1159 道を照らす者

 ヤクザの本質を知って尚、素直ちゃんの様に友人関係を続けて貰えるのか?

そんな質問を、自身とよく似た環境にいる飯綱ちゃんにしてみたら……逆に倉津君の有用性を説かれて(笑)


***


「うわ~~~っ、コイツ、マジかよ」

「ふふっ、漸く自分の中でも全貌が明らかになったみたいやね。アンタは頗るお人好しなオッサンやから、そんな風に業界に対して沢山のコネを持ってたら色んな面でバックアップしてくれるやろ。……勿論、友達である条件が『ヤクザとして接しない』って条項がある以上、アンタは、ヤクザとして、ウチ等と接する事は出来ひん。……ほんだら、これって、メリットだけなんちゃうん?」


かぁ~~~!!身長が小さいくせに、恐っろしい事を考えやがるな。

よくもまぁ、此処まで見事に俺の心理を突いた思考に行き着いたもんだな。


でも……スゲェ。

流石チンピラの父親を持ってるだけの事はある、って感じだしな。


それにこのチビは、こんなにズケズケと物を言う性格なのにもかかわらず、何故か他人から嫌われた形跡さえ見た事が無い。

こういう実績があるからこそ、コイツの言葉には妙な重みを感じるのかもしれないな。



「なんて奴だ。ヤクザの息子を手玉に取ろうってのか?」

「そやで」

「けどよぉ。世間は、そう見ねぇじゃねぇか。その辺は、どうすんだよ?」

「ほんまアホやね。心底アホやね。だからこその学生時代からの付き合いやんか」

「へっ?」

「同級生とか、同じ学校に在学してたって言う項目があったら、世間にも「ホンマの友達」って見られやすいんちゃうん?これが大人に成ってからの関係やったら、世間にも「ややこしい関係なんちゃうん?」って深く疑われる可能性があるけど、元からの友人関係やって知ってる人が1人でも居ったら、世間にも反論が出来る。……そう言う既成事実を早目に作ってまえば、これは世間体なんてもんを気にする必要あらへん言うこっちゃな」


コイツ……トコトンそんな先の先まで考えてやがったんだな。



「それとな。付け加えて言うなら。世間に有無を言わさん『実力』をウチが持てばえぇねん。それだけで、それこそ万事終了やわ」

「そぉかぁ?それは幾らなんでも極論過ぎねぇか?」

「どこがやのん?」

「どこがって……全部?」

「ハァ~~~……まぁえぇわ。ほんだら、例えばやねんけどなぁ。実例で挙げれば。芸能界でなぁ、年間、何人『覚醒剤』で捕まって、何回、謝罪会見して芸能界に復帰してると思てるのん?あんな、反省も、糞もない様なアホみたいなお笑い謝罪会見をしただけで、日本の国民は社会復帰を認める様な甘い国やねんで。そう考えたら、そんなもん位、実力があったらチョロないか?……要するに、求められてる人間やったら、多少スキャンダルがあっても、何回でも復帰出来るって意味に繋がるんちゃうんかいな?」

「あっ、有り得ねぇ……コイツ……」


マジで有り得ねぇよ。


こう言う、奇妙奇天烈な思考の持ち主は非常に稀だ。

俺の知ってる中じゃあ、崇秀か、奈緒さんか、眞子ぐらいのもんだ。


うわ~~~っ、神奈川には……まだ、こんな化物が潜んでやがったのか。



「あぁ、序やから、これも言うといたるわ」

「なっ……なんだよ?」


怖い……コイツ。


今度は、なにを言う気だよ?



「あのなぁ。此処に居る連中はなぁ。みんな、そう言う風に世間に求められてる人間の塊なんやねんから、アンタは、なんの気兼ねもなしに、此処の居る連中と付き合ったらえぇねんで。ホンで、自分の立場を有用に使ったり。それがアンタの生きる道なんちゃうんか?」


カッ……カッケェなコイツ。

流石にヤクザの親を持っていただけに、誰よりもヤクザを理解してやがる。


その上で【俺の行く道さえ示してくれる】なんてよぉ……マジでカッケェな!!


