の裾を掴んでしまっていた。


「あっ!ごめんなさい。…な、何でも無いです。」


「変わってしまった…父上に会うのが怖いか?」

カイルはサラの顔を覗きこむ。

「…大丈夫です。生きていてくれただけで…。」

唇をきゅっと引き締めてサラは言う。


ぎゅっと握りしめた手が震えてしまう。

その手をカイルはそっと大きな手で包み込む。

扉の前まで、カイルはサラの手を繋いで歩いてくれた。大きくて温かい手。不思議と安心感を与えてくれる。


♦︎♦︎♦︎


コンコンコン


夜中の廊下に響き渡る。


中からルイがそっとドアを開けて中に入れてくれた。


「私は、今夜はこれで失礼します。

ご家族で募る話しもあるかと思いますので。」

カイルは部屋に入る事なくそう言って、一礼し去って行ってしまった。


「姫…、その格好何ですか…。」


「だって、パジャマは兄のお下がりしか無くて…。」


「仮にも嫁入り前の娘が…子供じゃあるまいしはしたないとは思いませんか?」


「カイル団長にも言われたので…もういいです。ごめんなさい。」

怒られるのは覚悟の上だったが、いざ言われるとムスッとしてしまう。


「それより、お父様はどうですか?

もう寝てしまいましたか?」


「先程、聖水を一杯飲んで頂き今は休まれています。ご気分もいくらか良くなった様で顔色に血の気が戻ってきました。」


ベッドに案内され、恐る恐る父の顔を覗く。

痩せ細ってしまった父は昔の面影も無い…。


サラの目から涙が零れ落ちる。


「姫、公爵様はこんなお姿になってしまいましたが生きていて下さった。それだけで充分だとは思いませんか。」

ルイもサラの涙を見てもらい泣きしてしまっていた。


「そうね。明日からいっぱい美味しい物を食べて頂いたらきっと、すぐ元気になるわ。」


「さぁ。姫を長旅疲れているでしょう。

早く寝て下さい。」


ルイに促されて隣の部屋のベッドに追い込まれる。


長い一日が終わった。


父もカイルも生きていてくれた。

それだけで良かったと思う。もうこれ以上何も望まない。

後はルーカスの事…考えなくちゃいけない事は山ほどあるけど…。


温かい布団の中でサラはやっと眠りに着いた。


朝、サラは頭が痛くて目が覚める。

体が怠くて起き上がるのもままならない。


なかなか起きてこないサラを心配して、ルイが様子を見に来た時には熱が高く、喋る事さえ辛いほど喉が痛くなってしまっていた。


ルイが聖水を持って来てくれたので、呑んでみるが、一向に熱が下がる気配は無く。


この聖水は怪我は治せるけど、病気は治せない事を身を持って知った。


カイルは昼前にボルテの様子を伺いに来た。その際、サラが寝込んでいる事を知る。


「この聖水は怪我を癒す事は出来ますが、どうも病気までは治せない様です。」

ルイが言う。

「では、医者を呼んだ方がよろしいのでは?」


カイルは急ぎ、衛生部隊にいる軍医に連絡をする。


「お気遣いありがとうございます。

多分、今までの疲れが溜まっていたのではないかと。」


カイルは一目でもサラに会いたいと思うが、相手は公爵令嬢だ。

寝室に足を運ぶのでさえ失礼に当たるだろう。


「もし,よろしかったらルイ殿も大変でしょうし、身の回りの世話をする侍従を用意させて頂きます。」

カイルには団長就任の際、国王陛下から頂いた屋敷がある。そこに使用人が何人か居る。


長年その屋敷で働いていて,信用における者達ばかりだ。


「こちらで探さなくてはと思っていたので、大変助かります。」

ルイはふた返事で喜ぶ。


三時過ぎには二人の使用人がやって来た。


「今、こちらで秘密裏に要人を預かっている。

直ぐにでも屋敷の方に連れて行きたいところだが、体調が優れず静養が必要だ。

しばらく、こちらで世話をお願いしたい。」


「喜んで、ご主人様。

我が家の当主はなかなか帰って来ない為、掃除くらいしかする仕事が無く、退屈な日々を過ごしていました。

やりがえのあるお仕事、嬉しく思います。」


