1146 無名崩壊の危機

 カラオケの一番手である真菜ちゃんが、ガチガチに緊張していたので交代要員を探していただけの筈だったのだが。

その話を切っ掛けに、何故か『嶋田さんが、山中君の実力に合わせて、今まで手を抜いて演奏していた』っと言う事実が判明。

そしてその上で、自身が衰えていない事を証明するが如く、その場で新曲まで発表したのだが……


***


「……って感じだね」

「くっ……」


山中は、苦虫を無理矢理食べさせられた様な表情を浮かべ……完全に沈黙。

これ程の実力差を見せ付けられたんじゃ、本人は堪ったもんじゃねぇだろうな。


この状況を山中は、どう打破するつもりなんだ?


そう思っていた矢先……



「あっ、あのね、山中君。椿ね。まだまだ、ずぅ~~と【無名】を続けたいからね。また一緒に、前みたいに頑張ろうよ。もぉ一回、我武者羅にやってみようよ」

「ふっ……ふざけんなや!!なにが、今更、頑張ろじゃ!!そんな同情染みたもんなんかイランわ!!」

「えっ?」

「つぅか、俺がバンドを抜けたら万事事が済むんやろが!!そやから、その後にでも、勝手にオドレ等でご希望通りのえぇドラムでも探せや!!もぉ知った事かぁ!!」


オマエの気持ちは解るけどよぉ。

その発言は、あまりにも安易すぎるんじゃねぇか?


腹に据えかねてる状況なのも解るけど、現状じゃあ椿さんは、なにも悪くねぇだろうに。

それ処か、ちゃんとオマエに救いの手まで差し伸べてるくれてるじゃねぇかよ。


それを、そんな風に言うのは、お門違いも良い所だぞ。



「えっ?えぇ?椿……馬鹿だから、またなんか悪い事を言っちゃったの?ごっ、ごめんなさい」

「オイ、山中!!なんで椿さんを責めてやるんだよ!!それは違うだろ!!」

「やかましいわ!!部外者は黙ってぇ!!コイツ等3人は一緒に演奏しながら、俺の事をズッと嘲笑っとんたんやぞ!!こんな侮辱あるかぁ!!あんま人、嘗めんなよ」

「えっ?椿、笑ってなんて……」


……だとしてもだ。



「ハァ……山中君。嘗めてるのはドッチだよ?仲居間さんに敵わないって解ってから、一番最初に戦線離脱をして金集めに走ったのは、誰だよ?金に固執してからと言うもの、演奏が上達しなかったのは、誰なんだよ?……全部オマエだろ?それなのに、なに、自分が被害者みたいな面をして、人に八つ当たりしてやがんだ?オマエこそ、あんま人、嘗めんなよ」


これは本格的にヤベェ事に成っちまったな。

山中の態度に、今度は康弘までもがマジモードに入りやがった。


こりゃあ、マジでヤバイ展開だ。



「君達、ちょっと良いか?いつまでもそうやって、ステージの上で口論されても迷惑なだけなんだがね。曲が終わったのなら、早くステージから降りてくれないか?大体、バンドの揉め事はステージの外でやるのが礼儀だろ」

「あぁ、そうだね。それは失礼。じゃあ、後の続きは宜しく」

「良いだろう。では私が、千尋との新曲を奏でさせて貰おう。千尋お願い出来るか?」


なっ、なに?

この状況を無視して、カラオケを継続するだと……


なんなんだ、このホランドとか言う奴は?

鉄仮面みたいな無表情な顔で、なんて無慈悲な事を言いやがるんだ。


オマエには人の心ってもんがねぇのか?



「えっ?この状態で?」

「当然だ。この程度の揉め事でイチイチ気持ちが揺らいでどうする?それに他のバンドの揉め事に干渉するのは、あまり感心しないな。放って置きなさい」

「……けど」

「うん。流石、全米屈指のギタリストだけあって、良く解ってる。プロなら、遊びでも、そう在るべきだ」


そう言って嶋田さんは、千尋をステージに引き上げてから、椿さんを連れてステージから降りる。


勿論、椿さんは、謂れの無い罵詈雑言を山中に浴びせられてグスグスと泣きじゃくってるが。

それに対して嶋田さんは、そんな椿さんに気遣いながらも、凛とした表情をしたまま、視線は山中だけを見ている。


そして康弘もやや呆れた顔で、山中をの事をジッと見ている。



こんな最悪な状況に成っちまって、俺は……一体、どうしたら良いんだろうか?



いや、そうじゃないな。

今は、そんな事を考えてる場合じゃない。

なんせ山中は、いつも俺が困った時には必ず助けてくれてる様な奴。

だから、なんとしても此処で、コイツに恩返ししなきゃ『男が廃る』ってもんだからな。


その第一歩を踏み出す為にも、兎に角、メンバー同士の話し合いの場を作ろう。


そう思った瞬間、俺は早急にスタジオの端に席を幾つか用意し【無名】のメンバー全員を、半強制的に、そこに連れて行った。

まずは、このなんとも言えない様な場の悪い空気が流れを断ち切る為にも、他の関係ない面子から、このメンバーを隔離するべきだと判断したからだ。


……けど、そう簡単には俺の思い通りの構図にはならなかった。

何故なら嶋田さんや康弘、それに椿さんなんかは、直ぐに俺の指示に従ってはくれたのだが、どうしても山中はだけは、その場から一切動こうとはしてくれなかったからだ。


今現在でも俺の手を強く引いてまで、頑なに無名のメンバーの居る場所への移動を拒絶してるからだ。


この様子じゃあ、どうやら梃子でも動きそうにない感じだな。


だったら、山中が動かない動かない也に、俺が、この場でケリを付けるしかねぇか。


まぁけど、そうするなら、そうするで『ある事』だけは、必ず1つして置かなきゃな。


俺はポケットに手を入れて『ある事』だけをして、山中との話し合いを切り出した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>


屈辱を味合わされたと思い込んでしまった山中君を見て、矢張り倉津君は動きましたね!!


やっぱ友達は、こうでなくちゃです♪


上部だけの仲良しこよしで付き合うのではなく。

友達が窮地に陥った時にこそ、手を差し伸べられるのが本当の友達ってもんですしね。


まぁそれ以前の問題として、倉津君本人も自分で言ってる様に、今まで山中君には一杯助けられてるんですから、此処で傍観を決め込むようじゃ本当に『男が廃る』『義理も人情もあったもんじゃない』ってもんですよ。


だからこの倉津君の行動は、必然っと言う事に成るのかもしれませんね。


さてさて、そんな中。

次回は、そんな倉津君による山中君の説得が始まる訳なのですが。

今回の最後で、何やら「ある事」とやらをしてる所を見ると、倉津君には何らかの秘策があるようです。


果たして、それは思い通りに行くのか?


そんな感じの話を書いて行こうと思いますので。

良かったら、次回もまた遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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