1161 真菜ちゃんを甘やかそうとしない飯綱ちゃんの真意
飯綱ちゃんとの会話の中で、自身の光明を見出した倉津君。
そんな彼女に、妹である真菜ちゃんの相談をしてみた所、ややキツメの言葉が返って来たのだが。
それでも尚、飯綱ちゃんに興味津々な倉津君は……
***
「なんやのオッサン?豪いウチに興味津々やねんね」
「まぁなぁ。チビ太は、俺から見てもスゲェと思う程の経験の豊富さだからな。そりゃあ、嫌でも興味も湧くだろうよ」
「なるほど、そこか」
「まぁなぁ」
いや、ホント、そうなんだよな。
このチビ太って、信じられねぇぐらい大人びてやがるんだよな。
それこそ、崇秀クラスの大人び方をしてやがる。
だったら、そんな奴に興味が湧いても、なにもおかしくはねぇと思うんだがな。
違うか?
「そうか。……まぁえぇわ。そんな事よりもオッサンの疑問に答えたるわ」
「おぉ、そりゃあ有り難いな。……っで、どうなんだよ?やっぱオマエでも助けられる事とかあったんか?」
「まぁ、ハッキリ言うてもうたら、何度も助けられた事はあるよ。特に崇秀には何回も助けられてる」
「やっぱり、そこか。チビ太の根底にも、アイツが見え隠れする訳な」
「まぁね。崇秀は、いつも、なんも言わんでも、ウチの悩みに勘付きよるから、アイツには隠し様が無いねん。その上で、先に対応策すらも打ってきよる。まさに、お節介の大安売りみたいな男やからね。そんなんされたら、流石のウチでも逃げ様がないんよ」
なるほどなぁ。
これはまた、実にアイツらしいやり方だな。
なんでもかんでも、そうやって全ての悩みを先読みして対応されたんじゃ、拒み様もねぇもんな。
そんで悩んでりゃあ、その対応策に縋りたくもなるってもんだ。
まぁ……こんな器用な真似は、あの超絶お馬鹿太郎にしか出来無いウルトラCなんだろうけどな。
「そっか。……でも、チビ太が頼った相手って、アイツだけなのか?」
「うぅん。眞子もやで」
「あぁ、ヤッパリ、その名前も出たか」
「予想通りやろ。そやけどな。崇秀と、眞子のやり方は、全然ちゃうねんで」
「やり方が違う?……そりゃあ一体どう違うんだよ?」
「うん、あぁ、眞子はな。崇秀みたいに、前以てウチの悩みを解決するんやなくて、ウチの心そのモノを犯してきよるねん。なんでも、アホみたいに真正面からぶつかって来よるから、あの子と居ったら、なんか楽しいし、心が安らぐねん。……だから、崇秀と眞子は全然タイプが違うアプローチをしてきよる。そやけど共通点で言うなら、ウチにとったら、両方、大事な家族みたいな存在やね」
すげぇな。
体を得てから、まだたった一年しか生きてない筈なのに、眞子は、そこまでチビ太の心の中に入り込んでやがるんだな。
マジスゲェなアイツ。
「なるほどなぁ。チビ太は、そこまであの2人を認めてるって事か」
「そやね。あのアホ2人は、ウチにとっては掛け替えの無い存在やからね」
「そっか。じゃあ、真菜や、アホの俺なんかじゃ、まだまだその域には達してねぇよな」
「アホのオッサン。そこはちゃうやろ。あのアホ2人は、自分で磨きを掛けて、そこまで上り詰めた奴等やからこそ、こうやって誰からも評価されてる。これはなにも、ウチだけに限った事やないんやで。……あの2人は、誰にとっても特別な存在なんちゃうんか?」
「まぁ、そうだよな」
「そやろ。ホンでウチも、アイツ等の友達で有り続けたいから必至に頑張れる。今は対等じゃなくても、対等に成ろうとせぇへん友達なんて、友達やないんちゃうか?」
そうか!!
