第68話 論破ァ!しても相手は意固地になるだけだから

 「もう止めなさいバルトロマイオス!」

ハリッサさんがヒステリックに叫ぶが、

「嫌ですお母様!どうせ皇族派なんて綺麗事しか言わない外道共です!それに類する人間が姉様の婚約者に二度も定まるなんて絶対に僕は認めません!どうせまた姉様が害されるだけだ!」

「……」

ひいいい!デボラが『この無礼な令息を後でどう処分してやろうかしら』って気配を出し始めたぞ!

こっちの方が怖いよおおおおおお!


『カインみたいにさ……マザコンならぬシスコンを相当こじらせているな、コイツ』

『俺はここまでデボラの母上を困らせはしないぞ!ジン!』

『断言しているけれど、オマエのマザコンは世界を滅ぼすくらいの代物だからね?』


「分かりました。ではバルトロマイオス殿、僕がきちんと礼節を以てオリンピア嬢と接すれば、その考えを改めてくれますか?」

『こんなクソガキに何を言っているんだ、ジン!?』


「……えっ」

それまで闘牛のごとく息巻いていたバルトロマイオスが、いきなり勢いを失って俺を見つめた。

俺は言葉を続ける。

「僕はここまでオリンピア嬢がどんな方なのかを想像しては、不安な思いを抱いていました。

でも、オリンピア嬢の弟であるバルトロマイオス殿は身分が上の僕に喧嘩を売ってでも守ろうとした。つまりオリンピア嬢はバルトロマイオス殿にとってはそれほどに大事な姉で、それほどに慕っている。僕にも大事な弟がいますから……その心情は完全には分からないにせよ、遠いものではありません」

「……っ」

よし、黙ってくれた!

俺はハリッサさんに目配せをする。すぐに彼女は頷いて、

「大変な失礼を致しました事をお詫び申し上げます。娘はこちらでお待ちしております」

と、案内を再開してくれた。


 2階の、贅を尽くした迎賓室。家庭教師らしい女性達が5人、扉の側に控えている。

ハリッサさんが軽くノックをして、扉を開けた。

「オリンピア、レーフ公爵令息様がいらっしゃいましたよ」


ここに、俺の婚約者(予定)がいるのか。

深呼吸してから俺は、最初に部屋の中に進み出た。

「お初です。僕が――」

デボラが一歩遅れて、更にその後にハリッサさんが続く。


「「「っ!?!?!?」」」


俺達は固まった。


オリンピア嬢が部屋の隅のカーテンレールからぶら下がっていた(意訳)。

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