第84話 問:滅多に怒らない人を怒らせるとどうなりますか?
答:取り返しの付かない事になります。
――例えばこんな感じにな。
「……へぇ、そうでしたか。私には『君だけが我慢して辛い事をただ一人きりで耐えているなんて理不尽、絶対に許せないのに』と仰っていたような……あれは記憶違いだったかしら?」
「あっ、いえ……実は前々から根回しと準備はしてきたので……」
そして、こう言う時に下手な言い訳をすると状況は悪化するだけなのだと俺は痛感する。
「あら、その中に私の心境は含まれてはおりませんのね?」
なあ。
こんな窮地こそ、レクスとヴァロに助けて貰えって思ったろ?
オリンピア嬢が鬼女になった瞬間に逃げたぜ、我先にな。
友達じゃねえのかよ、俺達!
『おいジン、絶対に俺を出すなよ、今だけは表に出すなよ……!』
カインまで怯えてやがる。
『うるせえええええええええええええええっ!』
「いえ、その……ええと……」
俺がさぞや目を泳がせていたからだろう。一歩、また一歩とオリンピア嬢は俺に近付いてきて、俺は一歩、また一歩と後ずさり、そして壁に背中が当たった。
誰かに助けに入って欲しいけれどここは大講堂の裏手側、放課後になれば誰もいない。
「言いたい事があるならばきちんと言葉にして下さりませんか?」
壁ドン!
恐怖の壁ドン!
俺の逃げ場を潰す壁ドン!
鬼女なのに笑顔!
般若の顔より怖い!
オリンピア嬢はモデルのように背が高いので、見下ろされる。
ついに、俺は腰を抜かしてへたり込んだ。
「ごごごごご、ごめんなさい!」
「まあ、何について謝っていらっしゃるのかしら?」
「ええと、それは……」
『バカ!火に油を注ぐな!』
「口先だけの謝罪を私が求めていると思っていらっしゃるの?」
「あっ……ああっ……」
「確かに政略的な婚約ですけれども、私はカイン様を心からお慕いしておりますのよ。カイン様の事は何でも知りたいのですし、何時であろうと何処までであろうと支えて差し上げたいのです。カイン様のためでしたら世界の怨敵になっても構いませんし、自害をカイン様がお望みでしたら今すぐに。両親や弟や一族を裏切ってもカイン様のお側にいられるのでしたら笑っていられます。
『傷物』と忌まれ哀れまれた私を、カイン様はいつであろうと厭わずに、正真正銘に慈しんで下さったではありませんか」
あ、あの……いつの間にそんな病ンデレな、いや、闇ンデレ女に?
変わっちゃったのは俺の所為なの?
「だから、どうか私を拒まないで下さいな……」
『……ゾエより酷いな』
『待ってくれ!キスさえした事無いんだけど!?』
『女は、正直俺も分からん……』
『あんだけ寝取ったのに!?』
『黙れ童貞!』
『やかましい!大根持ってくるぞ!』
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