1148 冷静に成れ、冷静に
山中君の脱退を、なんとしても阻止したい倉津君。
それ故に、自分の失敗した体験談などを会話に織り交ぜて説得を始めるのだが、果たして、その成果は出るのか?
***
「アホ臭ッ。あのクビは、秀がオマエの才能を見越しての行動や。それに『笑われる人生』とか抜かしとったけどなぁ。そんなもん、ただのオマエのキャラやんけな。それにのぉ。そのキャラのお陰で、オマエの周りには、ぎょうさんの人が集まって来とるんとちゃうんか?オマエの行動はのぉ。全て才能に後押しされとんじゃ、ボケ」
ダメか。
こりゃあ全くと言って良い程、俺の意思は山中に伝わってねぇな。
自分の言ってる言葉すら理解してやがらねぇ。
その言い分が『自分と同じ』だと言う事にすら、気付いてやがらねぇ様な発言だからな。
じゃあ、しょうがねぇなぁ。
また違う方向で攻めるしかねぇか。
俺は、山中を、絶対バンドから引退なんかさせたくねぇからな。
「あぁ、そうかよ。じゃあ俺は、人が羨む様な才能満載な人間なんだな。そうやって全部、才能でなんとか成っちまうんだな。……だったら俺、なんの為に必死になって生きてるんだ?才能でなんとか成るなら、なんで苦労なんかせにゃ成らんのだ?……それともなにか?こりゃあ気のせいって奴なのか?」
「チッ……マコのクセに、やけに冷静に対応するやんけ」
……だな。
つぅかな。
オマエを、本当に辞めさせたくねぇから、感情的にならねぇ様にしてるのは事実なんだがな。
それにも増して、さっきからバックで流れているホランドとか言う鉄仮面の音色と、千尋の声に【癒されてる】と言うか、この曲のお陰で必要以上に怒りが込み上げて来ねぇんだよな。
だからこそ、こうやって冷静に対応が出来てるって話だ。
まぁオマエは、まだこれには気付いてねぇかも知れねぇけどな。
現に、この歌のお陰で、お互いが必要以上に感情的にならねぇで済んでるだろ。
こんな屈辱的な話をしてるのに、オマエが多少怒った感じは有ったとしても、まだ冷静に言葉を発してるのが、その良い証拠なんじゃねぇのか?
「まぁな。感情馬鹿の俺にしては上出来だろ」
「チッ!!挑発にも乗らんのか。……あぁ、もぉ、なんやねんな、今のオマエは?なんで、そこまでしてオマエが、僻んでるだけの俺に、お節介する必要があんねん?意味わからんわ」
「んなもん、椿さんが可哀想だからに決まってんだろ。オマエの事なんぞ、別に、どうでも良いがな。下手糞でもドラムを失ったら、新しいドラムが見付かるまで、バンドは活動休止を余儀なくされる。折角、新曲を発表した処なのに、それじゃあ台無しだ。……だから、オマエが我慢して、もっと頑張れってだけの話だ」
まぁ……口が裂けても、オマエの為とは言わん。
でも、今まで散々世話になったから、ちょっとしたお返しだけはしてやる。
だが、その殆どは椿さんの為だからな。
自分の為だとか、厚かましい事を考えるんじゃねぇぞ。
……なんて、馬鹿丸出しの『ツンデレ』節でどうでしょうか?
男がやるとキモイだけだな。
……すまぬ。
「ほんまムカツクのぉ……この糞ガキだけは」
「あぁ、さよかぁ~~~。ほなぁ~~~、そのムカ付きとやらをぉ~~、バンドに傾けてぇ~~~、自分自身を修正したらどないでんねんなぁ~~~?その方が有用なんちゃいまっかっでおます?」
「くっそぉ!!ホンマ、腹立つわぁコイツ。なんで此処で、そんなエセ関西弁やねん!!イントネーションがおかしいんじゃ!!」
「だな。……つぅかよぉ。これだけツマンネェボケにツッコミを入れれるんだったら、オマエも、もぉ冷静なんだろ。じゃあ、もぉ良いじゃんかよ。俺なんぞ、屈辱塗れに成っても尚、まだノウノウと生きてるんだからよぉ。ちょっとはお気楽に行こうぜ」
『もぉ、オマエは千回死んでくれ』
……って言われるぐらいの凄まじいレベルの中でも、俺は平然と生きてるんだぞ。
だからオマエも、この一回ぐらいの屈辱を耐えろ。
つぅか、バンドを続けろ。
事実、あんな実力が高くて良いメンバー……早々居ねぇぞ。
「ハァ……あぁ、もぉ、まいったでえぇわ。今回は完全に俺の負けや。取り敢えずやけど、話し合ってみるわ」
「おぉ!!じゃあ頑張れな。『男に二言無し』の再スタートだからな。『打倒崇秀』再びな」
「あぁ、くっそぉ。解ったわ!!もぅ1回だけ「妥当崇秀」に再チャレンジしたるわ!!」
よし、取り敢えずは言質をとったぞ!!
