第128話 第3部第37話
地球世界市ヶ谷駐屯地演習場ではフル装備のレネと三崎、そして模擬戦を見守っていたジェズが。
アゼリオン大陸タッシュマン王国東方、人類未踏領域の古代遺跡群にはヴィクター、エリン、リリー、ルクレティア達や魔族。
そしてその古代遺跡群すぐそばにはラージャ・ラージ率いる第5軍団3000名と魔物軍5万が。
あまりにも高密度な魔力を持つ者達が意図せずに一箇所に集結し、更にヴィクターがうっかり古代遺跡群を起動してしまった事でついに二つの世界をつなぐ次元回廊が形成された。
地球世界では市ヶ谷駐屯地演習場にダンジョン反応が観測されると同時に第一種警戒警報が発令。都内中心部ではサイレンが鳴り響き市民の避難が開始される。
“市ヶ谷でダンジョン!?”
“しかも地上開放型!?”
“これガチでヤバいでしょ”
“付近の奴らは早よ逃げろ!!”
“三崎頑張って!!”
市ヶ谷にダンジョンが現れたまさにその瞬間をダン研オフィシャルチャンネルの配信は捉えていた。
今回出現したダンジョンはまさかの地上開放型。これは一般的なダンジョンとは異なり地下や洞窟などの特定エリアが異界化する事でダンジョンとなるのではなく、文字通り異界の門から地上に直接モンスターが溢れ出すダンジョンを指す。
これまでにも世界各地で数例が確認されているが、いずれのケースにおいても出現した地域に甚大な被害を及ぼしていたのが地上開放型ダンジョンだ。
都市がまるまる一つ消滅したケースもある程の危険な状態。これだけでも珍しい状況だが。
“ん?”
“なんだあれ?”
“門の向こう人がいるぞ!?”
“まじかよ”
“しかも門の向こうでも戦ってね?”
“マジで異世界来た?”
モンスターが溢れ出ようとしている門。異空間を隔てたその向こう側にも何やら世界が見えた。あちらはあちらで戦っているらしいが、門の向こうに人がいるなど前代未聞。
しかもあちら側の人物と、ジェズ・ウィストを名乗る人物が会話を交わしていた。どうやら知り合いらしい。
配信を視聴していた100万人を超える世界中の人々が、門の先が地球上のどこかに存在しないか一斉に調べ始めるが。
“おいおいおい”
“該当するエリアが見つからないらしいぞ”
“マジで異世界説”
“ガチで歴史変わったな”
“ダンジョン出現以来の大事件よな”
どうやらプロの探索者や研究者、政府関係者が地球上のダンジョンなどの利用状況を調べているようだがどこにもヒットしない。
これはいよいよ本当に門の向こう側が異世界な可能性出てきたか?と興奮に包まれる世界中。
だがしかし、
「マスター!?日本中のダンジョンの魔力場が不安定になっています!?」
「それはヤバいな、この門のせいか?」
三崎の秘書官であるアルファが手元の端末を操作しながら三崎に各地のダンジョンの異常を知らせる。彼らの目の前の異界の門が開いたと同時に日本中のダンジョンが異常活性。
更に日本にとどまらず地球世界における世界中のダンジョンが異常活性しつつあった。詳細な原因は不明だが、タイミング的にどう考えても目の前の門が悪さをしているのだろう。
やり方はわからないが、恐らく目の前の門をさっさと閉じないとこの世界が壊れる。溢れ出たモンスター達を屠りながらも三崎は対策を考え始めるが。
「ジェズ!!!早くこっちに戻ってこい!!この門、早く閉じないとヤバいぞ!!」
門の向こう側の世界。暗く長い回廊の向こう側からこちらに世界に叫ぶ白衣を着た男。その彼が何かを叫んでいるが言葉が分からない。
だがどうやらジェズを呼んでいるらしい。それに気づいた三崎は近くで戦っているジェズに声をかけた。
「ジェズさん!あちらの人は知り合いですか!?」
「えぇ!!俺達が元いた世界の友人です!!門を早く閉じないとやばいと言ってます!!」
その言葉を聞いた三崎は周囲の状況へ対応しつつも更に確認を進める。
「もう少し状況を詳しく教えていただけますか!?」
三崎のもっともな質問を受けたジェズは戦いの合間合間にヴィクターへ回廊越しに確認を進めた。二人のやり取りをフォローする形でレネもジェズの周囲のモンスターを狩り続け、そんなレネの存在に気づいたエリンやリリー達が気勢をあげる。
ついにジェズとレネを見つけた。あとは彼らをこちらの世界に引き戻すだけである。
ヴィクターから状況を確認したジェズは三崎にその内容を伝えた。現在は回廊を通じて二つの世界が繋がってしまっている事。
異なる世界が繋がった事でどちらの世界も魔力バランスを大きく崩しており、このまま放っておいたらどちらの世界も崩壊しかねない事。
この門を閉じるために必要な事は二つ。地球世界にとっての異物であり次元特異点となってしまっているレネとジェズをタッシュマン王国側に送還した上で、古代遺跡群を破壊する事。
これでおそらく地球世界とアゼリオン大陸が繋がる事は二度となくなる。次元特異点がその世界からいなくなれば、そもそも互いの世界を観測する事すらできなくなるはずなのだ。
これらの情報を得た三崎はその内容を頭の中で整理する。こんな状況でなければ、ヴィクターと呼ばれていたあちらの世界の技術者とももっと話をしてみたかったなと思いつつも。
要するに大量のモンスターを打ち破り、レネとジェズのために道を作ればいいと開き直った。
「レネさん、ジェズさん、残念ですがここでお別れのようですね!道は俺が作ります、行ってください!!」
戦いの最中。突如訪れた別れの時。レネとジェズはその言葉を聞き、門と回廊を超えてあちらの世界に戻るために身構える。
そんな彼らの様子を確認した三崎は、ついにその身に宿す全ての魔力を解放した。彼の身を中心にして目に見えるほどの濃度になった魔力が虹色の風となり吹き荒れる。
「星々の輝きよ、悠久の時を越えて我に集え。鋼鉄の武器よ、その鋭き刃を我が手に宿せ。機械の歯車よ、無限の可能性を秘めて動き出せ」
三崎を中心に彼に魔力が世界そのものに働きかけ世界を侵食する。
「運命の織り手よ、その糸を操り、奇跡を紡ぎ出せ。人々の希望。それこそが浪漫。その名のもとに全ての力を解き放たん」
その魔力を元に世界そのものが三崎が願う形に作り替えられる。
「過去と未来を繋ぎ、異なる世界の境界を越え、全ての可能性を開かん。天の理を越え、地の法則を超越し、全ての存在を掌握せよ」
超深層級探索者。彼らが使う固有魔法。それは、己の心象風景を元に世界を望む形に書き換える禁断の力。
「今、我が声に応え、浪漫の光を解き放て!固有魔法デウス・エクス・マキナ!!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます