第47話 脅威の影
漢女たちの家庭訪問も順調に進み、『救助者マップ』を作成している街の庁舎からは、8割ほどの進捗状況であるとの情報が入ってきた。
そんな矢先の事。
ウィレミが加入した『プロミスコクーン』の面々が、気になる報告を持ってきた。
「ゴブリンの数が多い」
毎日のように依頼で森に入っている彼らの報告は信憑性のあるものと判断され、冒険者ギルドは周辺の調査依頼をホールの掲示板に張り出した。
活動の場を街の民家への家庭訪問から、街の外のフィールドへと変えた『百花狂乱』のトップメンバーたちによる調査は迅速に進み、その結果は予想通りの悪いものであった。
「やっぱり魔物の数が段違いなのねん。潰しても潰しても現れるのねん」
「オークたちの集落も増えてたよー! あと、ドロップしたタマタマがとてもでかくなってたよー! これは繁殖が加速しちゃうかもだよー!」
「ゴブリンたちに犯されそうになったのよ! あたいのこの柔肌はアレンにしか触らせないって誓ったから、必死で戦ったわ!」
一部信憑性に疑わしい証言も混ざってはいるが、どうやらこれは確定らしい。
「来やがるな。スタンピードが。」
「ええ。ギルマス、指示を願います」
ギルマスのアーモスさんと、副ギルマスのダリボルさんが真剣な顔で打ち合わせを始める。
「戦いに必要な武器防具の調達はダリボルが。ポーション類の調達と薬師ギルドとの交渉はナカムラに頼む。食料の備蓄はロウシュたちで行なってくれ!」
ギルマスから具体的な指示が各員に飛んでいく。
「ミリアムは冒険者たちへの説明と召集! ビェラは通信機を使って近隣ギルドへの通報と救難以来だ! あとシュラークは門の衛兵に! ルベルトは街長のところに走れ! 領主と騎士団には俺が手紙を書く! 早馬を用意してくれ!」
ギルド職員が着々と準備を整えているのと同時に、冒険者たちもまた、自分達の準備に余念がない。
「いいか
「「「「「おおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」
クランリーダーであるエフェリーヌさんの檄に応えてクランメンバーたちの野太い声が響き渡る。
その傍らでは『プロミスコクーン』の面々が緊張した面持ちで黙々と武器の手入れを行っている。ウィレミは気丈にやる気の表情を見せてはいるが、それを見つめるウィスラとウィトンの姉弟の顔は不安げだ。
「おおジョセフィーヌ! お前まで戦わせてすまない! もっと、俺たち男たちが、この俺、アラン率いるクラン、『光輝の頭蓋』がもっと強大だったなら!」
「何を言うのよアラン! あなたと私は地獄まで一緒よ! 魔物を倒すあなたの素敵な姿を見せてもらうわ! 私の隣で輝いて!」
筋肉成分多めのカップル? も戦意は十分そうだな。
あ、ちなみにクラン『光輝の頭蓋』とは、全員スキンヘッド上半身裸の男どもが集うクランであるが、総員はわずか5名である。
エフェリーヌさんのクラン『百花狂乱』がこの街に来たことで、単なるパーティーだった『光輝の頭蓋』がそれに張り合ってクランを名乗った形だな。
エフェリーヌさんは現役Aランク冒険者だし、率いるクランの漢女たちの実力もB~Cランクで占められているし、アラン達も全員Cランクのパーティーだ。
『プロミスコクーン』の面々もいまだFランクとはいえ、オレの『指導者』スキルで能力値が爆上りしているから大きな戦力となるだろう。
近いうちに発生することが確実と思われる、
それへの備えが着々と進められていった。
◇ ◇ ◇ ◇
「きたわよん!」
街の入り口の脇に立つ望楼からエフェリーヌさんが叫ぶ。
彼女? はなんと『遠視Lv6』というスキルを所持しており、常人よりはるか遠くまでの監視が可能なので自ら監視役を買って出てくれている。
どんな理由で彼女がそんなスキルを覚えたのか考えると怖くなってくるのでそこはスルーしておきたい。
普段はそのスキルを何に使っているのかという疑問も湧いて出たがそれも合わせて考えないようにする。うん、今は命がけの重大事なのだ。いらぬことは考えまい。
「その数はねん! およそでゴブリン800! オーク200! オーガ50! 大型のセンチピードも30ほどよ! あ! 上位種もちらほらいるわよん!」
おっと、思ったよりも多いな。
大方の予想では、魔物の分布からしてゴブリン主体になるであろうことは予測通りなのだが、その数は多くて500と目算されていた。
オークが混ざってくることも予想されていたが、せいぜい50くらいとの予想であり、オーガなどは10体くらいではないかと予想されていたことから、敵の数は大幅な上方修正が必要となってしまったようだ。
さらには、この辺ではめったに現れないはずの、でかいムカデの魔物であるセンチピードや、上位種まで現れるとは。
これは、厳しい戦いになりそうだ。
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この度は、『異世界に飛ばされたソーシャルワーカーは冒険者ギルドの事務員として働いています。』をお読みいただき誠にありがとうございます!
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