第2話 小野篁

六道珍皇寺の井戸は冥界に繋がっている。

三条の辻は冥界の入口。


有名な話だ。


小野篁は平安初期の時代のとある人間だ。昼は朝廷に仕え、夜は冥府に仕えていた。

仕事も彼は冥府に仕えているという。


…普通に考えてオーバーワークで過労死まっしぐらである。寝る時間確保したれや。てか死んでも働くとか最悪やん。死ぬまで働けじゃなくて死んでも働けとは。


そんな和風ファンタジー定番登場人物・小野篁と名乗る人物が目の前にいる。

正直に言おう。


「…あの、ちゃんと寝てますか。」


小野篁と名乗った20代の年齢を使っている国語の担当教員・小野寺 実音みねは、虚ろな目で首を横に振ったのであった。


「もうさぁ、酷くない?」

小野篁は生前もダブルワークの仕事の鬼であったが、死後も何故か二足の草鞋を履いていた。曰く

「…近年さ、出自不明のお金使いすぎると、目ぇ付けられそうでさ…。」

とのことで、冥府の小野篁含む勤め人達は、ほとんどがダブルワークをしているらしい。配信者とか活動者とか小説家とか漫画家で何とか凌げる運のいいひともいるらしいが、ほとんどが工場とかの肉体労働、もしくは安定した給料を求めて大学を受けたり試験を受けて公務員になるらしい。

「ちなみに、清純派で売ってる○○って活動者、あいつ死んだ悪人の霊魂のこと愚痴吐きロボットにしてるぞ。」

くそほど要らない上に嫌すぎる情報を貰った。


理科準備室の片隅。理科の先生も冥府に関わりがある人らしいので、息抜き場として提供されているらしい。


そんな小野寺先生は私のクラスの隣のクラス担任で、私の国語担任だ。接触を図ってきたのは冥界の方の上司に司令されたからだと言う。

「前世の記憶もちが近年増加しててな、大忙しよ。」

原因は、近年のライトノベルの転生ものによる転生への思念増加らしい。遠い目をする小野寺先生。お疲れ様です。

前世の記憶を持っている者、もしくは前世と呼ばれるモノの魂の素質を多分に持っている者を静かに保護観察するのが、多くの仕事を占めているという。

「ちなみに、一組の篠原は江戸時代初期の農民。」

そういうこともあるらしい。


ところでさ、と小野寺先生が私に話しかけた。

「お前、源氏物語を書いたという罪で地獄行きっていう通説があって、それを俺が冥界で助ける、みたいな話になってるんだけど、知ってっか?」

前世が黒歴史すぎて見ないようにしていたので、初耳であった。

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