トレーフル・ダイアリー

海月

出会い

アリスティナ=オーランド♀︎:元気すぎる。活発で世話焼きで鈍感。


トレイス=オーランド♂︎:アリスティナの弟。幼い頃オーランド家の後継として養子に迎え入れられた。魔術学が得意で、頭がいい。

姉のことを愛している。


シャロン=アイレス♀︎:カトリーヌの兄で双子。冷静沈着でクール。美形。感情を表に出さない。


カトリーヌ=アイレス♂︎:シャロンの妹で双子。艶やかな髪、青い瞳に色白な肌をもつ。女の子も惚れるような美女。穏やかで人に優しい性格。


ハルベルト=ルース♂︎:アリスティナとトレイスの幼なじみ。

昔からアリスティナを想っているが、アリスティナは気づかない。


約25分


__________


アリスティナM「私の住む街、グリモワ。国きっての魔力研究先進国。私はグリモワの領主の娘。まぁ、要するにお嬢様。

これは、そんな私のちょっと変わった日常の物語。」


__________


シャロン-タイトルコール-「トレーフル・ダイアリー〜雪の天使と氷の王子〜」



アリスティナ「…イス…レイス!…トレイス!」


トレイス「わあぁ、びっくりしたなぁ、姉さん」


アリスティナ「何回呼んでも反応しないんだもの」


トレイス「ごめんよ。もうすぐ魔法陣が完成するんだ。…えっと、ここは…こうか、それでもって……


アリスティナ「トレイス!朝食はどうするのよ!今日はサンドイッチよ!

呼んでも降りてこないから、私がわざわざ、呼びに来てあげたんだから……!

聞いてるの?ト・レ・イ・ス!」


トレイス「えっと…僕の朝食は…昼にでも食べるよ。ランチボックスに詰めておいてと、バトラーに伝えてくれ(片手間に)」


アリスティナ「はぁ…あのね、トレイス。人は食べなきゃ死ぬのよ?トレイスここ最近、研究室に引きこもりっぱなしじゃない。

そ・れ・と・も、魔術師は、飲まず食わずでも死なないとでも??」


トレイス「あっ…ね、姉さんもしかして怒ってる?!ごめん、ごめんよ!姉さん!!(慌てて)」


アリスティナ「はぁ…仕方ないわね。(ぼそっと)

あと1時間で、アカデミーの馬車が迎えに来るわ。

それまでに、それ片付けて、顔洗って、着替えて、玄関にくるのよ。

遅れたら、置いていくから。」


トレイス「わ、分かったよ!姉さん!」


アリスティナ「よろしい。じゃあサンドイッチは、詰めておくようバトラーに言っておくから、後で取りに来るのよ。」


トレイス「うん、分かった」




シャロンM「ベリエッサアカデミー。この国1番の貴族校。

教養はもちろん、魔法学、魔術学、貴族としてのルール・マナーから、一通りの楽器まで、幅広く学び、貴族としての品格を身に付けることを目的としている学校。

生徒数約1500人。3年制で16歳から18歳までのご子息・ご令嬢が通う。」


SE:黄色い悲鳴


アリスティナ「朝から騒がしいわね?なんかあったのかしら」


トレイス「姉さん、あれ」


アリスティナ「ん?…誰?あれ。有名人?」


トレイス「姉さん知らないの?アイレス兄妹だよ。」


アリスティナ「アイレス兄妹?」


トレイス「魔術具開発のトップアイレス社のご子息シャロン=アイレスと、ご息女アイレス=カトリーヌだよ。

このアカデミーで、雪の天使と氷の王子って呼ばれてるんだよ」


アリスティナ「雪の天使?…雪国出身なの?」


トレイス「いや、カトリーヌ様の髪が、雪のように真っ白で艶やかなんだよ。そして、天使みたいな品格と穏やかな性格から、雪の天使」


アリスティナ「ふーん、じゃあ、氷の王子は?」


トレイス「シャロン様は、凄い美形なんだけど、なかなか笑わないんだ。クールで大人しい。だから氷の王子」


アリスティナ「へぇ、なるほどね。」


トレイス「あんな美男美女いたら、そりゃ、お嬢様方はほっとかないよね」


アリスティナ「そうね。私もあれくらい美人に産まれていたら、もっとちやほやされたのにな…」


トレイス「何を言ってるのさ!姉さんは誰よりも美人だよ!」


アリスティナ「ありがと、トレイス。慰めてくれてるのね」


トレイス「なっ慰めなんかじゃ…(ぼそっと)」


アリスティナ「さっ、行きましょ。授業に遅れちゃうわ」


トレイス「そうだね」


シャロン「……あの、落としましたよ。」


アリスティナ「え?」


シャロン「…(ハンカチを渡す)」


アリスティナ「あ、私のハンカチ。どうも有難うございます」


シャロン「いえ。」


アリスティナM「うわぁ、すっごい美形。こりゃあお嬢様方から好かれるわけだ。」


カトリーヌ「…初めまして。私(わたくし)カトリーヌ=アイレスと申します。こっちは、私の兄、シャロン=アイレス

貴女方はもしかして、オーランド家の…」


トレイス「あ、はい。えっと、姉のアリスティナ=オーランドと、僕はトレイス=オーランドです。」


アリスティナ「よろしくお願い致しますわ」


カトリーヌ「よろしくお願い致します。はぁぁ、お話できて嬉しいですわ!私、アリスティナ様とお話してみたかったの(キラキラした目)」


アリスティナ「ん?え?私と?」


カトリーヌ「ええ!私が初めて、アリスティナ様を知ったのは去年の入学式でのこと……。」


アリスティナ「え、えぇ」


カトリーヌ「私が、男性の方々からいい寄られているところにアリスティナ様が…」


-回想-


アリスティナ「そこまでにしなさい!そちらの方、困っているじゃないの!お貴族様がそんなやり方で女性を口説くなんて、はしたないわ!!それでもベリエッサの生徒なの?!あなた達はこのアカデミーの恥よ!!」


カトリーヌ「(震えている)」


アリスティナ「あなた、大丈夫?もう大丈夫よ。自分の立場も理解できない野獣たちは、私が追い払って差し上げましたから。

もう怖がらないでくださいな。」


カトリーヌ「…た、助けてくださり、ありがとうございます。」


アリスティナ「いいのよ、私は当たり前のことをしただけなんだから。

それじゃあ、私はこの辺りで」


カトリーヌ「あ、待ってくださいまし!お名前は!」


アリスティナ「振り返らず(手を振る)」


-回想終わり-


アリスティナM「……あぁ、思い出した…。あの頃、小説の『名も無き英雄』にハマって、カッコつけて名前も名乗らず帰った時じゃん…。……恥ずかしい。」


カトリーヌ「それから、あれがアリスティナ様だと知って!しかし、どう声をかけたらいいのか分からず、こうして、1年が経ってしまいました…。


しかし!今日、やっとお話することが出来ました!これはきっと巡り合わせなのです!神様ありがとうございます!私とても、とても嬉しいです!はぁぁ!神様!」


シャロン「リーヌ…カトリーヌ!」


カトリーヌ「は!なんでしょう!お兄様!」


シャロン「2人が困っているよ」


カトリーヌ「あっ…申し訳ございません。つい…(赤くなる)」


アリスティナ「いいのよ。私も嬉しいわ。こんな可愛い子とまた、お話できるなんて」


カトリーヌ「え、そんな…(照れる)」


アリスティナ「これも何かの縁ですわね。」


カトリーヌ「はい!きっと!」


アリスティナ「カトリーヌ、私と、お友達になって下さる?」


カトリーヌ「え?いいのですか?」


アリスティナ「もちろん」


カトリーヌ「ぜ、是非!よろしくお願い致しますわ!」


アリスティナ「ふふ、ええ。」


シャロン「ふふ」


トレイスM「氷の王子が、笑った?」


アリスティナ「えっと、そちらが、シャロン様よね?

