1156 慰めて貰っていたら……あれ?

 素直ちゃんの精神的な成長を目の当たりにした倉津君。

それ故に、一年昏睡していたとは言え、自身の成長の無さに苦悩していたら、一緒に居た美樹さんが……


***


「兄貴君。……なんか、さっきの事、大分、気にしてるみたいだけど。あんまり気にしすぎちゃダメだよ。元々兄貴君は、色々と損をしやすい性格なんだからさ。もっと気楽に構えてなよ。深く考えたら、本当に損しちゃうよ」

「はぁ……」

「ふふっ。悩まない、悩まない。去年1年間昏睡して、時間をロスしちゃったんだから。多少なりとも人より成長が遅れが出ちゃってるのも否めない話。だから、そこを変に気にせず、今まで通りの兄貴君で良いと思うよ。無理して成長しようとしたって、そんなの無理なんだからさ。自分のペースで頑張りなよ」


俺の少し落ち込んだ姿を見て、そう言う風に気遣ってくれますか。

これは本当に、ありがとうございます……だな。


けど……



「なんか、気ぃ遣って貰って、すんません。スゲェ有り難い言葉なんッスけど……今、美樹さんは『無理してもダメだ』ってハッキリ言いましたけど。崇秀は、無理してでも成長してますよね?じゃあアイツは、なんなんッスか?」

「仲居間さん?あぁ、仲居間さんは稀代の化け物。なにもかもが常識の範疇じゃ計れない。無理に計ろうとしても、計り切れないから混乱するだけ。下手に計るべき人間じゃないと思うわよ」

「そうッスか。……なら、眞子は、どうなんッスか?」

「あの子も、仲居間さんと同じで常識じゃ計れない。『あたし達とは違う次元で生きてる』と考えるのが正しい考えだと思うよ。だからこそ仲居間さんは、眞子を、自分の彼女に選んだんだと思うしね」


俺の幼馴染である崇秀も、俺と同じ細胞で構成されてる眞子も稀代の化物。

でも俺だけは、1年間昏睡していたとは言え……ただのボンクラのまま。


本当に、この差はなんなんだろうか?


それに、此処で今、初めて解った事が有るんだが……この、いつも俺が言っている『化物』って言葉。

これは、決して悪口なんかではなく。

全てを覆してでも成果を上げている人間に対しての賞賛の言葉だったんだな。


そんな事にさえ気付かないで『化物』って言葉を使っていたなんて……ホント間抜けだな。


もぉどうしょうもねぇな。



「まぁ、兎に角さぁ、兄貴君。人は人なんだからさぁ。気にしても始まらないわよ」

「そうッスね。解っちゃいるんッスけどね」

「うん?ねぇねぇ、2人して、なにを仲良く話してるのよ?私も寄せてよ」


……奈緒さん。


あぁ……この人も、アイツ等同様、近年稀に見る化物だよな。

向上心が異常なまでに高くて、その上、隙も無い。


だったら、本当に俺なんかが、奈緒さんと付き合ってて良いものなのか?


崇秀と、眞子みたいに恋愛相手としてのバランスが上手く取れてねぇし……


そんな俺と付き合ってて、奈緒さん……楽しいのかなぁ?


……楽しい訳ねぇよな。



「嫌っぷぅ」

「はぁ?嫌っぷぅって、なによ?……アンタは飯綱か!!」

「うん?なんかウチの事呼んだか?」

「うわっ!!折角、久しぶりに兄貴君と、ゆっくり話してるのに……また余計なのが来たよ」

「はぁ?なんやのそれ?人の名前を勝手に呼んどいて、なにそれ?気分悪ッ」


いや、まぁ……なんかすまんな。



「どっちがよぉ?コッチが気分悪いわよ」

「なにがやのさぁ?意味わからんし」

「……ってか美樹さぁ。アンタ、自分の彼氏が居るのに、なに、人の大切な彼氏にまでちょっかい出そうとしてるのよ?アンタ、ドンだけ飢えてる訳?」

「あぁ、そう言う事かぁ。流石は奈緒姉ちゃん、えぇとこ見てるわ。美樹は、エディとHが上手い事、行ってへんから、イライラして、ちょっとつまみ食いしようって魂胆なんやな。そりゃあ悪い事したね」

「なっ!!失礼な!!エディとは上手く行ってるわよ!!」

「えぇ~~~、ホンマかぁ?ホンマは相手されへんからって、家でオナニーばっかりしてるんちゃうん?」


いや……あのチビっ子よぉ。

俺なんかが、こう言うのもなんだけどな。

一応、異性の俺が居るんだからよぉ。

そう言う『シモ』の露骨な話は、出来るだけ避けてあげた方が良いんじゃねぇか?


なんの罰ゲームだよ、それ?


つぅか、なんの話だ、これ?

ちょっと想像して勃起しちまったじゃねぇかよ。



「してないわよ!!エディは、ちゃんと、あたしを愛してくれてるわよ」

「美樹さぁ。……愛されてるって意味、本当に解ってるの?」

「ホント、失礼ね!!ちゃんと解ってるわよ!!ドンだけ子供扱いなのよ!!」

「まぁ、美樹は平気な顔して穴開きパンツを履く様な女やからなぁ。そりゃあ奈緒姉ちゃんも心配するってもんやわなぁ」

「でしょ」


あの……ホントにもぉ、その件に触れてあげるのは辞めてあげましょうよ。


それ、ただの拷問ッスよ。



「うわ~~~ん、兄貴君!!ほんの些細な一度だけのミスなのに、鬼ババァと、微生物がネチネチしつこく、それバッカリ言って虐めてくるぅ~~~」

「ちょ!!誰が微生物やのん!!そこまでチッコないわ!!」


まぁ……かなり小さくはあるが、確かに肉眼で確認出来無いレベルの小ささではねぇわな。


けど、あれッスな。

こうやって改めて見ると、長身の美樹さんと、チビッ子が並ぶと、スゲェ身長差だな。


両者の顔の作りも合って、本当の親子みたいだ。


『まぁまぁ、お母さん落ち着いて、娘さんは反抗期なんですから……』

……って、処だな。


……って!!オイオイ俺!!

