第61話 どうしてバレた?
すみませんでした!
『真っ黒な鎧を着た恐ろしいモノが3体同時に襲ってきたため多数の生徒が怪我を負った』
――と言う事で、リュケイオン学園が一時閉鎖になりました。
2週間も封鎖して、近衛騎士直々に『真っ黒な鎧を着たモノ3体』の調査に乗り出すらしい。
そりゃこんな大事件が起きたらそうなるよな……。
ごめんなさい。
ちょっとやり過ぎました。
言い出しっぺは俺なので、責任も全部、俺にあります。
仕方なくディーンと一緒に家にいたら、レクスとヴァロ(ヴァリアンナ嬢も一緒)が遊びに来た。デボラは今日も出勤中である。コンモドゥスはまた本に夢中で食事をすっぽかしたため、罰として食材の買い出しに行かされている。
ヴァリアンナ嬢は訓練用のお気に入りの木剣を持っていた。
「あっ、ヴァリアンナじょう!けんじゅつのおけいこするの?」
とても嬉しそうなディーン。
「ええ!だってあたくし、このえきしになりたいんですもの!」
「ぼくもけんじゅつのおけいこしたい!」
「うむ、それでしたら庭を少々お借りして、お二人に稽古をお付けしましょう!」
ディーンとヴァリアンナ嬢がアグリッパさんに剣術を教わっている間、俺達はコソコソと密談していた。
「凄いことになったな!」
でもレクスはどこか清々しそうに笑っていた。
危うかったとは言え、クレオパトラ嬢を無事な内に助けられたからだろうな。
彼女達は、もう今頃には治療を受けて、アカデメイア学園に戻っているはずだ。
出血が酷かったテオドラ嬢も『豊潤』が間に合って、命に別状は無かったと聞いている。
「何を笑っているのだね。これが万が一にも露呈したら……吾輩達はまた処分を受けるのだぞ!どう考えても最良で吾輩達全員が退学処分を受けるはずなのだがね!?」
対照的に、ヴァロは不機嫌そうである。
いや、ヴァロのこの反応が正しいのだ。
『万が一』、俺達がやったと露呈したら、俺達は……確実に、無事では済まないのだから。
「……」レクスも黙ってしまう。
俺は、覚悟を決めて口を開いた。
幸い、俺にはディーンがいる。
「レクス、ヴァロ。全部が僕の所為って事にしてよ。実際そうだし」
「……それは……その……それはそうなのであるが……」
ヴァロが珍しく言葉に詰まった。
レクスが苦々しそうに、
「それは嫌だぜ。父上に怒られる方が遙かにマシだ!」
「……でも、現実問題として退学処分が下されたら、僕やレクスは廃嫡されるかも知れない。ヴァロだってセウェルス家から勘当されかねない。
そうなった時に貴族としても、個人としても……被害が最小で済むのは僕だから」
レーフ公爵家の跡取りにはディーンを据えれば良いし、そもそも俺は前世が平民だったから、貴族じゃなくなってもギリギリ生きていける。人に頭を下げて、汗水垂らして働いていく事に抵抗感は全く無い。
ただ、デボラもディーンも酷く悲しむだろうな。
家族を悲しませる事だけが、とても心残りだった。
「「……」」
レクスもヴァロも涙ぐんでいた。
ああ、男の友情って良いな……。
『……バカか、ジン』
『仕方ねえんだよ……カイン。それに俺はオマエがいるし、何とかなるよ』
『俺はデボラの母上と離れては生きていけないぞ!』
『やかましいぞ!』
その時、ポンポニアが慌てながら走ってきた。
いつもおっとりとしている中年の婦人で、こんなにドタバタと走るなんて滅多にしないポンポニアが。
「大変です!大変なのです、坊ちゃま方!ああっ!あまりにもいきなり過ぎて、私にはどうしたら良いのか……分かりませんわ!」
「どうしたのポンポニア!?」
――俺達の手前でついに息を荒げて膝をついたポンポニアの背後から、クレオパトラ嬢とテオドラ嬢が、優雅に、淑やかに、気品たっぷりに歩いてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます