第2章 物語
二章
仙崎宗。何度その名前を、打ち込んでも見つからない。
それもそのはず。彼は、訓練中、事故死したのだ。
それでは、昨日の電話はなんだ。
神木翔は、指をかみながら考えていた。爪ではなく第二関節ほどまで人差し指を飲み込んでいた。
彼が死んでから、毎日のように携帯に電話をかけていた。それは、自分の心を保つためのルーティンだった。
そして昨日、あろうことか彼から電話がかかってきたのだ。急いで、発信場所を調べると、そこには少女が映し出されていた。見たことない少女だ。
極めつけは電話から聞こえてくる声も、女の声だったのだ。
はじめは、いたずらの類かと思い彼女の家族がいなくなるくらいの報復をしようとしていたが、話しているうちにその口調や、カメラに立てた中指など、その後の言動も追ってみたが、彼のように思えてくるのだ。
それは実際に会っても変わらない印象を得た。彼は間違いなく、仙崎宗その人格だ。
事故死とは何だったのだろう。
自分が知りえない事故など、治安機関では日常茶飯事だが、それが、一介のしかも訓練生となると、人体実験か。
これに似た実験は各国で事例がある。人格を入れ替えるというものだ。未だ成功例はないはずだが。
この街を実験施設だとしか思ってない、あいつらなら平気でやるだろう。
神木の画面にはたった今、治安機関の兵長クラスのスキャンダルをネット上にアップしているところだった。
「でも、生きていたのか。喜んでいいんだよな。
ああ、また、一緒に過ごせるのか」
神木は、隣に置かれたポテチの袋をつぶし口に書き込みながら、意味のない叫び声で、喜びを表していた。
「ああ、しかし、何かの拍子に壊れてしまうといけないから、普通に接しなければ。
僕、我慢できるかなぁ」
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