第35話 ケモミミ3姉弟

「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ」


「ぱくぱくぱくぱくぱくぱくぱくぱく」


「もしゃもしゃもしゃもしゃもしゃ」




「おーい、喉に詰まるからゆっくり食べろよー」



 ヴィクシム君たち元クソガキ5名が、ワークショップでひねり出した『避難者マップ』の方針に従いギルド周辺の家庭訪問に再チャレンジした日。


 各家庭を回っていた彼らは、家庭訪問の途中で買い奥に隠れ住む獣人族の子供たちを見つけてしまった。


 そこでオレが呼び出され、対処をお願いされたわけだが‥‥‥まあ、このとおりギルドに連れてきて飯を食わせている最中だ。


 とても腹が減っていたらしく、目下絶賛食事中だ。おっと、お替りか? 心配するな。ロウシュさんがすぐに作ってくれるぞ。





 このケモミミ3姉弟。


 兄貴だと思っていた子はまさかのボクっこ女の子だったことが判明したのだが、上から女の子、女の子、男の子の3姉弟。


 歳は上から12歳、10歳、8歳とのこと。


 気になる種族だが、すっかりネコミミだと思っていたら、まさかの虎獣人だったよ。がおー。



 で、名前はというと、上からウィレミ、ウィスラ、ウィトンだそうな。


 ちょっとややこしくて覚えにくいなと思ったのは内緒だ。 



 今日のメニューはボア肉のベーコン入りのスープに、なんとキャベツの野菜炒めだ。もちろん黒パンも添えて。あー、早くコメが食いたい。



「‥‥‥ナカムラよ。どうしてお前はこうなんだ?」


「もうちょっと具体的に疑問を呈してほしいのですが?」




「この獣人のガキども、どうすんだ?」


「まさか、ギルマスはこんないたいけな子供たちを放り出すおつもりで?」



「はああああああああーー(ため息)。そんなことできる訳ねえじゃねえか‥‥‥おめえも意地が悪い。」


「なら、ギルドで保護するという事で。それが無理というならオレが個人的に保護しますけど?」



「おめえの給金で満足に食わせられるわけねえだろうが。まあ、アレだ。取り合えずウチギルドで保護するって街長と領主様、あとはグランドマスターに報告だけはしておくがな。そのあとは俺も正直どうなるかはわからん。どんな沙汰が下るかはわからんぞ?」



 ギルマスのいうとおり、この人族の街、ロレリアムで獣人を保護するのはいささかハードルは高い。


 なんせ、今でこそ直接の衝突はないとはいえ、の住民だと一目でわかってしまうのだ。


 いろんな軋轢が生じてくるのは明らかだろう。


 現に、すでに今のこの時点で窓口に訪れる冒険者たちは若干嫌悪交じりの好奇の目を向けてきている。ギルマスがいるから大っぴらに絡んでくることはないが。



 今後、報告を聞いた領主様などからどんな沙汰が下されるのかはわからない。


 だけれども、ウィレミ達ケモミミ3人姉弟は、間違いなく、今、ここにいるのだ。


 社会的少数者、社会的弱者でるマイノリティとしての立場で。



 ならば。


 最低でも、ここにいる間は。


 オレの目が届くところにいるうちは。


 

 差別とか、抑圧とか、人権侵害の被害には絶対に遭わせない。


 それが、ギルド事務員としての、そしてソーシャルワーカーとしてのオレの役目だ!




◇ ◇ ◇ ◇


「と、いうことで。ウィレミ。今後のことを話し合おう。」


「あ、お兄ちゃん。とってもおいしかった。ウィスラとウィトンにもたくさん食べさせてくれてありがとう! ほんとうに、ほんっとうにありがとう!」


「「ありがとう!!」」


 うんうん、お礼の言えるいい子たちだ。


 見ろよ、ロウシュさんとラドミラさんがどや顔だぜ?


 これだけうまそうに食ってくれれば作った方もさぞや作り甲斐があっただろうな。



「よーし、ちゃんとお礼が出来るいい子たちだ。それでウィレミ、ウィスラにウィトンも。これからどうしたい?」


 そんな質問を投げかけると、一気に3人の表情が暗くなる。


 行く当てのない自分たちがこれからどうなるのか不安で仕方がないんだ。


 ごめんよ。オレだってそんな表情はさせたくないさ。でも、きちんと話をしておかなければならないことってあるんだよな。



「ここに居たいか?」


「うん!」「はい!」「‥‥‥ご迷惑で、なければ」



 よし、その言葉が聞きたかった。



「そうか、わかった。じゃあ、これからここに居る為に、どうすればいいと思う?」


「働く! ボク、何でもするよ! ウィスラとウィトンにご飯と寝床をくれるんなら、ボクなんだってする! あ、あの、裸になったりしても――」


 ちょっぷ。


 とんでもないことを言おうとしたウィレミの頭頂部、ケモミミのちょうど真ん中にチョップをかます。


「うん、ウィレミの意気込みはわかった。裸にはならなくていい。お前は冒険者ギルドに登録しろ。冒険者になるんだ。」


「‥‥‥え、あ、うん。わかったよ。ボク、冒険者になる! そして、たくさん頑張るんだ!」



「よし、後で登録しような。そして、ウィスラとウィトン。お前らは、食堂の手伝いだな」


「あい!」「はい!」



「あ、そして、3人ともお勉強もな。」


「「「えーーーーーーーーーーー?!」」」 




 





ーーーーーーーーーー


 この度は、『異世界に飛ばされたソーシャルワーカーは冒険者ギルドの事務員として働いています。』をお読みいただき誠にありがとうございます!


 もし、「面白い」「続きが読みたい」など、ほんの少しでも感じていただきましたら、作者のモチベーションに繋がりますので星やハートでの応援をよろしくお願い致します!



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