カトリーヌ様のお兄様ということは、私達の先輩ですの?」


シャロン「ん、いや、僕達は双子なんだ。」


トレイス「双子?なら、同学年か」


シャロン「あぁ」


カトリーヌ「…アリスティナ様!(もじもじしながら)」


アリスティナ「ん?」


カトリーヌ「私の事…カトリーヌと呼んでくださいまし!!」


アリスティナ「え?」


カトリーヌ「"様"だなんて、壁を感じますわ。せっかくこうして、お友達になれたのです。カトリーヌとお呼びください!」


アリスティナ「えぇ、分かったわ、カトリーヌ」


カトリーヌ「あ、ありがとうございます!」


アリスティナ「カトリーヌも私の事、アリスと呼んでください。私の名前長いから、お父様やお母様からそう呼ばれているの」


カトリーヌ「ア、アリス!」


アリスティナ「なに?カトリーヌ」



-カトリーヌとアリス 微笑み合う-



シャロン「カトリーヌ、そろそろ教室へ行かないと、授業が始まってしまうよ」


カトリーヌ「あら、もうこんな時間!」


シャロン「引き止めて済まなかった。」


カトリーヌ「それでは、失礼致しますわ!」


アリスティナ「えぇ」


トレイス「…姉さん、僕達も行こうか」


アリスティナ「えぇ、遅れる前に、行きましょう」




カトリーヌN「雪の天使と」


シャロンN「氷の王子」



__________




ハルベルトM「初めて君を見た時。俺は、本能的に、君を守らなければと感じたんだ。

君を守るのは俺の役目。そう思っていたのに……」


トレイス「姉さん。口にジャムがついてるよ。」


アリスティナ「え?うそ、どこ?」


トレイス「僕がとってあげるよ」


アリスティナ「ありがとう、トレイス」


ハルベルトM「っくそ!あいつが来なければ!

忘れもしない、8年前。トレイスは養子としてオーランド家に来た。そして…そして!俺のアリスティナを!」


アリスティナ「あら?ハルベルト。そこで何をしているの?」


ハルベルト「あ、アリスティナ!今日も君は可愛いね」


アリスティナ「ありがとう。ハルベルト」


トレイス「何しに来たんだ。僕達はランチ中だ。邪魔をするな(睨んで)」


ハルベルト「なんだと。」


-トレイス、ハルベルトに近づく-


トレイス「姉さんは僕のだ。残念だったな。(ハルベルトの耳元で)」


ハルベルト「?!なんだと!!君こそ、いつまでもお姉ちゃんに執着するのはどうかと思うぞ。シスコン!」


トレイス「なっ!」


アリスティナ「まぁまぁ、2人とも。仲良いんだから。」


トレイス・ハルベルト「良くない!」


アリスティナ「ふふ、息ピッタリ」


トレイス「…(睨む)」


ハルベルト「…(睨む)」


アリスティナ「あ、そうだ、ハルベルト」


ハルベルト「なんだ?アリスティナ」


アリスティナ「ハルベルトも一緒にどう?ランチ」


ハルベルト「え?」


トレイス「え?」


アリスティナ「まだでしょ?」


ハルベルト「あ、あぁ!喜んで!」


トレイス「ちっ(舌打ち)」


アリスティナ「トレイス、ハルベルトも一緒にいいでしょ?」


トレイス「あ、あぁ、もちろんだよ。姉さん」


ハルベルト「思ってないくせに(ぼそっと)」


トレイス「うるさい(ぼそっと)」


アリスティナ「さっ、頂きましょ!」




ハルベルト-タイトルコール-「トレーフル・ダイアリー〜ティーパーティーは嫉妬を添えて〜」




カトリーヌ「アリス〜!」


アリスティナ「カトリーヌ!どうしたの?」


カトリーヌ「今週末の休日って、アリスもトレイス様も、ハルベルト様も、空いていられますか?」


アリスティナ「多分?」


トレイス「特に予定はなかったと思うよ」


ハルベルト「俺も大丈夫だ」


カトリーヌ「ほんと?良かったぁ」


アリスティナ「何かあるの?」


カトリーヌ「私の家でお茶会をしませんか?」


ハルベルト「茶会か。いいな。」


カトリーヌ「今、お庭に、薔薇が沢山咲いているの。

是非、皆様にも見て頂きたくて!」


アリスティナ「そうなのね!皆でお茶会かぁ……楽しそう!」


ハルベルト「何か持っていった方がいいものとかあるか?」


カトリーヌ「んー、そうですわね…」


トレイス「せっかくだし、お茶会なら、みんなで茶菓子を持ち合わせるのはどうだろう。」


アリスティナ「いいわね!1人1種類ずつ持ってきたら色んな種類のお菓子が食べれるし!」


ハルベルト「アリスティナ」


アリスティナ「なに?」


ハルベルト「あんまり食べると太るぞ」


アリスティナ「ハルベルト!うるさいっ!」


カトリーヌ「では、皆さん、今週末お待ちしておりますわね!