また脳内でロクデモネェ事を考えちまってるよ。

直ぐに、こう言う馬鹿な事を考えるから、いつも失敗してるってのも、いい加減解ってるのによぉ。


なんで、こんな簡単に調子に乗っちまうんだろなぁ。


……心底、そんな自分が嫌に成るな。



「いやまぁ、奈緒さんも、チビッ子もよぉ。もぉ、美樹さんを虐めるのはヤメテてあげましょうよ。セクシーパンツ履いたぐらい、別に良いじゃないッスか」

「あぁ~~~あぁっ、また、そうやって美樹を庇うし」

「あぁ、いや、庇ってるんじゃなくてッスね。一回ぐらいなら、そこまで言わなくても良いんじゃないッスかね?って話ッス」

「もぉ、馬鹿なんだから……それが、よくないから、こうやって口酸っぱく言ってるんでしょ」

「いや、あのねぇ、奈緒。そこまで何回も言って貰わなくても、もぉ十分に解ってるわよ」


だったらもぉ、それでOKじゃないッスか。


美樹さんが解ってる以上。

公衆の面前で、これ以上の注意は、あまり必要ないと思うんッスけど。



「どうだかねぇ。……処女なのに、そんな事を平気でするんだもん。今もどうだか、疑わしいもんだよ」


へっ?


これって……そう言う事なんッスか?

美樹さん、処女で『エロパン』履いちゃったんですか?


そりゃあ確かに、ちょっとドン引きな方向だな。


処女の初Hで、その下着はねぇわな。



「ちょっと待ってよ!!あの時は、もぉ処女じゃなかったわよ!!ちゃんとエディに愛して貰った後よ!!」

「あぁ、そうなんだ。もぉ美樹は、エディとHしたんだ。それはおめでとう♪」

「ホンマに良かったなぁ、美樹。開通おめでとうやわ」


へっ?


はっ、はい?

またなんか、話の方向性が一気にズレてねぇか?

今の今まで美樹さんが履いたセクシーパンツの話で口論してなかったか?


なんで急にソッチの話になるんだ?


この女性独特の感覚だけは……訳がわかんねぇぞ?



「あぁ、ありがとう」

「……っで、どうだったのよ、美樹?エディとの初Hの感想は?」

「いや、あの、もぉ最初は、これでもかって位スッゴイ痛かった。やってる最中も、雰囲気も糞も無く。ただ只管、痛くて涙が止まらなかったもん」

「あらら、そんなに痛かったんかいな。そやけどエディって、顔に似合わず下手糞なんやねぇ」

「うぅん。下手な訳じゃないわよ」

「ホンマかいな?」

「うんうん。ホントホント。だって此処最近は、少しづつだけど、あたしも気持ち良くなってきたしね。下手じゃないと思うわよ。……まぁただ、本人曰くね。初物は、あたしが初めてだったらしいんだけどね」


うわっ!!マジで話が完全に逸れた。


しかも美樹さん。

俺が居るのに、素で『気持ち良くなってきた』とか言っちゃってるしよぉ。


なんだこりゃ?



「へぇ~~~っ、じゃあ、結構やっちゃってるんだ」

「まっ、まぁね。なんて言うか……やっぱ、Hを知っちゃったらさぁ。その、なんて言うか……やりたいじゃない。それに折角さぁ。最高の彼氏が居るんだから、もっと愛されたいじゃない」

「あぁ……なんか解らん事もないねぇ。美樹にとっては初めての彼氏やから、特に大事にされたいもんねぇ」

「そうなのよねぇ~~~。しかも相手が、あのエディだよエディ。もぉなんでもしてあげたいって感じなのよ」


愛されてんなぁ、あのデカイ兄ちゃん。

美樹さんが見た事ないぐらいデレデレじゃんかよ。


しかも、大量の惚気が、全身から噴出しちまってるしよぉ。


今まで知らんかったが、素の美樹さんって……こう言う人なのな。



「ちょっと美樹。その考えだけは、アンタには危険だよ」

「えっ?どうしてよ?尽くしたいだけじゃない」

「あぁ、奈緒姉ちゃん、これはアカンわ。ホンマに危険やわ。美樹は、自分の事すら、なんも解ってへんわ」

「えっ?飯綱まで……なんで?なんで、そんな事を言うのよ?別に良いじゃない」


うん?ホントに、なんでッスかね?

好きな奴相手なら、普通、誰だって、そうなって然りなんッスから、俺からすりゃあ、特別、なんも、おかしくねぇと思うんッスけど。


なんか、これにも理由があるんかの?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>


成長の度合いなんてものは、人それぞれなので、そこまで気にする様な話でもないのですが。

それでもついつい「自分だけが取り残されてしまっている様な感覚」に陥ってしまうのは、よくある事。


ですが、それ自体は悪い事ではなく。

逆に言えば、成長しようとする兆しが見えてるとも言えなくもないですからね。


……っとまぁ、そんな話をしていた筈なのに、何故か話が逸れ「美樹さんとエディさんの霜の関係の話」に。


一体、この話の着地点は、何処にあるのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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