第4話
「ご、ごめんなさい。鞄から出してもらえますか?」
「鞄?」
明日美は床に放った鞄を拾い、中を覗いた。百円で買った例の人形が、手で頭を押さえている。
「あ、ありがとうございます」
人形は明日美を見上げ、礼を云った。明日美は再び鞄を放り投げそうになる。
「ど、どうして
「えっと、一応、神様ですから」
床に足をつけると、人形は明日美に深々とお
「はじめまして、ひめくりと申します」
「もしかして、本当に私の願いを叶えてくれるってこと?」
「ええっと……、」
ひめくりは
「そこに書かれてあることが、出来ます」
”ひめ が 出来ること
其の二 花や鳥たちとお喋りする
其の三 歌をうたう”
一
「これだけ?」
「……はい」
「本当に神様なの?」
「はい……。でも、出来ないことの方が多くて」
はずかしそうに二つの握りこぶしをこすり合わせて、ひめくりは答える。その
「なんだ、私と同じじゃない。私も出来ないことの方が多いよ」
ひめくりは頬を紅潮させて、伸び上がった。
「あなたはとってもやさしいんですね」
「そうかな、普通だよ」
「いいえ、とてもとてもやさしい方です」
「それは大げさ」
明日美は苦笑する。
「あの、ひめはあなたのお役に立ちそうもありませんか。役立たずの神様は、返品ですか、」
不安そうにひめくりは
どうもこの「神様」には期待は出来ないようだ。だが少なくとも一人暮らしの退屈を
「ううん、返品はしない。これからよろしくね、ひめくり」
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