第25話 お説教タイム

「聞こえなかったのか? 親のチカラを自分のチカラと勘違いしているクソガキども。お前らに冒険者は務まらん。とっとと帰れ。邪魔だ。」


 ふはははははは!


 言ってやったZE!



 え? 


 権力者の子弟にそんな態度をとって大丈夫なのかって?




 大丈夫だ!


 そもそも、ソーシャルワークとは、


『あらゆる国の政治体制や思想、団体等から独立して、社会や個人の課題や様々な構造に対し、普遍的方法(非暴力など)をもってはたらきかける実践を意味している。』


 のだ!   by うぃきえもん



 と、いう事なので街長だかいかりや長○だか知らんが、権力者におもねることはソーシャルワークに反しているのだーーーーー!(暴論(最大))。



 なんて息巻いては見たものの。


 実際日本にいた時なんかはそんな大言壮語なんか言ってられなかったわけで。



 時の総理とか内閣とか与党とかの思惑一つで介護の給付費というものが決められてしまうため、福祉業界の従業者の賃金ががっつり国に握られており、たまに「福祉業界の処遇改善」なんちゃらで報酬アップなんてニュースが出ているが――


 単価が40円上がったところで給料が増える訳ないだろう?


 ヘルパーさんなんて、ただでさえやっすい給料で過酷な仕事しているのに、逆に報酬単価が下がるんだぜ?


 ケアマネージャーは『一人39人まで担当できる』なんていうブラック企業も真っ青な待遇から、さらに45人とか60人まで増やされるんだぜ? 過労死しますよ?


 まあ、福祉関連の職に就いている人は、労働に見合ったような賃金にはならず、苦労ばっかりな職場だったわけですわ。







 今のこの状況はソーシャルワークとは関係ないんだけれど、異世界に来てまで権力者に振り回されてたまるか! という気持ちである。


 


「おい! ちょっと待てよ! 俺は街長の息子なんだぞ! そんなこと言っていいとでも思ってんのか!」


「そうだそうだ! そもそも俺たちは全員騎士になるんだ! 『騎士ギルド』なんてものがないから、学校の『戦闘課』で冒険者ギルドごときにわざわざ登録しに来てやってるんだぞ? 冒険者如きが偉そうな口を利くんじゃねえ!」



 おっと、そう来ましたか。


 だと?



 日本にいた時もいたな、こういう学生。


『ソーシャルワーク実習』にきた学生が、カリキュラムの中の介護現場の実習のときにスマホばっかりいじりやがって、何でそんなことをしているのか聞いたら「自分はソーシャルワーカーの実習に来たのであって、介護の実習に来たわけじゃない」なんてのたまいやがる奴が。


 介護の現場も知らないで介護を含む生活全般の相談にのれるわけがないじゃないかと言って帰してやったが。

 



「は? だから、お前らはその冒険者にもなれねえんだよ。そんな奴らが騎士様になるぅ? 嗤わせないでくれ。それに騎士様って言うのは高潔な意思と強靭な肉体を持っていなきゃなれないんだよな? お前らのどこに高潔さがある? おととい来やがれクソガキども!」



「くっ‥‥‥」


 そうだ、悔しがれ。


 冒険者にもなれないやつが騎士になれるはずがねえだろうが。



「ちょっと宜しいでしょうか」


 お? こいつはちょっと雰囲気が違うな。


 取り巻き4人の中でも、頭脳担当という奴だろうか。



「事務員さん。我々に『帰れ』という事は、冒険者登録をして頂けないという事ですね? たしか、冒険者に登録するには12歳以上であれば特に欠格事由などはなかったはずですが? 登録していただけないというのならば、納得いただける理由をお聞かせ願いますか?」



 おう、そう来たか。


「わからないようだから教えてやろう。一言でいうと、直ぐ死ぬのが目に見えているから冒険者として活動させるわけにいかないという事だ。」


「なるほど。では、事務員さんが我々をそう判断した根拠もお聞かせください。」



「ああ。もちろんだ。これから冒険者についてのイロハを教えてもらおうって奴が、教えてくれる相手に対してとる態度じゃないんだよ。学校の中と違って、街の外には危険がそこら中にとっちらかっているんだ。生き残るためには、先人の知恵や経験を頭を下げて、場合によっては金を払ってでも教えてもらわなきゃならないんだ。それなのに、そんな態度じゃ教える方も教えたくなくなる。これからも教えてくれる立場の人間にそういう態度を取り続けることが明らかなお前らは、いい気になって突っ走って死ぬ未来しか見えない。しかも、言いたくはないがお前らはそれなりの家柄だろう? 馬鹿なお前らが死んだ責任を冒険者ギルドに擦り付けられても困る。そう言うことだ。」


「‥‥‥なら、我々が態度を改めれば、登録していただけるという事ですか?」



「そういうところも良くないな。失敗しても、『次』があるわけじゃない。命は一つなんだ。失った機会は二度とめぐってこない。常にそういうことを意識して考えることが出来ないやつはすぐ死ぬ。」


「‥‥‥では、もう我々には機会は与えられないという事でしょうか」



 おっと、説教が効きすぎたかな。頭脳派の奴だけじゃなく、生意気な街長のボンボンまで何やら顔を青くして打ちひしがれてきているぞ?






ーーーーーーーーーー


 この度は、『異世界に飛ばされたソーシャルワーカーは冒険者ギルドの事務員として働いています。』をお読みいただき誠にありがとうございます!


 もし、「面白い」「続きが読みたい」など、ほんの少しでも感じていただきましたら、作者のモチベーションに繋がりますので星やハートでの応援をよろしくお願い致します!


 


 

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