1163 デュエット

 千尋ちゃんは気付いてしまった。

このカラオケの会で、まだ倉津君が唄っていない事に……


***


「はい、いらっしゃい」

「いらっしゃいじゃねぇわ!!イラン事ばっかりしやがって!!俺は、歌なんか、全然唄えねぇのによぉ!!」

「じゃあ、真琴がステージに上がってきたから、曲の発表ね」


聞けや!!



「樫田先輩。曲はなんッスか?」

「えぇっとねぇ。『銀座の恋の物語』か『北空港』か『ロンリーチャップリン』か『麦畑』ね」


なんでデュエットやねん!!

しかも、なんじゃ、その古臭い選曲は!!


それ、どこのやくざの集会で選曲されてる曲やねん!!


あぁ……そこは、うちのヤクザの集会だな。


つぅか、電波オマエ、まさかとは思うが。

この選曲をするって事は、さっき、うちの実家のカラオケに新曲がなかった事を根に持ってやがるんじゃねぇだろうな?



「全部デュエットッスね。クラッさんは、誰と唄うんッスか?」

「それは……奈緒と、真菜ちゃんと、私を除いた女子の中から指名。但し、真琴が、奈緒以外で一番気に入ってる子を指名する事ね」


この野郎!!なにがしてぇんだよ!!

んな事して、なんの意味が有るんだよ!!


辞めんかぁ!!



「オイ、千尋!!こりゃあ、一体、なんの嫌がらせだ!!」

「あぁ、因みに、立候補も有りね。誰か真琴と一緒に唄いたい人」

「聞けや!!」


オンドレ、マジで聞けや!!



「あっ、はいはい!!僕一緒に唄いたいです」

「あまりにも哀れですから。助けてあげても良いですよポンコツ」

「デカイの。なんならあたしと唄ってみるかい?」

「あぁ、一回、倉津君と唄ってみたい!!」

「良いんじゃない。じゃあ、私も」

「アチキも、真琴様と唄ってみたいでありんす」

「椿も、後輩さんと歌いた~~い♪唄いたい♪唄いた~~い♪」

「はよ帰れんねんやったら、唄うてもえぇよ。真上も手ぇ上げ」

「えっ?あぁ、はい、では私も……」

「もぉ他には居ませんかぁ?真琴と唄いたいと言う、奇特な女子は居ませんかぁ?」


親切で上げてくれてるのに、奇特とか言うな!!


……ってかよぉ。

手を上げてくれた女子の皆さんは優しいのぉ。

素直・ステラ・ミラーの姉ちゃん・由香・伊藤・木根・椿さん・チビ太……そして真上さん、ありがとう!!

(´;ω;`)ブワッ


オィちゃんは、ちょっと感動したぞ。



「はい。じゃあ、もぉこれ以上、他には誰も居ないみたいだから締め切りね。……さて真琴、早く、この中からパートナーを選んでよ。私、そろそろお腹空いてきたから」


欲豚死ねぇ~~~~!!


人が感傷に浸ってるって言うのによぉ。

ほんと、オマエって奴は自分勝手な言い分しか言わない女郎だな!!



「いや、オマエさぁ。そうやって簡単に選べって言うけどなぁ。善意で上げてくれてるのに、選ぶ事なんか失礼で出来ねぇつぅの!!」

「知らん。って言うか、そう言うのは良いから早く選んでよ。お腹空いたから」

「オマエなぁ!!」

「もぉ面倒臭いし、優柔不断な男だなぁ。じゃあ、私が決めてあげるよ。……えぇっと……」

「いや、オマエ、なに勝手に仕切ってる訳!!」

「じゃあ、真琴の好みから言って……一番好きそうなタイプは、王家さんかな」


ブッ!!

いい加減な事を言うのかと思ったら、結構、的確だなオマエ!!


実際はナンダカンダ言いながらでも、ステラか、素直か、真上さんの3択までは絞ってたんだけどな。

そこで敢えて、真上さんを選ぶってのは中々渋いチョイスだな。



「えっ?私ですか?私なんかで宜しいんでしょうか?他の方の方が、宜しいんではありませんか?」

「あぁ良いの、良いの。此処は、私の独断と偏見で選ばして貰っただけだから……っで、王家さん。さっきの4曲の中じゃ、なにが良い?」

「えっ?えぇっと……」


そりゃあ、困るわな。

ほぼ強引にステージに上げられた上に、あの限られた古臭い選択肢しかないんじゃあ、選び様がねぇもんなぁ。


普通に考えても、真上さんの年代じゃ歌える筈ねぇもんな。


こりゃあ、下手したら拷問になり兼ねないな。



「オイ、千尋。俺をからかって、古臭い曲にするのは良いけどよぉ。真上さんが困ってるじゃねぇかよ」

「あぁ、そうかぁ。王家さんじゃ、年代的にも厳しいかぁ」

「あぁいえ、曲自体は、一応、知っているのですが、全てが虚覚えなのもので、倉津さんに、ご迷惑が掛かるかと……」

「知ってはいるんだ。じゃあ『麦畑』ね。カラオケスタート!!」


なっ……この馬鹿!!


4曲の中で一番間抜けで、最悪な唄を選曲しやがったよ!!



「あぁ、因みにだけど。名前を呼ぶ所は、ちゃんと、お互いの相手の名前にしないと、3曲、全部唄って貰うからね」


マジで死ね、オマエだけは!!


なんで俺が、そんな必至にホステス姉ちゃんを口説いてるオッサンの様な真似をしなきゃならねぇんだよ!!


嫌だぁ~~~!!


なんて俺は思っていたんだが……



「あぁ、はい。解りました。では、出来る限り、その方向で頑張ります」


真上さ~~~ん……そんなアホの戯言に付き合わなくて良いんですよ。


……真面目過ぎますよぉ。



そうこうしてる内に、間抜けな音と共に、マジでカラオケの『麦畑』がスタート。


生演奏ですらねぇし!!



そんで前奏が終わって、とうとう俺の唄うパートに入る……


もぉ死にてぇ……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>


倉津君、みんなとの話に夢中に成ってしまい。

自分が唄ってない事には全く気付いてなかったみたいですね(笑)


……っで、この有様ですよ。


まぁでも、そのお陰で、真上さんとデュエット出来ると言う希少な機会恵まれた訳ですから、寧ろご褒美なのかもしれませんね。


さてさて、そんな中。

コミカルな音楽と共に「麦畑」がスタート!!

果たして、2人は歌い切る事が出来るのか?


そして倉津君の災難は、これで終わるのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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