と、嫌味を言うのは20年以上屋敷に住み込みで働くマリーだ。

もう一人はその娘のカンナ。


「本来、女人禁制の場所だから少し暮らし辛いかも知れないが、何か要望があったら言ってくれ。」


最上階はフロア全体が貴賓室になっていて、使用人の部屋も幾つかある。

早速、部屋に案内して仕事に入ってもらう。


カイルはマリーに籠いっぱいの果物を渡しながら、

「サラ殿の様子を知りたい。出来るだけ細かく報告に来てくれ。」

と言って去って行った。


その一言でマリーは感付く。


「きっと、ご主人様の大切なお人だよ。

カンナ気を引き締めてお世話しなくちゃ、

我が家にもようやく春が来るかも知れないよ。」

俄然、カンナは張り切る。


「まぁ、素敵。

お母さん私がお嬢様のお世話をしますからね、お母さんはあんまり口出ししちゃダメよ。たちまち嫌われてしまうわ。」


「どう言う事だい。

私だってちゃんと身分をわきまえてるつもりだよ。うちのご主人様は何言っても怒らないから、ついつい揶揄ってしまうだけさ。」

そう言って笑うマリーは嬉しそうだ。


カイルが当主になってからまったくと言っていいほど手間がかからず、


世間では鬼と恐れられているが、

この三年、声を荒げる事は一度も無く、威張る事もまして使用人に手を上げる事も無かった。

それどころか、誕生日やお正月には休暇をくれて、臨時手当てまで出してくれる。

この優しい当主のおかげで、穏やかな日々を送くれているのだ。

 

親子二人気合いを入れて仕事に入る。


夕方、カンナはサラに食事を届ける。


「サラお嬢様、少しは口にした方が早く良くなりますよ。」

なかなか進まない食事が心配になって声をかける。

「ごめんなさい。

せっかく用意してくれたので食べたいんだけど…喉が痛くて飲み込めないの。」


今晩は、病人でも食べられようにパンをミルクに浸したパン粥や、柔らかく煮込んだ野菜スープ、食べ易い大きさに切った果物はヨーグルトにあえ、食べやすくしてみた。


「では、果物だけでもどうですか?

うちのご主人様がサラ様の為にと、沢山持って来て下さいましたから。」


「カンナさんとマリーさんは団長のお屋敷からわざわざ来てくれたの?」

サラが訪ねると,嬉しそうにカンナは言う。


「そうなんです。

うちのご主人様はなかなか帰って来ないので、それはそれは暇を持て余していました。

家族の方も居ませんし、ほぼ使用人の家みたいな感じですよ。」

ふふふと笑うサラは、なんとも可憐で可愛らしいとカンナは思う。


カンナがご令嬢に持つイメージは、いつも不機嫌で嫌な事があると使用人に当たる様な意地悪な感じだった。


しかしサラはと言うと、体調が悪いにも関わらず物腰が優しく、使用人にも気配りを忘れない。

この方だったら是非お屋敷に来て欲しいわ、とつい意気込んでしまう。


「我がお屋敷には薔薇園がありまして、専属の庭師が代々お世話をしています。

でも、ご主人様はまったく持って興味が無く、本当、宝の持ち腐れですわ。」

カンナの話を聞いていると、普段のカイルが垣間見れてなんだか嬉しく思う。


「カイル団長は忙し過ぎて、きっと心に余裕が無いのね。

綺麗なお花を見て和める程、世の中が平和になれば良いのに…。」


「確かに、我が国の平和を守る為に日夜頑張っているご主人様ですからね。我々の誇りでもあります。

とても優しい方なのに、少し前まで世間からは鬼などと言われてましたし。

そうだ、サラ様がお元気になられたら是非、お庭を観に来て頂きたいです。」


「ありがとうございます。是非観てみたいです。」

サラも、普通令嬢はその様に優雅な日々を過ごすのだと気付かされる。

自分の事を顧みて苦笑いをしてしまう。


「私、実はこちらに来てからずっと男装をして過ごしいたので…そう言った令嬢らしい過ごし方を忘れていたわ。」


くすくす笑うサラを見つめて、カンナは驚く。



「それは大変。早く元気になられてここから抜け出さなくては!

だから、お召し物が男性用だったのですね!!

こうしてはいられません。女性用のお召し物をご用意しなくては。

ご主人様ったら1番肝心な事をお話ししてくださらなかったから。」

 

憤慨するカンナを慌てて止める様にサラは言う。

「カイル団長にはお洋服をいくつか買ってもらったわ。

ただ、着る機会がなかっただけなの、

そもそも私が男装して入り込んだのがいけないのであって、カイル団長にはなんの落ち度もないので…責めないで上げてね。」


心配そうにカンナを見つめるサラに、努めて明るく笑い

「これからは、私にお任せ下さいませ。」

そう言ってカンナは急ぎ部屋を出て行ってしまう。


大丈夫かしら?と心配になりながらサラはその背中を見送るしかなかった。


夕飯を食べ終え、カイルはショーンと二人で執務室に戻るとドアの前に、今や遅しとカンナが待ち構えていた。


「どうした?サラ殿に何かあったか?」


「何かあったかではごさいません。大有りです。サラお嬢様をいつまで男装させておくつもりですか?」


サラの体調が急変したのかと心配したカイルだったが、話が違って戸惑いを見せる。


「…ここは一応、女人禁制であるし、サラ殿の情報を外部に漏らした輩もいたから、身の危険を感じている。


今、全団員の身元調査をしている所でまだ、安心して女である事を表沙汰には出来ないんだ。」


「それにしてもです!

せめて、あのフロアに居る時ぐらいは女性に戻ってもよろしいのでは?

ここにサラお嬢様の入り用な物をリストアップしましたので、御用立て下さいませ。」


リストを渡され、面食らいながらも全て任せようとカイルは思う。


「それは構わない。

俺の個人財産から使ってくれ。

ただ、本人の意志を尊重して欲しい。あまり周りで逆立っても、彼女が望まないのでは意味が無い。」


「望まない訳ないじゃ無いですか。

これだから軍人は女心が分からないと言われるんですよ。」


今まで母親に隠れて気付かなかったが、娘も同じ様な性格なのだなとカイルは思う。


「分かった。

好きにしてくれて構わないが、団員に知らせるのはもうしばらく待って欲しい。」


そんな二人のやり取りを大人しく聞いていたショーンだが、突然笑い出す。


「はははっ!これは良い。


僕も常々サラ殿については同じ事を思っていた。綺麗に着飾りたい年頃なのに可哀想にと。

そう言えば、国王陛下より晩餐会のお誘いもあったよね。」


「そうなんですか⁉︎

それは大変、急がなければドレスの発注に間に合わなくなりますよ。」


「分かってはいたが、いろいろ事が片付いてからだと…。」


「サラお嬢様には早く元気になってもらわなければ!」


「ところでサラ殿の容態はどうなのだ?」


「お熱はまだ下がっていませんし、喉が痛い様でご飯もあまり召し上がりません。

しかし、病は気からです。

この先の楽しみをお伝えすれば、きっとすぐに元気になります。」

どうも、この親子には敵わないなとカイルは思い、

「分かった。

全て任せるからサラ殿と一緒に決めてくれ。」


お手上げだと言う感じに、全てを委ねる事にする。


「良かった良かった。お前にもお節介を焼いてくれる人がいたんだな。」

ショーンはそう言ってカンナの持って来たリストを見る。


「しかし、この全部をお前が負担するのか?婚約者でもあるまいし。」

確かにサラとカイルの間には何の繋がりも無い。

ただ、彼女が喜んでくれるならと言う純粋な思いと、着飾った姿を見たいと言う単純な男心だけだが…


「サラ殿が、近くにいる間だけでも生活の糧になるのであればそれでいい。

それに、貯まるだけで使い用の無い財産だしな。」


「ご健勝な事だな。そんなんでいいのか?

