1154 後先考えない迷探偵

 素直ちゃんや美樹さんと話をする内に、また何やら気付いた倉津君。

その成否を確かめるべく、素直ちゃんにとある質問をする事にしたのだが……


***


「オッ、オイ、素直!!」

「えっ?あぁ、はい!!なんですか??」


……やっちまったな。

また無駄に1人で盛り上がって、無意味に素直を驚かせちまった。


なにかを思い付く度に、毎度毎度こんな感じに成ってすまんのぉ。



「あぁ、いや、急にデカイ声を出して、すまん」

「あぁ、いえ。僕は大丈夫ですよ。それで真琴君、どうかしたんですか?」

「いやな。どうもこうもねぇんだけどな。オマエ、今さっき『千尋の曲を聞いて、眞子に相談したくなった』って言ってたよな?」

「あぁ、はい。確かに、そう言いましたね」

「それってよぉ。どのタイミングで相談したんだ?千尋の曲が流れてる最中か?それとも聞き終わった後か?」


この素直が眞子に相談したタイミングこそが、この一連の眞子の不可解な行動の謎を解く重要な鍵に成っている。


それ故に、此処さえハッキリすれば、眞子の意図がある程度だが見えてくる筈だからな。



「眞子ちゃんに相談したタイミングですか?……えぇっと確か、僕が眞子ちゃんに相談を持ち掛けたのは『千尋さんが唄っていた曲の途中』ですね。なんかそれまでは、1人で色々とグジグジ考えてたんですけど。千尋さん達の曲を聞いてたら、急に安らいだ気分に成れたんで……その勢いで、眞子ちゃんに相談しましたね」


ヤッパリだ。

これで、あのお節介娘が、自分の順番を変えてまで美樹さんをステージに上げた理由が解ったぞ。


全ての謎は解けた!!


アイツの動機は、これだ(↓)!!



「ヤッパリ、そうか。なるほど、なるほど。これで全てのパーツが出揃ったって訳だな」

「どういう事なの、兄貴君?解る様に説明してくれる」

「あぁ、勿論良いッスよ。これは単純なトリックっすから」


探偵気分で気分は上々だな。

まさに名探偵コナンにでも成った様な気分だ。


……でもな。

変に解答が解っちまって、自分自身の気分はスゲェ勢いで下降気味だけどな。


なんてったって、こうやって謎は解けたのは良いが。

ソレって逆に言えば、眞子のトリックに完全に嵌められたって事に繋がる訳だからな。


実は、内心はショボボボボ……だったりもする。



「……あの、真琴君、それで?」

「あぁ、いや、悪ぃ悪ぃ。直ぐに説明するわ」

「はい、お願いします」

「おぅ!!実は、このアイツの仕出かしたトリックにはな。重大な3つのキーワードが隠されててな。それさぇ解れば、アイツの意図が読めるんだよ」

「アイツって……眞子ちゃんの?」

「そういうこった」

「う~~~ん。でも、今の状態じゃ、なんの事だかサッパリ解らないけど。……その重大な3つのキーワードって言うのは、なに?」


美樹さんも、素直も、なんか神妙な顔をして聞いてくれてるな。


だからなのかは知らねぇが、これって、結構、楽しいよな。

人が解らない事なのに、自分だけが解るって言うのは、スゲェ満足のいく優越感だ。


これなら、眞子トリックに嵌められた価値が有るってもんだよな。


特に美樹さんは年上だしな。


優越感がパネェっす!!



「いや、これ自体は、そんな小難しい話じゃないんッスけどね。その重大な3つのキーワードって言うのは、まず『立証されている千尋の曲の効果』ってのが1つ目。ほんで『素直が眞子に持ち掛けた相談』って言うのが2つ目。そんで最後に『美樹さん達をステージに上げた理由』って3つ目がキーワードで成り立ってる訳なんッスよ」

「うん?そうなんだ。でも、まだヤッパリ、なんかシックリこないね。兄貴君は、それで、なにが見えてきた訳?」


解りませんかねぇ?


