第130話 第3部第39話
地球世界側ではデウス・エクス・マキナを展開した三崎が怒涛の勢いでモンスターの大軍を殲滅し、その討ち漏らしは周囲に展開したダンジョン庁の特殊作戦群や自衛隊が片付けていく。
そしてタッシュマン王国側では概念武装
更にそれを見たエリン、リリー、ジャミールなどの第7軍団の面々もそれぞれの武器を手に異界の門目掛けて突き進んでいく。
魔族の魔力を元にして再構成された魔物達が世界へどんどん溢れてくるが、ルクレティアの概念武装の効果もありその勢いもやや衰えている。
そんな魔物の軍勢を手当たり次第に殲滅していくタッシュマン王国の面々。まさにここが分水嶺。
地球世界側、タッシュマン王国側の双方が全力を振り絞り魔物の相手をしている中。
ついにレネとジェズはモンスターの壁を突破して地球世界側の異界の門に辿り着く。ここから先は次元世界同士をつなぐ次元の回廊。
普段は次元世界同士がお互いに干渉しないようにクッションとしての役割を果たしている異空間。
その異空間はいま、錬金術師ヴィクター・アルケミスの擬似神器Perc
その異空間はとんでもない高密度の魔力場となっており飛び込むのが躊躇われるほどだったが。
「早く来い!!!!」
回廊の向こう側、タッシュマン王国側も門からヴィクターが叫ぶ。どうやらあちら側で門に最初に到達したのはヴィクターらしい。
そんな彼は「くそっ、今は出てくんなよ!?」と何やら悪態をつきながらも姿が見えないがそこに在る存在と何やら争っているようだが。
「レネ姫、行きましょう」
「あぁ、手は離すなよ?」
腹を括ったジェズとレネはそのまま次元回廊に飛び込んだ。レネの炎の翼を羽ばたかせて一直線に進もうとするが、
「なっ!?」
次元回廊に飛び込んですぐ。圧倒的な魔力場の密度によりレネの炎の翼が霧散する。上下左右の感覚すらない異空間。懸命に手足をばたつかせてそのまま前へ進もうとするレネとジェズだが、思ったように動けない。
焦る二人。だがその時、
「焦らないで!しっかりしたイメージを持って進むのです!!私たちの国を、日常を、大切な人たちを!世界はその想いに応えます!!!」
門に辿り着いたルクレティアが叫ぶ。彼女の周囲では大司教や聖騎士たちが彼女を守りながら戦っている。そして聖女は概念武装を展開したままで更に祈りを捧げた。
「無限の愛と慈悲に満ちたる神よ、その存在をこの地に現し給え。全ての闇を祓い、苦しみを癒し、心に安らぎをもたらさん」
ルクレティアの詠唱と共に彼女の周囲に魔力が集中し始める。
「神々の御名において、我らに希望の光を授け、導き給え。この地に降臨せし聖なる存在よ、全ての者に安らぎと救いを与えん」
更に魔力だけでなく、この世界の存在の力というべきものまでが集い。
「その力と御業を示し希望の光を照らしたまえ。今ここに降り立ち、我が祈りに応えん!神聖魔法
その力がジェズとレネへ届く。神聖魔法
そんな最強格のバフ魔法をルクレティアはここで使う事で、ジェズとレネがこの世界の人間であるという事を次元回廊に認識させた。
支援魔法が届くと同時、レネとジェズの足元には地面が現れしっかりと動けるようになる。次元回廊の中を再び駆け出すレネとジェズ。
だが彼らの足元もどんどんと崩れていく。間に合うか?二人は焦りを感じつつも全力で駆けていくがギリギリの所で足場の崩落が彼らに追いついてしまう。
もう少し。本当にもう少しで門に辿り着くのにあと僅かが届かない。
ここまで来て!!一瞬の間。レネを抱き抱えたジェズは、そのまま彼女を門の外へ向かって投げた。
「なっ!?ジェズ!?」
門を超え、リリーに抱き止められたレネが慌てて手を伸ばそうとするが届かない。そんなレネ姫を見つつ、やっちまったなぁ、とぼんやり考えながら崩壊する足場と共に次元回廊の狭間に落ちていくジェズだったが。
