第3話 煙草

 掃除当番で少し遅くなった。


「お疲れさまでーす」

 という何に対しての慰労なのか不明なセリフを言いながら部室に入る。


 うっすらと、妙な臭いがする。


 先輩の姿は―――、居た。

 もう卒業してしまった誰かがどこかから持ってきた古いソファに寝転がっている。


 寝ているのかと思って近づくと、先輩はゆっくりと目を開けた。


「起きてたんですか」


「うん」


「体調悪いですか?」


「んーん、大丈夫」


「ところで―――」

 大きく息を吸う。うん、やっぱり。

「―――先輩、また煙草吸ったでしょう?」


「ありゃ、バレたか」


「部室で吸うのやめましょうよ。先生に見つかったら休学とか、下手すりゃ退学とかありえますよ?」


「大丈夫だって。こんな僻地、誰も来やしないよ」


「万が一ってことがあります。私、連帯責任とらされたりしたくないんですけど」


「したら、あたしとふーちゃんで、街から街をその日暮らしに渡り歩く流浪の乙女二人組になろーよ」


「イヤですよ、ってかなんですか流浪の乙女って」


「……なんだろうね? 少なくとも現代日本じゃ成り立たない気がするよ?」


「先輩が言い始めたんでしょーが!」

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