皆様の家にお迎えの馬車をむかわせますわ!」


トレイス「わかったよ」


ハルベルト「ありがとう、カトリーヌ」


カトリーヌ「はい!楽しみにしております!」





カトリーヌ「お兄様!お兄様!」


シャロン「どうした?カトリーヌ」


カトリーヌ「皆様が来られたわ!お庭へ行きましょう!」


シャロン「あぁ」




トレイス「シャロン、おはよう」


シャロン「おはよう」


ハルベルト「デカい御屋敷だなぁ」


アリスティナ「御機嫌よう、カトリーヌ、シャロン。

今日はお誘いありがとう」


カトリーヌ「こちらこそ、わざわざ来て下さり、ありがとうございます!…さ、さ!皆様!こちらです!準備は整ってますわ!」



アリスティナ「わぁぁ、見事な薔薇園ね。綺麗だわ」


カトリーヌ「自慢の庭師が育てた花ですもの(微笑む)」


アリスティナ「んん、いい匂い。カトリーヌと知り合っていなかったら、この景色も、匂いも、体験できなかったわ」


カトリーヌ「ふふ、喜んでもらえて嬉しいです!」


シャロン「じゃあ、早速始めようか。みんな、好きな席に着いてくれ。今日の紅茶はアールグレイ。この景色に合う、柑橘の香りが強いものにしたよ。

…どうぞ。」


トレイス「ありがとう、シャロン。……僕は、スコーンを持ってきたよ。ここのスコーン美味しいんだ」


ハルベルト「俺は、フルーツタルトを作らせてきた。」


シャロン「僕達は軽食として、サンドイッチを」


カトリーヌ「アリスは何を持ってきたんですか?」


アリスティナ「シェフに教わって、クッキーを自分で作ってみたの…(恥ずかしがりながら)

初めてだから、美味しいか分からないけれど、みんなに食べて欲しくって」


カトリーヌM「アリスの」


ハルベルトM「手作り…!!!」


トレイス「ん゛ん゛(咳払い)…じゃあ、姉さんのクッキーを僕が……」


カトリーヌ「待って!!トレイス様!1番最初に頂くのは私です。ね!アリス?」


アリスティナ「え?えっと…」


ハルベルト「いや、俺だな。俺がアリスティナの手作りクッキーを頂く」


カトリーヌ「な!違いますわ!」


-トレイス、ハルベルト、カトリーヌ、睨み合う-


トレイス「…」


ハルベルト「…」


カトリーヌ「…」


シャロン「……誰も食べないなら………僕が最初に頂こう。(クッキーを食べる)」


ハルベルト「な!」


トレイス「?!」


カトリーヌ「あぁ〜!」




ハルベルトM「敵は1人だと思っていたが…。

そんなことなかったか…

しかし、この中で一番カッコイイのはこの俺だ。負ける気がしない!」





ハルベルト「んー、腹いっぱい」


カトリーヌ「どれも美味しかったわ!…特にアリスのクッキーが」


トレイス「姉さん、とっても美味しかったよ」


アリスティナ「ほんと?良かったわ!」


シャロン「……」


アリスティナ「ん?どうしたの?シャロン」


シャロン「…アリスティナ…(手をアリスティナの口元に)」


アリスティナ「えっ……」


シャロン「お菓子が口についてたよ。」


アリスティナ「あ、あ、あり、がとう」


シャロン「うん」


カトリーヌ「…な」


トレイス「…」


ハルベルト「くっ…」


-3人同時に-


ハルベルト・トレイス「シャロン!」

カトリーヌ「お兄様!」


シャロン「ん?どうしたの?みんな」


アリスティナ「ふぅ、美味しかった」




ハルベルトN「ティーパーティーは嫉妬を添えて」




__________



シャロンM「喜び・悲しみ・怒り・楽しみ・驚き・恐怖

人には様々な感情がある。人だけが持っている特別な力。

……僕は"ヒト"ではないのかもしれない。」



カトリーヌ-タイトルコール-「トレーフル・ダイアリー〜秘密の花園~」




アリスティナ「……ん?あれは……シャロン!」


シャロン「…ん?……あ、アリスティナ」


アリスティナ「御機嫌よう、シャロン」


シャロン「あぁ」


アリスティナ「こんなところで何をしているの?」


シャロン「植物を見ていたんだ」


アリスティナ「植物?」


シャロン「アカデミーの花園は、魔法結界が貼られていて、年中花が咲いているんだ。

普通の花から、魔力を含む花まで」


アリスティナ「へぇーそうなのね。確かに、今の季節では咲いてないはずの花も咲いているわね」


シャロン「あぁ」


アリスティナ「ぇっと、シャロンは植物が好きなの?」


シャロン「んん、まぁ、そうだな。……ここは僕の好きな場所なんだ…。」


アリスティナ「へぇ…ふふ、なんか意外だわ」


シャロン「え?」


アリスティナ「男の人で花が好きな人はなかなかいないから」


シャロン「…」


アリスティナ「シャロンは優しいのね」


シャロン「え?」


アリスティナ「あ、そうだ!シャロン!魔力のある花について教えてくださる??