これで俺同様に、真菜の人生にも、少しの光明が差したってもんだ。


これを聞いた以上、俺も嘆いて悲嘆に暮れてる場合じゃねぇな。



「ふふっ、お見事。……クラの悩みを、こんなにも簡単に解決するなんてね。正直驚いた」

「はい?それ、なんの話やの、奈緒姉ちゃん?ウチは、在りのままの事実を言うただけやで。このオッサンの悩みなんか知らんがな。寧ろ、知った事か」

「また、そう言う言い方する。……けど飯綱、なんでそんな思考に至った訳?」

「そんなん簡単やんか。えぇか美樹?この話をする以前に、康弘って言う前例が有ったからこそこの話が出来たんやんか。ウチは、そこをこのオッサンにも同じ様になぞっただけの事やから、そんなに深い意味はないで」


康弘だと?


アイツがなんかしたのか?



「前例って。アイツが、なにをしたんだよ?」

「見事なまでの『実在潰し』や」

「実在潰し?……なんだそりゃあ?」

「あぁ、アホのオッサンには解らんか。あのな、簡単に言うたらなぁ。自分の知名度を世間に広めて、康弘はな。ヤクザの息子って言う実在する自分を、まずは隠蔽しよったんや。その上で、遠藤組の指揮下に置いてる業界の一部を上手い事管理しとる。実に、効率のえぇ上手いやり方やと思うで」


アイツ……密かに、そんな事やってやがったんだな。


……あぁ!!だからか!!

俺が抜けた後【無名】への参入の話が出た時、一言返事でアッサリ了承しやがったもんな。


そう言う裏があったんだな。


なんか知らず知らずの内に、みんな、なにかしろの行動を起してるんだな。



「なるほどなぁ。だからチビは、康弘には『ヤクザの自覚が有る』って言った訳か」

「そう言うこっちゃ」

「しかしまぁ、みんな色々考えてんだね」

「ホント、呆れた行動力だよ」

「あのなぁ。動かん方が間抜けなだけやで。ボケッとしとったら、それこそ出し抜かれんで」


オマエが言うと、やけにリアリティーを感じるな。


マジで生々しいな。



「だね。……さて、じゃあ私は、飯綱の良い話も聞いた事だし。そろそろ本腰入れてカラオケでもやろっかなぁ。遊びも本気ってね」

「ははっ、奈緒姉ちゃんは、ホンマ切り替えが早いなぁ。そう言うの良いと思うわ」

「まぁね」

「あぁ、じゃあさぁ奈緒。久しぶりに一緒に唄おっか?」

「うんうん。良いね、良いね。じゃあ、なにいっとく?」

「さぁね。誰かが唄ってる歌を、強引に奪っちゃえば良いんじゃないの」

「そうだね。今唄ってる奴には悪いけど。それ、行ってみよっか。……じゃあクラ、飯綱、ちょっと行って来るねぇ」

「また後でぇ~~~」


また直ぐに、そう言う悪さをしようとするぅ~~~。


あぁ因みにだが。

その犠牲者リストに一番近い、今ステージ上で唄ってる不幸な奴って……誰なんだろうな?


あぁ……グチか。


……お可哀想に。


合掌だな合掌。


……って、思った瞬間には。

機嫌良くステージで唄ってたグチは、2人の乱入者により、アッサリ、マイクを奪い取られちまったな。


うわ~~~っ、ヒデェ。


マジでやるかね。


まぁでも、奈緒さんと、美樹さんの方が、グチより圧倒的に歌唱力が高いから、これはしょうがねぇのかもな。


なんて思いながら、そんな2人を見てたら……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>


この飯綱ちゃんとの出会い。

倉津君にとっては、ある意味、掛け替えのない出会いに成ったみたいですね♪


矢張り、倉津君と同じ様な境遇……いや、もっと酷い境遇に身を置いている飯綱ちゃんだからこそ、言葉の重みも増すってもんですしね。


ですから、この出会いが倉津君の新しい一歩を踏み出す結果に成って欲しいものです♪


さてさて、そんな中。

悪さコンビの奈緒さんと美樹さんが、その場から立ち去った以上、今度は飯綱ちゃんと2人きりに成った倉津君なのですが。


此処では、どんな会話が産まれるのか?

次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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