第41話 マップの完成
「い、いてきます!」
ウィレミが『プロミスコクーン』の一員となり、その日のうちにFランクにランクアップを遂げた翌日。
ウィレミは張り切ってパーティーに合流しに行った。
「あらあら、ウィレミちゃんが張り切ってとってもほほえましいのだわ野田クリスタル」
そして今日もなぜか当たり前のように一緒に寝ていたビェラさん。
おい、その芸人の名前は絶対教えた覚えがないぞ?
この人転移者じゃないか疑惑が毎日深まっていくのは何故だろう?
気を取り直してギルドに出勤、ケモミミチビッ子二人を食堂に送り出す。
さて、今日は普通に事務仕事だ。
初心者講習だったり、元クソガキの街長の息子たちの更生の指導だったりと最近事務仕事をおろそかにしていたから結構仕事が溜まっている。
書類殲滅モードに入ったオレはその日は一日机の上で奮闘した。
ちなみに書類仕事の最中に、昨日『プロミスコクーン』からの討伐証明部位の買取を担当していたミリアムさんから、「ナカムラさん、新人に頑張らせすぎです」というお叱りをいただいたりもした。
そして夕方。
無事常設の採取と討伐クエストの達成報告しに来たウィレミ達『プロミスコクーン』を出迎え、さあ夕食をといった時に、あわただしいやつらが駆け込んできた。
「ナカムラさん! 出来ました! ようやく、ギルド周辺の『避難者マップ』が出来ました!」
走り込んできたのは街長の息子、ヴィクシム君たちだ。
そういえばこいつら、あれからずっとギルド周辺の家庭訪問を頑張っていたんだったな。
そして、5人組の頭脳担当マーシュ君が、若干ドヤ顔気味に食堂テーブルに作り上げた
ほう、これはなかなかの完成度だな。
既存の地図に書き込むと細々となってややこしくわかりにくくなることを踏まえ、地図自体も手書きで作成している。
有事の要救助者がいる家等は赤色でマークされ、子供だとか老人だとかも明記されているし、避難誘導先である冒険者ギルドの場所も分かりやすく色分けされている。
「作成、完成。助言、補完、依頼。」
なるほど、作ってみて完成したから助言をくれと。それをもってより完璧に仕上げるという事だな。無口男ルニーム君の単語羅列の意味がなんとなく分かるようになってきたぞ。
「ああ、わかった。といっても、ここまでの完成度だ。助言することなどないぞ。よく頑張ったな」
オレが誉めると5人ともやりきったような表情を見せる。
こいつらは最初の態度こそ最悪だったがまだ13歳の多感な子供なのだし、育ちもいいし頭も悪くない。周囲の大人が、行動に対しての当たり前な態度で接してやれば、おのずと社会性は身についていくのだ。
「じ、じゃあ、これを父上、いや、街長のところに持って行って、ロレリアムの町全体のマップ作りの許可を貰いに行ってもいいですか!」
ヴィクシムくんが張り切っているな。
「ああ、いいぞ。だけど、提出するのは街長に直接ではなく、街行政庁舎の窓口にしなさい。家族だからと言って、正式な陳情の手続きを破ってはいけないからな」
「はい!」
一仕事やり遂げたヴィクシム君たちは、労をねぎらいそのままギルドで夕食会を始めるようだ。
マップ作りの途中で見つけた
話は盛り上がり、どうも明日は2パーティー合同で依頼を受けるそうな。
よし、ここはオレも同行を装って自分のレベル上げにゲフンゲフン。
そういえば、ヴィクシム君たちはどうやらパーティー名を正式に定めたらしく、『聡き探索団』という名前にしたようだ。
賢そうだが厨二っぽさも兼ね備えたいい名前だな。うむ。
◇ ◇ ◇ ◇
その後は特に変わりのない穏やかな日々が続き、ヴィクシム君たち『聡き探索団』はギルドでの現場実習期間を終えて領都の中等学院に戻っていった。
合同パーティーでの討伐以来のときにオレが同行したので、『指導者Lv4』の恩恵を受けて彼らのスキルLvも爆上りしていた。さぞや中等学院で目立つだろう。
そして、オレにもまた新しいスキルが生えていた。
この異世界に来てから、図らずも日本にいた時のように『福祉実践』を行ってきたからだろうか。
『実践者~為せば成る』に続いて、
『専門家』
というスキルが生えていたのだ。
このスキル、検証したところオレにとってとんでもないぶっ壊れスキルであった。
これまで、『器用貧乏』で多種多様なスキルを低Lvでゲットしていたのだが、なんとこのスキルを覚えたことにより、低いLvのスキルが高Lvに爆上りするという現象が起きたのだ。
『器用貧乏』と『専門家』の合わせ技。
これって、異世界転生チートまっしぐらですよね?!
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この度は、『異世界に飛ばされたソーシャルワーカーは冒険者ギルドの事務員として働いています。』をお読みいただき誠にありがとうございます!
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