いつか知らない誰かに掻っ攫われるんだぞ。

そうだな、

きっと晩餐会で見初められて多くの貴族どもから声かけられるんじゃないかなぁ。」


「何が言いたい。」

ムスッとした顔で、ショーンを睨む。


「いいのか?他の男に取られてもって事だよ。好きなんだろ?」


これじゃあ埒が開かないとショーンは単刀直入に言う。


「…気持ちだけじゃ踏み出せない。身分も違えば国も違う…。」


「このご時世、身分なんて二の次だろ?

そうだな、俺が父親だったら後を継いでくれような貴族出の三男坊辺りが丁度いいだろ。

俺なんか結婚相手としてはぴったりだ。」


「勝手に言ってろ。」


「あっ!馬鹿にしてるのか?俺だって貴族の端くれだぞ。」


「俺が親だったらまず、酒飲みの遊び人は却下する。」


なんだかんだと二人言い合いながら、団員リストに目を通しこれ以上の情報漏れがない様慎重に吟味する。



「この際、経歴三年程の若い団員は皆、他の駐屯地に回せないか?」

細かい作業が苦手なショーンはそう言って既に仕事の手が止まっている。


「そう言えば、ルーカスの父親だが、体調が思わしくないらしい。

サラが元気になってくれたらすぐにでも聖水を分けてもらえないか聞けるのだが。」


「お前の一存で決められないのか?

