第5話 檸檬

「お疲れ様でーす」


 部室に入ると、先輩は椅子に座って本を読んでいた。

 眼の前の長机には、レモンソーダのペットボトルが置かれている。


「や、」

 と、軽く手を上げただけで、先輩は読書へ戻る。


 ……ツッコミ待ちだろうか。


 私も先輩の正面の椅子に座る。

 先輩は何も言わず、本を置くと、ペットボトルの蓋を開けてゴクリと飲む。


 何も言わない。


 絶対に、カバンの中にあるレモンティーを取り出さないと心に決める。

 

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