第39話 随分とヤバい事情
「おかあさま、あのね」
その日の夜。
俺はデボラに今日あったことを話した。
ヴァロは理事長直結だしレクスは雷親父が飛んで来るので、一番まともかつ冷静に話を聞いてくれるのはデボラだろうってのが俺達3人の結論だったから。
「ええ、その伯爵家とはリンドス伯爵家で間違いないわ……」
仕事でクタクタだろうに、デボラは最後まで聞いてくれた。
「しっているの?おかあさま……どうして?」
「……マグヌスの言った以上に悪名高い家よ。
この帝都の裏社会の人間を取り仕切っているのが今のリンドス伯爵なのよ。あの犯罪・暗殺組織『カタルシア』の頭領が腹違いの弟らしくって……。
勿論、陛下や皇太子殿下も何度もお取り潰しにしようとなさったのだけれど、その度に側近の召使いが一度ならず行方不明になったことで、泣く泣く止めざるを得なかったのよ」
わーお……あの超有能な皇太子殿下が手をこまねいているとか逆にスゲーよ。
だけど息子をアホなヤンキー(不良って言うべきか?)に育てたのは親の失態だったな。
「おかあさま、ぼくはいいよ。でもヴァロをひとじちにとったのはゆるせないの」
俺やレクスと違って、ヴァロはチャンバラごっこした事は無いんだ。
いつだって黙って本を読んでいて、騒いだりして誰かに迷惑をかけた事なんて無かったんだ。
「私だって大事なカインを恐喝されたのに黙ってなんていられないわ。陛下達だけでなく、皇太后様にも申し上げます」
デボラは怒ってくれた。ただ、俺達にとっても、最も助かる対応をしてくれるようだ。
親に圧力を先にかける事で、不良の一家全滅は回避させつつも、俺達への恐喝行為を無くすつもりなのだ。
『デボラの母上……!』
カインがとても嬉しそうに呟いていて若干キモい。
『ああ……やはり俺を愛して下さっているのか!』
「デボラよ、おぬしの息子については面白い噂話を聞いておる。何でも医師がさじを投げた病に倒れたフェニキア公爵令嬢を治したとか。神官共が解釈に未だに迷っておる妙ちきりんな神託が下ったともな」
「皇太后様、やはりご存じでいらっしゃいましたか」
「息子に登校停止処分が下ったにしてはおぬしの顔が全く曇っておらんでのう?内々に調べさせたのじゃよ。しかし……あの忌々しい伯爵家の名まで出てくるとは思わなんだ」
「皇太后様が『忌々しい』とは……?」
「おぬしは知らなかったのう。
そうよの、皇族でもこの事実を知る者はほんの数名に限られておるからのう。
――我が夫、先の皇帝アレクサンドロス7世は何者かに暗殺されたのじゃよ。表向きは病死としておるのじゃがな」
「っ……」
「だが……あの忌々しい伯爵家を滅するに足る証拠がついぞ見つからなんだ……」
「皇太后様のお力を以てしても見つからなかったとは……」
「それだけ貴族派共の力は侮れんと言うことよ。……おぬしも気をつけるのじゃぞ、デボラ」
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