助けてやりたいんだろ?」


「聖水はサラの物だ、勝手に使う訳にはいかない。」


「さすが堅い男だな。


それならそれを踏まえて会いに行ってこればいいじゃないか。俺だったら直ぐにそうする。何を遠慮してるんだ?」


「ボルテ公爵の体調が思わし無い今、勝手に会うのは気が引ける。」


「迅速かつ巧みな作戦で、今まで勝戦をして来た男が何言ってる。

本当、自分の事となると慎重過ぎて笑えるよ。」


「はっ⁉︎

駄目に決まってるだろ。

病で伏せってるんだぞ、そんな姿簡単に見せられるか。」


「それが本音か。」


「俺じゃ無い…、身内だったらそう思うだろ?普通。」


「嫁入り前の大事な娘だしなぁ。ちょっとルイ殿に声かけてみるかな?」

ショーンはヒョイとソファから立ち上がり部屋を出て行こうとする。


「おい!!仕事を放棄するな。」


「お見舞いだって立派な仕事だ。 

俺に任せろ、ルーカスの事もついでに言ってきてやるから。」


「辞めろ、お前に任せて良かった事は一度も無い。

勝手に面白がってかき混ぜるだけだろ?俺が行くから!!」

急いでショーンの肩を掴み止める。


「お前が行くんなら任せるわ。」

ショーンはあっけなく引いてまたソファに座る。


「…計ったな。」

ギロっとカイルはショーンを睨む。


「お前は自分の事になると、いろいろ考え過ぎてまったく動かなくなる。

悪い癖だぞ。

その間に大切な物を他人に奪われるハメになるんだ。」


カイルは言ってしまった手前、サラの見舞いに行かざるおえない。


行きたくない訳では無い。


内心気になって仕方がないし、会えるのならばいつでも会いたい。


だが、俺みたいな平民出の軍人に、ボルテ公爵は近付いて欲しくないのではないかと思う。


サラは美しく性格だって申し分なく、素直で優しい。

少し無鉄砲で気が強い所も、目が離せなくて可愛いし、誰だって彼女を一目みたら惚れてしまうだろう。


そう思うと勝手にため息が出てしまう。


今まで、出生について引けを取るとは思わなかったが、ここに来て貴族出のショーンが正直羨ましいと思ってしまう。


こればかりは、どうしようも無い。


早速、カイルはボルテ公爵の寝ている部屋に行き、ベッドに近付き声をかける。


「お久しぶりです、ボルテ公爵様。」

頭を下げて臣下の礼を取る。


「これは…

久しくお会いしてなかったな。

カイル団長、この度は私の為に手を貸して下さったと聞いて、ありがとう。」

まだ、声に力は無いかはっきり話すボルテを目にして、昔の面影を見つけ嬉しくなる。


「こちらこそ。

微力ながらボルテ公爵様を救い出せた事、嬉しく思っております。

思いのほか、お元気になられて安堵しました。」

カイルは嬉しさを隠さず笑顔で気持ちを伝える。


「まだまだ体力が持ちませんが、何とか生きながらえた所存です。

娘のサラの事もいろいろお世話になったと聞いています。本当にありがとう。」


「いえ、御子息のリューク様の事、心よりお悔やみを申し上げます。」

一同はリュークの事に思いを馳せる。


頭を下げるカイルにボルテは笑みを浮かべて話しかける。


「リュークはとても妹思いの良い兄だった。


親より先に死んでしまった事は無念だが、きっとその魂はサラと共に生き続けるだろう。」

そう静かにボルテが言う。


「サラは幼い頃に母を亡くしたせいか、兄のリュークに1番懐き、いつも兄の後をついて遊ぶような子だったんだ。


そのせいか、いささかお転婆で無鉄砲な所もあって、手を焼かれたかと思うが大丈夫だったかな。」

優しい笑顔を向けられカイルは苦笑いする。


「始めは本当にリューク殿かと思ってしまい、大変失礼をしました。」


「あの子の事だ。

一緒に剣術や乗馬を覚えたいと言って困らせただろう?」


「その通りです…。」


「子供の頃も良く事ある事に、お兄様は狡いと怒って一緒に着いて行こうとしておりましたな。」

ルイも加わって思い出話しに花を咲かせる。


「本当に、男に生まれるべきだったと思う時もあったな。」

2人が楽しそうにサラの話しをするのを、カイルは微笑んで聞いていると、お茶の支度を整えてカンナとマリーが顔を出す。


「公爵様、こちらカイル様の差し入れのプディングです。なかなか手に入らない有名店の物なんですよ。是非お食べになって下さいませ。」


「そうか、美味そうだな。」


ベッドの上で食べられる様にお盆に乗せ手渡され、ボルテ公爵はスプーンで自ら口に運ぶ。

昨日まで自分で食べる事さえままならなかったと聞いていたので、回復の早さにカイルも目を奪われる。


「既に、自分で食べられようになったのですね。回復の速さに驚きます。」


「姫の聖水のおかげですな。」

ルイも嬉しそうだ。


「時に、カイル団長。

この部屋まで無償で貸して頂き、使用人までお借りし、なおかつサラに服まで買い与えてくれると聞いたが、それはとても申し訳ない。

私が払わねばならないと思うのだが、しばらく国にも戻れそうに無く要立てるのが難しい。


そこでとは言ってはなんだが、これを納めてもらえないか?」


サラが休んでいる部屋にカンナが案内する。


「寝ている様なら、また今度でいいから。」

と一応の断りを入れる。


様子を見に行ったカンナが戻って来て部屋に通してくれる。



「カイル団長、差し入れありがとうございます。」

ベッドに座って頭を下げるサラはあまり元気が無い様に見える。


「熱がまだありそうですね…

横になってくれて構わないので。」


カイルが敬語てそう言うので、

違和感を感じてしまう。


「大丈夫です。せっかく来てくれたので、ちゃんとお話しがしたいです。」



「お嬢様、カイル様からプディングの差し入れがありますけど、お食べになりますか?」

カンナは食欲の無いサラに少しでも食べて欲しいと思って言う。


「後でいただくから取って置いてね。 

カンナさん、カイル団長にお飲み物をお願いしていい?」


「はい。ただいま用意いたしますね。」


カンナはベッドの近くに椅子を用意してカイルに座るよう促し、お茶の仕度をしに部屋を出ていった。


「時間を作ってくれて、ありがとう。」

 

