短編「心内ノ波紋」(完)

不可世

一話完結

転んだわけでもないのに

痛むことがある

それを人は心と呼んだ


私はそんな心が

なければいいのにと

強く強く思った


言葉や気持ち

それらに触れるたび

規則的に機械みたいに

処理できれば

傷つくことはなくて

賢く割り切れるはずなんだ


だけど人は矛盾している

みんな矛盾している

だから傷つく

不平等が生まれる


その軋轢に

誰もが敷かれて

誰もが足掻いている


その先でぶつかり

いがみ合いになったり

争ったり

そして身をすり減らして

不純に不当に不実に

心を痛める


だから心なんて

持つだけ生きにくいはずだ

でも捨てることも

無視することも

出来ない


どうしようもないほど

惑わされて

不覚にも涙さえ誘う

こんな心

こんなもの

何のためにあるんだろう


苦しいよ

痛いよ

生きれなくなるよ


無ければいいのに

無ければ、淡々とやり過ごせたのに


痛いよ

凄く痛いよ


学校にも家にさえも

居場所がない


どこにも行けない

足がすくむ

心がそうさせる

心が反応するから

対面も保てない


ほんとになんなの

心ってなんなの

バカみたい

いらないよ

いらないんだよ


どうして

どうして

私ばかり嫌うの


その不敵な笑みに

えぐられて

ひび割れていく


やめてよ

もう何もしないでよ

痛め付けないでよ

ほっとおいてよ


無関心でいたくても

その場を離れても

心が私を何度も襲うから


ずっとずっと痛いんだよ

もうこれ以上

一人にしないで


少しだけでいいから

優しくして

そっと抱きしめて


嘘でいいから

嘘でもいいから

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