第17話
それからはコマ落としのような記憶しかない。
広之進は援軍の誰かに担がれ、信吉はそれに付き添って行った。
敵は援軍の前にあっけなく総崩れとなり戦いは終わった。
大勝利だ。
皆が去った後、私は一人頂に立っていた。
いろいろなものを見たと思った。本当にいろいろなものを。
白々と明るくなっていく空を見ながらそう思った。
ここに、この時代に来るまでの自分を死ぬほど恥ずかしいと思った。
もう捨てたいと思った。
ちょうどいい、捨ててしまおう。
何が起こりどうしてここにいるのかは分からないが、今、私はここにいる。
この時代にいる。
これからは、この時代の人間として生きるのだ。
潔く、人々の幸せの為に命を賭して生きるのだ。
やり直せる。
そう思うと清々しい気持ちになった。
見ると朝日が昇ってくる。
私はご来光に両手を合わせ、目を瞑り、頭を下げた。
眼を開けると、周りは真っ白な霧に覆われている。
朝霧か。
?
まさか?
何も見えなくなった霧の中、私は茫然と立ちすくむしかできなかった。
霧が晴れると、そこはあの時の公園だった。
朝日はあの時のまま、建物の上に登っていくところだ。
何も変わっていない。
今のは? 今のは一時的に見た夢? それとも脳の中で起きた何かの障害なのか?
ひどく現実感のある、あれは、あれは夢?
私はため息をついた。
これまでの自分を捨てる事などできないのか。そういう事か。
私は、その足で電車に乗り自宅へと帰った。
明日からは忙しくなる。
山田の話を引き受ける事に決めた。
泥水を飲み地に這いつくばってでもやる。やらなければならない。
そう、「やらなければならない」のだ。
明日には今の会社に話しをしよう。整理し早いうちにけりを付ける。
今、自分がどうすべきかはっきり分かった。
そう、あの井口が誰で、何をしに来たのかも分かる。
井口も何かやる方向で決めた筈だ。
広之進もやり遂げた。
私がやらなくてどうする。
あの公園で見たものが夢かどうかなんてもうどうでもいい。
私は自分の使命を果たす。
私は空を見上げ、ポケットの中の短剣を握りしめた。
使命 @gotchan5
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