とお礼を言ってカイルが座る。


「お礼を言わなければいけないのは私の方です。

お洋服の事やドレスまで用意してくださると聞いて申し訳ないです。」

頭を下げる。


「いや、当たり前の事をしているだけだ。

気にしないで欲しい。


…それより、ボルテ公爵から短剣を預かったんだが…これサラから返して貰えないか?」

懐から短剣を取り出しサラに渡そうとする。


「保険だと思って持ってて下さい。

父も私もその方が気持ちが少し楽になりますから。」

サラからも押し返されカイルは困ってしまう。


サラは話しを断ち切り、


「このパジャマ、カンナさんが早速用意してくれたんです。」

嬉しそうに笑う。


ふんわりした桜色のネグリジェに白いカーデガンを羽織っていて、女の子らしくてサラによく似合っている。


「その色、サラに良く似合っている。」

カイルがそれとなく誉める。


「顔色が悪いな…熱はまだあるのか?」


そう言って、サラの額をそっと触ると火傷しそうなほど熱い。


「まだ、相当熱いな…。

早く横になった方がいい…俺の話はまた今度にする。」


そう言って立ちあがろうとするので、サラは急いでカイルの手を握る。


「大丈夫です。もう少しここに居て下さい。」


「…じゃあ、少しだけ。サラは横になってちゃんと布団に入った方がいい。」

そう言われサラは素直に横になり、枕に頭を乗せる。


「カイル団長のお話は?」


「ああ、体調の悪いサラに話すのは酷で気が引けるが…。」


サラから握られた手が熱くて心配になる。


「ルーカスさんの事ですか?…」

さすがにサラも気付いていた。


「…そうだ。

ルーカスがサラに偽りの情報を流した。」


「今は何処に?」


「とりあえず地下牢に入っているが、尋問が終わり次第明るい場所に移すつもりだ。」

カイルはサラの顔色を伺い、先を話すべきか迷う。


「その話しをする為に来られたんですか?」


「ああ、ルーカスはサラと同じ様に父親を人質に取られていて、仕方なく指示に従わざる終えなかったんだ。」

眉をひそめてカイルが話しを続ける。


「父親が自宅に帰ったようだが、ボルテ公爵と同じように薬を嗅がされていたらしく…具合が悪いらしい…。」


「大変!聖水を届けてあげなくては…団長に頼めますか?」

サラは迷わずそう言って、サイドテーブルの上の瓶を指差す。


「いいのか?」


「その、瓶を持って言って下さい。」


「ありがとう。」


机の瓶を取り、サラにお礼を言う。


「私も、ルーカスさんと話しがしたいので元気になったら会わせてくれませんか?」


「…分かった。

会わせてやるから、早く元気になってくれ。」

そう言って、サラの頬にかかる髪を耳にかける。

サラはほんの少し触れられるだけで、ドキッとしてしまう。


ガチャっとドアが空く音がしてカイルはパッと手を離し、椅子にサッと座る。


それが少し可笑しくてサラは思わず笑ってしまう。


「サラお嬢様、少しは元気になりましたか?」

カンナはそう言ってカイルにコーヒーを出す。


カイルはコーヒーをカップごと受け取って一口飲み、ベッド横のサイドテーブルに置く。


「サラ殿、何か食べたい物はありませんか?

少しでも口に入れた方が早く回復します。好きな果物とか何かありませんか?」


突然、また他人行儀に敬語で話すカイルを不思議そうに見上げてからサラは考える。


何が欲しい物を言った方が毎日会えるかしら?


「蜜柑とか柑橘系が食べたい気分です。」

そっと答えて、カイルの反応を伺う。


「明日、町に偵察へ行くのでついでに探してきます。」

そう言ってカイルはコーヒーを一気に飲み干して立ち上がる。


「また、明日お届けに上がります。

それまでちゃんと体を休めて下さい。

では、今夜はこれで失礼します。」

サラに一礼して部屋を後にする。


「引き続き連絡を頼む。」

と、見送りでドアまで付いて来たカンナに告げ部屋を後にする。



サラは布団に顔を埋めながら、なぜカイル団長は急に敬語て話したんだろうと思っていた。

なんだか一線引かれたようで寂しく思う。


昨夜、確かに、好きだって言ってくれたけど…

夢だったんじゃないかしら…。



ルーカスにも会って話しが聞きたい。


きっと後悔してるはず、どんな刑が下るのだろうと心配になる。


親の為に仕方なく指示を受けただけ、私も結果的に無事だったんだし、出来るだけ恩情で軽くして欲しい。


あんなに、竜騎士団の事もカイル団長の事も尊敬してたのに本心では裏切りたくなんてなかったはず。


「カンナさん、プディング持って来てくれる?

なんだか無性に食べたくなってきたの。」

サラはそう言って、ちゃんと食べて早く元気にならなくっちゃと思う。

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