意外と鈍いッスねぇ美樹さ~~ん。

……等と、また懲りずに調子に乗ってしまう俺。


まさに調子乗りの小学生だな。



「あぁ、確かに、これだけじゃあ、ちょっと解り難いッスかね」

「いや、兄貴君。ちょっとじゃなくて、全然、解らないんだけど」

「あぁ、じゃあ、解説する前に、ちょっと前フリに成る話を説明するッスね」

「あぁ……うん」


そんじゃまぁ、眞子が出した謎の謎解きを、本格的に行ってみますか。



「いや、実はッスね。この話以前に、美樹さんも知っての通り、さっき嶋田さんと、山中のアホが揉めてましたよね」

「嶋田さんに、山中君?……あぁ、うん。揉めてたね。山中君、凄い剣幕だったね」

「ですよね。……けど、あの揉め事って、実は千尋のお陰でアッサリカタが付いたんですよ」

「はい?千尋のお陰?……なんで、あの2人の揉め事に千尋が関係してくる訳?」

「それが、さっき美樹さんが言った『歌の効果』って奴ッスよ。アイツの歌には『癒しの効果』があるじゃないですか。だから山中自身も、比較的、冷静に話を進められた結果、あの件はスムーズにカタが付いたんですよ」

「あっ、そう言う事だったんですか。……確かに山中君、あんなに怒ってたのに、直ぐに話が付きましたよね」


オィちゃんの話を真面目な顔で、ちゃんと聞いてくれる良い子達じゃのぉ。


良し良し。

そんな良い子達には、もっと解り易く、親切、丁寧に説明して上げようじゃないか。



「だろ。これが最初のキーワード『立証されている千尋の曲の効果』って奴だな。……っでだ。それと時を同じくして、俺と、山中同様の効果を得た素直が、此処で眞子に相談を持ち掛けえる訳だな。これが第二のキーワード『素直が眞子に持ち掛けて相談』するって項目だ」

「あぁ、はい。唄の効果が立証されてるだけに、話も理に適ってますね」

「だろだろ。……じゃあ、此処で残る問題はなんだ?」

「あたしの出番……だよね?」


そうッス!!完璧ッスよ美樹さん。



「そうッスね。まさに、その通りッス。……っと成ると。眞子が順番を変えてまで、美樹さんを強引にステージに上げた理由は1つだけッスよね」

「エディとの歌の効果?」

「そぅ!!そう言う事ッスな」

「でも、ちょっと待って。あたしは、素直が、眞子に、なにを相談したか解らないから、まだ話の全体像がよく見えてこないんだけど。……素直。眞子に、一体、なにを相談したの?」


あぁ……しまったなぁ。

こうやって眞子の解説をするのは良いんだが、そこを加味してなかった。


この眞子の仕掛けたトリックを白日の下に晒すって事は。

単純に考えても、素直が眞子に相談した話を、美樹さんにしなきゃならないって事でもあったんだったな。


素直にとっちゃあ、これ程、話し難いもんなんてねぇよな。


だったら、この話自体、表沙汰にするべきじゃなかったのかもしれない。


謎が解けても、心に留めておくべきだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>


倉津君、眞子のトリックを見破ったまでは良かったのですが、調子に乗って、またやっちゃいましたね。


まぁただ、会話には、どうしても流れと言うのものがありますので、先程の様な状態では、ほぼ回避不可能。

それに、倉津君が気付く前に、素直ちゃんが先に眞子の思惑に気が付いてさえいれば、案外、この状況は回避できたかもしれませんので、これは倉津君だけの責任って訳ではないのかもしれませんね。


……っとは言え、そんな都合の良いタラレバな話をしてても仕方がない状態。

話を始めてしまった以上、どうにかしてでも、自分でこの状況を打破するしかありませんからね。


さてさて、そんな訳なので。

次回は、この状況をどう上手く纏めて行くかが肝。


果たして倉津君は、その辺を上手く纏めて行くつもりなのか?

……って感じの話を書いていきたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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