だったら此処で、そんな山中に朗報をあげようじゃないか……
「……っだ、そうです、嶋田さん。本人が、そう言っておりますが」
「はぁ?……ちょ!!オマ!!なに言うとんねん?」
俺、山中と話を始める前『ある事した』って言ったよな。
それ=携帯電話が通話中にして=嶋田さんに今の話が全部筒抜けに成ってたって話だ。
これ……世界一性格の悪い『仲居間流』の基本。
だから俺は、山中と話が付いた瞬間に、ポケットから携帯電話を取り出して嶋田さんと通話中だったって事を打ち明けてやった。
―――なに?性格悪いだと?
そぉかぁ?
まぁ……所詮は、外道を極めた、邪流中の究極の邪流が『仲居間流』だからなぁ。
性格が悪いと言えば100%性格は悪いとしか言い様がねぇ所業だが、その分、効率と有用性は非常に高いんだぞ。
だってよぉ。
これだと何回も同じ話をせずに済むし。
嶋田さんには直接顔を合わさなくても、この1本の電話で山中の本音が伝わるんじゃからのぉ。
オマケに両者の蟠りが、一気に梳き解れる。
山中の性格を考えれば、最終的には、どうせこうなるんだから……これって一挙三得じゃね?
(因みにだが、過去に青山さんの件の時も、これで上手くいったからな)
現に……
『OK。ありがとう、倉津君。助かったよ』
「あぁ、良いッスよ。問題ねぇッス。これぐらい、なんて事ないッス。……そんじゃあまぁ、後は、本人に代わりますんで」
『本当に、すまないね』
ほらな。
嶋田さんは、こう言う人だろ。
最初から山中を切る気なんて全く考えてねぇんだよ。
つぅか嶋田さんの事だから、どうせ【新生無名】とかって、山中の実力を上がった時に言い出す算段に違いない。
この人は、意外と、そう言う嫌な事を考える人なんだよな。
まぁ、そんな邪推をしながら、山中に携帯電話を渡すと……スゲェ嫌な顔をされた。
「ほらよ。話が付いた以上、俺は向こうに戻るからな。この携帯電話で好きなだけ、嶋田さん達と話し合っても良いぞ。まぁ気を使うなら、電話料金が掛からねぇ様に、アッチ行ってくれても構わねぇけどな」
「う~~~わっ!!もぉマジ最悪や。今日は眞子ちゃんに嵌められて、アリスに告白させられるわ。アホのマコにまで嵌められて、強制的に和解させられるわ。ホンマ、今日は、最悪の厄日やで」
ホント、その通りだな。
……この間抜けめ。
***
……っとまぁ、そんな感じで、俺なのに何故か上手く話が纏まり、これで一応は山中の件は解決。
そんで、その事をみんなに伝えながら、ステージの在る方に戻って行く事と相成った。
すると、此処に居る全員が、山中の脱退が無くなった件に安堵してくれた。
違うバンドとは言え、矢張り、みんなの仲間意識が高い事が証明されて、少し良い気分に成っていた。
だが……その気持ち良い気分は、ある事を切欠に、徐々に水を差されて行く事に成る。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>
倉津君がやりましたぁ!!
特に今回は誰に力も借りず、なんとか山中君のバンド脱退の危機を乗り越えましたぁ!!
お見事です♪
そして今回の件で、もう一点注目すべき点は……
ホランドさんと千尋さんによるコラボで発生する【歌の癒し効果】
前述では『誰の力も借りず』とは書きましたが、実際はこの歌の効果も大きかったものだと思われます。
さてさて、そんな風に万事上手くいった筈なのに。
何故か最後の最後で「不穏な言葉を残した倉津君」なのですが。
一体、この後、何が起こったのか?
その真相を次回は書いていきたいと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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