第9話 講習会開始
当ロレリアムの街冒険者ギルドの定める独自の制度。
『新人冒険者講習制度』が動き始めた。
本日を境に、新規登録の冒険者には講習の受講が義務付けられる。
ほかにも、不公平さを避けるために登録から1年以内のGランク冒険者にも遡って講習を義務付けるとともに、登録5年以内のE~Gランクの者にも希望者には受講可能となっている。
そして、今日は『講習会』の第1回目が開催される。
講師は当然シュラークさん。オレは立ち合いのギルド職員として参加する。
で、講習を受ける受講者はと言えば、数か月前に登録をしたG級冒険者の面々だ。
まあ、そんなにポンポン新規登録者が増えていくわけではないので、当分は過去1年以内の登録者への講義となるであろう。
本日の受講者は5名。
いずれも、同じパーティーに属する12歳の若者たちだ。
この異世界では、成人は15歳からとされている。
だが、冒険者ギルドをはじめとした各種ギルドの登録可能年齢は12歳からとなっているのだ。
これは、日本で言ったら成人は18歳でも、義務教育を終えた15歳からは就労可能といった感じと思えばわかりやすいかもしれない。
この世界の平民の子供たちは、6歳になると各街にある初等教育の学校に12歳まで通う。
ただし、街から離れた村の子供や、学校に行かせるだけの余裕のない家の子供など、この例に漏れる子供も少なくはない。
貴族とか、裕福な家の子弟は6歳から大体各領の領都にある領都学院で12歳になるまでの間に初等、13歳から15歳になるまで中等教育を受けるのだ。
また、初等教育を各街で受けた後の平民の子供達でも、家庭が裕福だったり成績優秀者などは13歳から領都に赴き中等教育を受ける者もいる。
地方の騎士爵や準男爵家、あるいは商家や役人の子弟などは中等教育を受けたあとは自身の貴族家の運営や、商会の商売等の家業に見習いとして社会人デビューを果たす場合が多い。
さらに、王都には王立高等学校があり、そこでは高位貴族の子弟が6歳から18歳まで。また、領都の学校のそれと同様に、成績優秀者などは身分にかかわらず王立学校に編入する例もある。
もちろん、孤児等といった貧困層の子供たちや離村の村の子供達はこの例にもれず、年端も行かないうちから食べるために劣悪な労働条件で働いたりもしている。
つまりは、12歳から働き始める者は比較的普通であり、恵まれている部類に入るともいえるのだ。
今日の受講者である12歳のGランク5人パーティー。
その出自は、話を聞いたところによると孤児院の出身らしい。
赤子のころから孤児院で育ち、親の顔や名前は当然わからない。
ある程度成長し、身体の動きが活発になると、シスターたちの手伝いもちろん、農家や商人の手伝いなどをして小銭を稼ぎ、孤児院の運営の足しにする生活を送りながら、12歳を向かえてさらなる稼ぎを得るべく冒険者になったとのことだ。
こういった、苦労を知っている子供たちは扱いやすい。
というのも、これまでの生活で年長者や先達に対する礼儀とかをわきまえている子が多いからだ。
「「「「「よろしくお願い致します!!」」」」」
うむ、よい挨拶だ。
このパーティーの名前は『
その由来は、孤児院出身の子供達が、
そして、そのリーダーでもありパーティー名を考えたのはスラフ君。
初等教育も受けずに厨二っぽいパーティー名を考えたスラフ君は天才かもしれないな。まだ12歳で
「はい、今日はよろしくお願いしますね。オレはギルド職員のナカムラ。そして、今日の講師は元冒険者のシュラークさんです! 拍手~!」
オレは口下手なシュラークさんを気遣い、最初の挨拶と自己紹介等の仲立ちを行った。
「‥‥‥おい、ナカムラ。」
「はい?」
「‥‥‥拍手ってなんだ。」
「え、拍手って、両手の平を叩き合わせて音を出すことですよ?」
「いや、そういう事じゃねえ。‥‥‥まあいいか。まずは薬草の場所と採取からか」
「はーい! みなさーん! 薬草の場所に移動しまーす!」
律儀に拍手を続けてくれていたプロミスコクーンの面々は素直にオレ達についてきてくれた。
◇ ◇ ◇ ◇
「へぇ~、薬草って引っこ抜くことしか考えてなかったな~」
「リーダー、だから言ったじゃないか。採取用と解体用のナイフは必要だって!」
「えー、これって薬草じゃなかったんだー。どうりでー、カウンターではじかれていたのねー。」
「こんなところに薬草の群生地‥‥‥。そうか、採りきってしまわず数本株を残すことで継続的な採取が可能になるということ‥‥‥。これを知っていると知らないとでは大違いですわね。」
各々の感想が飛び交っている。
うん! とってもためになるよね!
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この度は、『異世界に飛ばされたソーシャルワーカーは冒険者ギルドの事務員として働いています。』をお読みいただき誠にありがとうございます!
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