私、普通の花なら分かるけれど、魔力のある花なんて、アカデミーに来るまで見たこともなかったの!」


シャロン「え、あ、あぁ。えっと…」





カトリーヌ「…はぁはぁ(息切れ)トレイス様、ハルベルト様!」


トレイス「ん?」


ハルベルト「どうした、カトリーヌ。そんなに焦って」


カトリーヌ「お兄様がどこにもいないの!一緒にランチをしようと言っていたのに……

また、女性の方に連れ去られたのでしょうか…」


ハルベルト「また??」


トレイス「あ、そういえば、さっき花園の方に歩いて行ったのを見かけたよ」


ハルベルト「行ってみるか」


カトリーヌ「は、はい!」




トレイス「ん?あれは…シャロンと…姉さん!」


ハルベルト「なんだと?!あいつ、抜け駆けか!」


カトリーヌ「しー!バレてしまいますわ!」


ハルベルト「あ、すまん…」





シャロン「……魔力を含む植物は、シャルムプラントと呼ばれているんだ。…有名なシャルムプラントは…そうだな…これ」


アリスティナ「え?これ?ただの百合じゃないの?」


シャロン「これは、シュテルリリー」


アリスティナ「シュテルリリー?」


シャロン「意味は、星の百合。光の魔力を持ってるんだ。見た目はただの百合だけど、茎を折ると…」


アリスティナ「わぁぁ、光った!」


シャロン「非常用として、旅人は根っこから抜いて、みんな持ち歩いてるんだ。

……でも」


アリスティナ「あ、もう消えちゃった」


シャロン「すぐ消えちゃうから、ほんとに非常用」


アリスティナ「ふふ、これ持ち歩いてる意味あるのかな」


シャロン「昔は、少しの光も貴重だったんだよ」


アリスティナ「なるほどね」


シャロン「あとは…これ。リジュベン・フルール」


アリスティナ「これは、初めて見た」


シャロン「この名前の意味は、若返りの花。別名、奇跡の花とも言われてる」


アリスティナ「若返り?!」


シャロン「まぁ、実際若返りの効果はないんだけどね」


アリスティナ「…なんだ」


シャロン「この植物には、治癒の魔力があるんだ。

軽ければ、大抵の怪我も、病気も治る」


アリスティナ「へぇ、凄いね」


シャロン「市販で売られている薬には、だいたいこの花が入ってるんだ。

多分、昔の人は勘違いしたんだろうね。何でも治るし、即効性もあるから、若返ったって。」


アリスティナ「なるほど、だから、若返りの花かぁ。」


シャロン「うん、多分ね」


アリスティナ「…ふふ、シャロンはほんとに花が好きなんだね」


シャロン「…あぁ。…………僕は昔から、無愛想だと言われてきた。だから、ろくに友達も出来なかったんだ。

みんなにお化けだとか言われて…。感情がないなんて、僕は人ではないとも思った。

そんな時、花と出会った。大切に育てれば、素直にまっすぐに、美しく咲いてくれる。

僕にも無いものを、植物は持ってるんだ。」


アリスティナ「…シャロン」


シャロン「…」


アリスティナ「…貴方は無愛想じゃないわ。お化けでもないし、感情だってある。」


シャロン「…え?」


アリスティナ「だって、花について話してる時のシャロン、凄く楽しそうだったもの!

その気持ち、ちゃんと私に伝わっているわ。」


シャロン「…」


アリスティナ「だから、大丈夫よ!自信をもってシャロン」


シャロン「……(ときめく)」


アリスティナ「?」


シャロン「ありがとう。アリスティナ。元気が出たよ(微笑む)」


アリスティナ「え……」


アリスティナM「不覚にもドキッとしてしまった…。この笑顔は…殺人級だよ…。」


シャロン「アリスティナ?大丈夫?」


アリスティナ「え、え、えぇ!」




ハルベルト「くっそー、ここからじゃなに話してるのかわかんない!」


トレイス「姉さん…」


ハルベルト「?!シャロンが、笑った!!」


カトリーヌ「?!アリスが、照れてる!」


トレイス「あいつ…」


ハルベルト「抜け駆けだ!」




カトリーヌ「お兄様!!」


シャロン「…どうした。カトリーヌ。みんなも」


カトリーヌ「今、アリスと何話してたのですか?」


シャロン「?!みてたのか。」


カトリーヌ「えぇ!…楽しそうにアリス様と…」


シャロン「…」


カトリーヌ「なにを話していたのですか!!」


シャロン「……ひ・み・つ」


カトリーヌ「え?…あ〜!お兄様!待ってください!教えてくださいな!お兄様!」




シャロンN「秘密の花園」


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トレーフル・ダイアリー 海月 @harusame_hau

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