第4話 第三話

少しずつ異変は迫りゆく。

ずっと前に貰った「ラージ」という、名前の割にはちっさいダイヤを手にしてから、メタいがそれがアニメに出てこなくなるまでは早かった。

あの頃、俺は密かにこのラージを使って人間を殺していたが、アダトはどう見ても使わなくなった。

それはつい二日前の話だった。


アダト「なぁ、ルカさ」

ルカ「なんだい」

アダト「お前さ、お前さ、お前さ…」

ルカ「なんだって、こぇぇよ」


アダト「お前さ、正直このダイヤどう思うよ」


ルカ「え?それって、正義のダイヤなんだろ?俺はいると思うけどなぁ」

アダト「……俺はいらねぇな」

ルカ「どうしてだよ!正義のダイヤだぞ!」

アダト「いらねぇな」

ルカ「おかしい、人間を殺せるんだぞ!これさえあれば」

アダト「俺はいらないし、こんなものがこの世に存在していては計……」

アダトは小さく何かを呟き、やがて俺に憎しみの顔を向けてきた。

アダト…

そんなにアダトは自分の手で、殺したいのか。

そんなに憎むようなことをされたんだ。


同情した俺は、アダトの肩をポンと叩く。

ルカ「大丈夫だ、必ずアイツらを殺そう」

アダト「……こんなもの!!!」

俺はアダトがラージを床に叩きつけて壊すところまで見たが、すぐにアダトに同情の目を向けた。



だがアダト、俺はお前を裏切る。

俺は何としてでも人間を殺したい。

憎しみしか勝たない。

レイを殺した奴らを、俺は許さない。

お前らがいるせいでこの世はなんと生きづらくなってしまったんだろうか……!






「…、と、書かれています」

「嘘も大概にしろ、あんなゴミが自我を持つはずがない」

「いえ、しかし翻訳するとこんなふうに…」

「お前も、我ら人間の裏切り者か!!!

人間のフリをしやがって!!」

「ぐっ」

音響ホールなのに対してその声は響かず、鈍い鉄の音と共に生臭い液体が奴の手を伝う。


アダト「………敵め」

研究員「うわ…」

アダト「あ?」

研究員「いえ、いえ、何でもございません」

アダト「お前は俺のお墨付きだからな。こんな新人のように嘘はつかないよな?」

研究員「はい…」

アダト「ところでだ。SEIRA-5648の様子はどうだ」

研究員「現在は呼吸も安定しており、動いている様子も見られないので恐らく寝ているかと」

アダト「RUKA-999が引き起こした愚かな爆発があってもこれだ。やはりセイラはサイコパス、兵器としては適に適している」

研究員「アダト先生がお作りになられたからかと」

アダト「当たり前だ、俺は天才研究者だ」


俺は網中アダトだ。

お前ら、これを見ているということは我が研究部に所属したいのか。

高学歴で、「絶対に裏切らなければ」誰でも別にいい。

俺は先代から受け継いだ「自我系兵器」を開発している。

まあ簡単に言えば、誰が作ったのか分かんねえぐらいにかなりクソなこの世界を壊し、俺だけの世界を作る為の兵器だ。

しかし今作っているのは今までとは少し違い、「兵器」というよりは「殺戮マシーン」といったほうが正しいだろう。

要するに、人を殺すのが大好きな、自我を持った機械、ということだ。

当初はただの殺戮マシーンを作る予定だったが、俺は俺に逆らう奴らを殺していく中で「人を残酷に殺す楽しさ」に気づいてしまった。

しかし自我を入れるには、誰かの魂を入れなければならない。

その為、当初俺の恋人だった「夏忌セイラ」を殺し、魂だけを殺戮マシーンに注入した。

おかげで俺の言う事を聞く殺戮マシーンができ、毎日愛でてやっている。

ところがな、つい一年前に一度呼吸が乱れたことがあった。

俺は不安に思い、「RUKA-999」という、セイラの欠陥品のようなマシーンを作った。

勿論奴に自我はない。


研究員「しかし何故奴は暴走してしまったのでしょうね」

アダト「そもそもアイツの監視役に誰を選んだか分からんな…」

研究員「お忘れで?例の「危ない女」です」

アダト「あ…D39のあいつか?」

研究員「そうです。犠牲ナンバー39番の人間です」

アダト「まあアイツは何だかんだ、何かを察しているようだったからな」

研究員「まるでこの世の全てを知っているような感じでしたね」

アダト「もし暴走しても奴もアイツも死ぬから一石二鳥だしな。」

研究員「ところで奴のこのレポート、どうしましょう」

アダト「でももしここに書いてある奴の遺言がさっきの言う通りなら…」

研究員「言う通りなら?」

アダト「未来を…予言しているかのようだな」

研究員「あれ…確かに…なんで先生と奴が友達のようになっているんでしょうね…」

アダト「奴の創作だろうが…

これにのってみるのもありかもしれない」

研究員「え!?そんな…奴は死んだんじゃ!」

アダト「ははは…生きてたらの話さ…!」

研究員「そ、そんなぁ…あっはっは…」

アダト「はっはっはっは!!!!!!!!」


今度はちゃんと、研究所の隅にまでに声が響き渡った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【クレイジーワールド番外編】クレイジースタート 時雨☆ @AYANgggkkk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