第22話 光の剣
「こちらです。これが
女王が櫃の中を指し示す。
そこには光り輝く剣と、金や銀で装飾を施した透明な石があった。
「エリウの四神器か!こんなところにあったとは」
リューウェインの声は驚きに満ちていた。
「どうぞ、この剣を手に取ってみてください、リューウェイン様」
女王の言葉をうけ、リューウェインは剣を掴んで取り出した。
柄を握り、鞘から抜く。
「これが本当に
リューウェインは呟いた。
「試し切りされますか?」
「ああ頼む」
運ばれてきたのは、巨大な鉄の甲冑だった。
リューウェインは甲冑を調べた。
「これを?」
「はい、どうぞやってみて下さい」
剣を振りかぶり振り下ろす。
それだけで甲冑は真っ二つになった。
「なるほど。使えそうだ」
リューウェインは笑みを浮かべた。
「これは持ち主の意志によって、大きさも変えられます。やってみてください」
リューウェインは剣を持って念じる。
するとみるみる剣が大きくなる。
「次は小さく」
今度は
「これは便利だな」
それから女王はロディーヌの方を向いて言った。
「ロディーヌさん。この
女王の言葉に従い、ロディーヌは、ペンダント状になっているその石に手を伸ばす。
握りしめると、ひそかにぬくもりを感じる。
「そのまま目を閉じて念じてみてください」
言われるままに、ペンダントを握りしめ、目を閉じる。
何を考えればいいのかわからなかったが、とりあえず薔薇の花を思い浮かべた。
(紅く可憐な花びらの……いえ違うわ。私が望むのは虹色の薔薇……)
しばらく目を閉じて念じると、ふいに光を感じる。
目を開けてみると、
「おお、やはり」
女王の顔は、何かを確信したような表情が浮かんでいた。
「ロディーヌ様、リューウェイン様、こちらへ」
女王は立ち上がり、二人を案内する。
扉をくぐり、通路を通り抜けた先は裏庭のようだった。
かなりの広さであり、中央には塔のようなものが立っている。
ロディーヌは立ち並ぶ木々を見上げる。
木々の隙間から、青い空が見えた。
「ロディーヌ様、炎を念じてみて下さい」
もう一度目を閉じて石を握り、女王の言う通り炎を想像してみる。
すると紅蓮の炎が
ロディーヌは驚いてそれを見た。
ただ、熱さは全く感じない。
「消すときはどうしたら?」
「消えろと念じれば大丈夫ですよ、ロディーヌさん」
ロディーヌが念じると炎は消えた。
「今度は壁のようなものを思い浮かべてください」
女王が再びロディーヌに言う。
女王の言った通りにすると、今度はロディーヌの周囲に薄い光の膜のようなものができる。
「リューウェインさん、この
「いいのか?」
リューウェインは、剣を振りかぶる。
勿論万一にもロディーヌにあたらない
剣は薄い光の膜の上で止まる。
「ほう、これは」
リューウェインの目が光った。
「いかがです?」
「素晴らしいな。だがこれを自分たちで使えばいいのではないか?」
「いえ、この神器は持つ者の魔力を反映します。私たちが使っても力を引き出すことはできないのです」
「なるほどな。これで囚われの
「ええ。是非お願いしたいのです。大したお礼はできませんが、その二つの神器はあなた方に差し上げますわ」
「それは十分すぎるほどだが……ロディーヌ、君はどう思う?」
「私は……助けてあげたいけど、私なんかが力になれるのかわからないわ」
ロディーヌは困惑しつつ言った。
「あなたには素晴らしい力がありますよ、ロディーヌさん」
女王は真剣な目で彼女を見つめる。
「まだ眠ったままですが。その
ロディーヌは
どこか懐かしく暖かい気持ちが湧いてきた。
「どうするロディーヌ?君はここに残っていてもかまわないが」
リューウェインが穏やかに話しかける。
「いえ、私も行きます」
ロディーヌはきっぱりと言う。
女王のフィノーラはそのロディーヌを見て微笑む。
「ありがとう。ムーアの森ではおそらく、ロディーヌさんのお役に立つものが見つかると思いますよ」
「それは何でしょうか、フィノーラ様?」
「私にもはっきりした事は。何となく感じるのです」
リューウェインが彼にしては少し心配そうな口調で言った。
「いいのか、ロディーヌ?」
「ええ。魔物にお困りなのでしょう。私にもし力があるなら役に立ちたいんです。今の私はレンスター家の人間ですから」
ロディーヌはリューウェインの目をまっすぐに見つめて言った。
リューウェインは短く、「そうか」と言っただけだった。
「それで、どうやって目的の場所まで行けばいい?」
リューウェインの問いに
「東の扉を使えば、ムーアの森まですぐです。私が案内いたします」
フィノーラは答えた。
女王の側近たちがざわつく。
「女王陛下、それはあまりに危険すぎます!」
「いいえ。私だけ安全な所にいるわけにはいきません」
フィノーラはきっぱりとした口調で言った。
「もし私に何かあった時は、リーシャ。あなたが次の女王として皆を導くのです」
女王が一人の女性に向かって告げる。
「御意」
その女性はうやうやしく頭を下げた。
「女王陛下、もちろん僕もお供します」
そう宣言したのは
「止めても無駄なようですね。でも無茶はだめですよ」
「はい。いてもたってもいられません」
「しかしフィノーラ殿。なにもそこまでせずとも」
「戦えずともお役に立つことはできますよ、リューウェイン殿。それにベイヴィルが捕らえられている場所を知っているのは私だけです」
それは確かにそうだった。
「おいらも行くよ」
意外な事にそう言ったのは
「あなたが?なぜ?」
「そりゃ、あんたが心配だからさ、ロディーヌ。力に目覚めたばかりで、よちよち歩きの赤ん坊と同じだからね」
どのくらい本気なのかわからない。
だがいかにも気まぐれなホルバンらしい言い方だった。
結局
女王が同行する事に関しては、側近たちにも反対するものも多かった。
だが君主の言葉は、人間界でも妖精界でも絶対である。
最後には彼らも折れた。
そして夜明けとともに、城を出発することになった。
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