第13話 ドルマとして
ドルマスクール二日目、今日からは本格的にドルマとしての訓練を始めていくらしいのだが、まずは基礎的な事をフシミ先生から教わることになっていた。
「それでここは一体何を勉強するんですか?」
「最も勉強してもらいたいのはドールとの絆と、ドルマとしての道を学んでほしい」
「ドールとの絆とはなんですか?」
「近年、世界中でシャドーの復活による被害が多発している。それに伴って、ドール本来の力を取り戻すための運動が盛んに行われている。その上で必要となるのがドールの力を最も引き出すことにできるドールマスターを育成することだ」
「復活というと、過去にもシャドーはいたんですか?」
「ドール創世の話だ、かつて世界中を混沌に陥れたシャドーの侵攻に対し、ドールが生み出され、人とドールが協力してシャドーを打ち負かしたという伝説が残っている。伝説ではその後、人々に平和と自由が取り戻され、それに協力してくれたドールにも人と同じ自由を与えて対等な関係として共生の道を歩んだとされている」
「そんな歴史があったんですね」
「簡単な歴史だ、興味があれば図書館に行って歴史書を読み漁ると良い、歴史を学ぶ事は大切な事だ」
「わかりました」
「あぁ、それよりもコマリ、ドールマスターというのは誰もがなれるわけではないのは知っているか?」
「いえ、知りませんでした」
「ドルマにとって重要なのは声だ」
「声?」
「ドルマに適性のある者の声には、特殊な波動が含まれていてな、それがドールと共鳴して力を発揮する」
「特殊な波動というのは、どういう事でしょう?」
「説明するのは簡単じゃない、だから応援みたいなものだと思えばいい」
「応援ですか」
「あぁ「がんばれ、がんばれ」っていえばドールはがんばるし「がんばらないで」と言えばドールはがんばらなくなる」
「え、ネガティブな言葉も聞いちゃうんですか?」
「そうだ、だからドルマとドールというのは実に難しい関係性だ、それこそ純度の高い絆がなければうまくやっていけないものなのさ」
「むずかしそうですね」
「まぁな、ただ一番に覚えていてもらいたいのは、ドルマという存在はドールに多大なる影響を与えるということだ。
君たちが声を発すると、それだけでドールは自由を失いかねない。だから、多くのドールは特殊な鉱物で出来たアクセサリーでドルマの特殊な声を遮断するための装飾を施している」
「・・・・・・ファンタジー」
「ん、なんか言ったか?」
「い、いえなんでもありません」
「とにかく、そうしないとドールたちは聞き入れたくないようなことも聞き入れてしまう、具体的に言えば悪用されるんだよ」
「ドールが悪用されているのですか?」
「近年確実に増えてきている問題が発生している」
僕はその言葉を聞いて、真っ先にミルフィさんを思い出した。もしも、あんなに強くて勝気な人が犯罪に加担してしまったらと思うと、世界征服でもされてしまいそうな程に恐ろしく思えた。
「ドールは声にあらがう事は出来ないのですか?」
「個人差によるだろうが、ドールとはドルマの声を聴き、シャドーと戦うために生み出された存在だ」
「シャドーと戦うために産まれた存在」
「あぁ、だが臆するなコマリ、ドルマとドールの関係性は切っても切り離せないほど素晴らしい絆で結ばれた崇高な存在だ。
そして、それがこの「ドール」という国を築き上げたのだ。この関係性がなければ今頃この国は滅んでいた程にな」
「そんなにすごいことなんですね」
「あぁ、それゆえにドルマは「人」と「声」の道を学び、ドールとの良好な関係を継続していかなければならないのだ、それがドールへの敬意だ彼らは決して道具じゃないという事を忘れないで欲しい」
道具という言葉を強調するフシミ先生はとても真剣なまなざしで僕を見つめてきていた。おそらく先生にとって今の言葉が一番わかってほしい事なのだろうと直感で理解した。
「わ、分かりました」
「君にはかなりの適性があると聞かされている、すぐにでもドルマとしての才能が開花していくだろう」
「そんな、まだ僕は何もしていません」
「わかっている、だが、才能がある故に君にはそれだけドールという存在を如何様にも操ることができてしまう可能性があるという事だ。だから、君にはまっすぐと伸びる声の道を歩んでほしいと思っている」
大まかな話でも分かる、非日常的会話に少し興奮しながら、これから始まる生活にワクワクとしていた。
「それでだなコマリ」
「はい、なんでもいってくださいフシミ先生、僕は出来る限りの事をします」
「早速だが君にはパートナーとなってもらうドールを見つけてもらわなくてはいけないんだ」
「パートナーとなるドールですか?」
「あぁ、このスクールには多くのドルマとドールの候補生がいてね、その中からパートナーとなる相手を見つけるのさ、まぁ多くの場合ドルマの方から持ち掛けることが多いんだが、ふむ、どうしようかな」
「ど、どうしましょう」
「コマリ君、まずはこのスクールにいるドール候補性から素晴らしいパートナーを見つけるんだっ」
「ぼ、僕が見つけるんですか?」
「そうだ、これは大切なミッションだコマリ、これをこなせば次のミッションを君に与えよう」
まるでゲームの世界にでも入り込んだかのような展開、僕はドキドキしながらこのミッションを引き受ける事にした。
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