第33話 家庭教師、求む

 「とうこうていししょぶんとか……あいつらぜったいやばい」

「うん……ちかづくのやめろっておとうさまもおかあさまもいってた」

「こわいよね……かおもこわいし」

「にゅうがくしてまだひとつきなのにね……」


 入学一ヶ月であんな大騒動起こしたら、まあそうなるよな。

俺達3人はクラスでハブられていた。

虐められたりはしないんだが、怖がられてしまった。

「おはよう」

「ヒッ!な、なんでしょうかレーフこうしゃくれいそく……?」

……毎日、これだぜ?

流石に気が滅入ってきた。

レクスとヴァロがいなかったら、多分引きこもっていたかも知れない。


 「ワガハイはひとりのほうがきらくなのだがね」

とか言いながらヴァロは俺とレクスの隣に座って読書している。

「もうヴァリアンナじょうは……だいじょうぶ?」

「おう!おいしゃさまもこのちょうしならしんぱいないっておっしゃったんだ!らいげつからはかていきょうしのせんせいをまねいて、いろいろべんきょうさせるんだっておかあさまもいっている!」

「よかったぁ!」

「だけど、もんだいは……かていきょうしのせんせいがみつからないことだ……」

「え、どうして?」

「おれたちがあんなおおさわぎをおこしたからさ……ヴァリアンナももんだいありなんじゃないかって……すごいうわさになっているんだって……」

「あっ」


 それは盲点だった!

公爵令嬢の家庭教師ともなれば貴族階級の出身である必要がある。ちょうどコンモドゥスみたいに、家を継ぐことは出来ないし働き先を探しているヤツがなることがほとんどだ。貴族の礼儀作法をその身を以て教える必要があるからだ。

しかもヴァリアンナ嬢の場合は、家庭教師が男だととってもマズい。

『貴族の令嬢が己の家庭教師と駆け落ち!』って事件がかつては多発したんだって……。

神殿まで巻き込んだ大騒動を起こした兄(しかも子供なのに)がいる所の家庭教師になりたがる女性なんて、確かにいないだろうな……。

そりゃ妹だって問題アリアリだって思うだろう。

逆にそれを知っているのに率先してなりたがるような女性は、『何か狙っているんじゃ?』と不安要素でしかないし……。


 「いまはアグリッパさんがつてをたどってさがしてくれているところなんだ」

「あぅ……ぼくもおかあさまにきいてみる……」

「……ワガハイもいちぞくのものにきいてやろう」

「おう、ふたりともたのむぜ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る