今のこのチビ太の発言を聞いて、ハッキリ解った事なんだが。
コイツは、崇秀同様、友達って者に『対等性』を求めてやがるんだ。
だからチビ太は、真菜の友達に成る事を拒んでやがったのか。
「そう言う事な。だからチビ太は、今の真菜の友達に成る事を拒んでた訳だな」
「おっ、よぉ解ってるやん過保護なキモイオッサン。まぁそう言うこっちゃな。今、折角、あの子が自分を変えるチャンスやのに、そこでウチが甘えさせたら、なんの意味も無くなるやろ。それに妹も、友達は、ゆっくり親交を深めて行くもんやって自分で言うたからね。口に出して言うた以上、その言葉の責任はキッチリ取って貰うで」
「……だな」
過保護なダメ兄貴で……すんませんなぁ。
罷り也にも、ヤクザって言う悩みを解決して貰った上に。
自分の妹に関する注意までされてりゃ……ホント世話ねぇな。
終わってんなぁ俺。
「まぁまぁ、そう凹みなって。過保護過ぎんのが偶に瑕やけど。オッサンの家族を想う気持ちは、別に気持ち悪ないで。ウチにとったら、ちょっと羨ましい感じやしな」
そっか。
チビ太は、長い期間1人で頑張ってきたから、余り甘やかされてねぇもんなぁ。
だからこそ、俺なんかの過保護も羨ましく感じられるんだな。
だったら、悪い事を言っちまったな。
「あぁ、すまん」
「同情すなキモイ!!全身にサブ疣出るぐらいキモイわ!!顔もキモイし」
「この野郎……」
「まぁ、キモイオッサンやけど。ウチの友達やし、しゃあないか。妹の事で、なんかあんねんやったら、相談ぐらいには乗ったるさかい、変に遠慮なんかしなや……オッサン」
なんだよ、それ。
チビ太、結局、オマエも良い奴なんじゃねぇかよ。
ただやられっぱなしって言うのも、なんか癪なんで、ちょっとだけ意地悪な事を言ってみるかの。
「あぁ、そうかよ。じゃあ、チビ太に相談した時は『タラバ蟹』でも持って行ってやんよ。どうせ、良い人ぶっても、その報酬が目当てなんだろ」
「失礼な!!ウチはタラバ蟹だけやのうて、伊勢海老も好きやの。おんなしもんバッカリ要らんわ。ちょっとは人の好みを知っとけ、このボンクラ」
「あぁ、そうッスか。チビ太の大好物は、蟹じゃなくて『おでん』だったな。良く憶えとくわ」
「オッサン、ほんまシバクで。蟹や、海老や、甲殻類買うて来い。テヤンデェ、バロ、チクショイ!!」
「浪速の春団冶かオマエは……」
まぁ『浪速の春団冶』ってのはな。
芸の為なら、女房も泣かす様な噺家で。
その上『それがどうした文句があるか?』って事を平気で言う様な、昭和の亭主関白を絵に描いた様な男なんだな。
んで、とある曲で、この春団冶を唄った曲があるんだがな。
その曲中で『酒や、酒や、酒買うて来い』って歌詞が有る訳だ。
そこをチビ太はなぞって『蟹や、海老や、甲殻類買うって来い』って言った訳だ。
だから俺は『浪速の春団冶か!!』ってツッコミを入れた訳だな。
そんな大阪ミニ情報なんだが……どうでも良いな。
すまね。
***
……まぁまぁ、そんなアホな感じでだ。
この後もチビ太と、少しの間、色々とツマラネェ話をしながら、時間を過ごすんだが。
俺がトイレに行ってる間に、チビ太は、何処かへ消えて行っていた。
……って言うか、ステージ上で唄っていた。
そして意外と、唄が上手い。
んで、俺自身は、そんなチビ太が唄って盛り上がっているステージを見ながら、いつもの様にボケ~~っとしていた。
けど、少しするとな。
今日の会で、話をする機会が無かった連中がチョロチョロと俺の元にやって来てくれ。
この後も、ソイツ等と話をしながら、有意義な時間を過ごさせて貰った。
***
……っとまぁ、そんな時間を過ごしながら6時間程が経過。
そろそろ、みんながカラオケにも飽きてきたのか、此処の空気に、ややダレが出始め。
グダグダな雰囲気が、この場から見え隠れする様になっていた。
どうやら、カラオケも潮時だな。
……とは言え。
俺自身は、結構、このカラオケ・タイムは『満足の行く出来だった』とは思ってはいる。
なんせ、こんな無茶な計画を、崇秀の力を借りたとは言え最低限は実行したんだから、一応は、文句を言われる筋合いは無い筈だからだ。
……っとまぁ、そんな訳なんで。
此処までは比較的、誰彼に、色々助けられて、なんとか事無きを得てきたんだが。
俺がストーリーテラーなのに、このまま何事も起こらないなんて、調子の良い事がある訳が無く。
此処で、俺にとっての最大の山場を迎える。
それは……
ステージに居る馬鹿電波女と、眞子が何かを話した後。
その千尋のロクデモナイ一言が原因となって始まった……
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>
飯綱ちゃんが、やや突き放したものの言い方をしてた真意。
それは『今後の真菜ちゃんの成長を阻害しない為の注意喚起』でしたね♪
まぁ実際、変ろうとしてる人間に手を差し伸べるのは、百歩譲っても良いとして。
それが倉津君の様に過度に成ってしまったら、逆に甘える事を憶えて、依存してしまう可能性すらある。
なので、何事に対してでも「限度」ってものが必要だと言うお話でした(笑)
さてさて、そんな風に注意されながらでも、比較的有意義な時間を過ごした倉津君なのですが。
何故か最後の最後に、不穏な言葉を残している様子。
果たして、この後、彼の身に何が起こったのか?
そして、その原因となった千尋ちゃんは、なにを言い出したのか?
次回はその辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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