「ジェズっ!!!!」
門から飛び出してきたエリンに抱きつかれる。
「なっ、お前!?」
抱きついてきたエリンに驚くジェズ。このままでは彼女まで一緒に次元世界の狭間を迷うことになりかねない。何をしてるんだ!!!と頭が一瞬で怒りに支配されそうになり、怒声をあげようとするが。
「ん」
そのまま口を防がれた。本当に一瞬の事。状況が状況なのに惚けてしまうジェズ。そんな彼の胸元に頭を預けるエリン。
「そんなに怒らないでよ。……本当に心配したんだ」
エリンのその言葉を聞いてはっとするジェズ。こんな状況じゃなければな思いつつ、
「悪かったよ。ただ、ここから先はどうなるかわからないぜ?」
「大丈夫。私はもうジェズの事を離さないから」
そしてニコリと笑ったエリンはそのまま門の方を見ると。
「ジャミール!!!あとは頼んだ!!!!」
と門の外に声をかけた。よく見るとエリンの左手にはロープが。腰にもそれが結び付けられている。
「任せなぁ!!!!!!」
掛け声と共に引き上げられるロープ。ジャミールやファティマ達アルファズ隊の面々がギリギリで間に合っていたのだ。
彼らによって次元回廊から引き上げられるエリンとジェズ。そしてついにジェズは王国の地を踏んだ。レネとジェズ、二人はついにタッシュマン王国に戻ってきたのだった。
しかし。
「ヴィクター!この門はどうなるんだ!?」
未だ門は健在。非常に不穏な気配を発したままでそこに存在している。しかも閉じる気配が無いが。
「わかってる、これから閉じる。ただ一人じゃ難しいからな。あちらの世界にも協力してもらうさ!!」
そういうとヴィクターは次元回廊越しに日本語で語りかけた。
「三崎考!!今から次元回廊を閉じる!!協力してくれ!!!」
「当たり前だ!任せろ!!!」
そしてついにタッシュマン王国が誇る最強の錬金術師と日本が、地球世界が誇る最強の探索者の一角が力を合わせる。
「「永劫の彼方より降りし力よ、我らが声に応え真実の道を示せ。時の輪廻を超え全ての存在を束ねる力よ、我らに集え」」
三崎が発動中の固有魔法デウス・エクス・マキナ。そしてヴィクターが発動中の擬似神器Perc
「「次元の壁を越え、無限の知識と力を一つに結びて究極の力を顕現せん。過去の偉大なる者たちよ、その智慧と勇気を我に授け未来を切り拓かん」」
地球世界、タッシュマン王国側。それぞれの世界においてそれぞれの世界を象徴する力が強まっていく。
「「運命の糸を紡ぎ時の流れを自在に操り、全ての時空を統べる力を今ここに示せ。我らの名の下に全ての次元を掌握し、絶対の支配者とならん」」
三崎、ヴィクターそれぞれを起点にして濃縮され可視化された魔力の嵐が吹き荒れる。
「「その神威を解き放ち全ての世界を平定せよ。星々の光よ、永遠の輝きを我に与えよ。天の理を超え地の法則を超越し、全ての存在を包み込む力を顕現せん」」
そしてそれぞれの世界の存在の力が増幅し、門へ強い圧力がかかり始める。
「「天と地の力を結集し、全ての次元を支配する力よ我に宿れ。過去と未来の全ての記憶を繋ぎ、無限の可能性を引き出せ。運命の紡ぎ手よ、我が意志のままに全ての時空を織り成せ」」
軋む門。圧倒的な力によって徐々に閉じられていくそれは断末魔のように次元回廊から魔物を溢れさせるがそれらの尽くも塵と化す。
「「その絶対なる力を示し全ての存在を支配せよ。今ここに我らが名のもとに、全ての次元を掌握し無限の未来を切り拓かん。世界級固有魔法
そして門は閉じられ、異なる世界は再び別々の時間を進み始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます