1141 みんなを持て成す為のアイディア
どんな出生であろうと嘆かずに前を向く事を、真菜ちゃんに教え込んだ飯綱ちゃん。
そんな彼女が次に出してきた課題は、倉津君に対して「主催者なんやったら、此処におる全員を持て成す様なイベントを考えろ」との事なのだが……
***
……そんな感じの事がありながらも。
チビッ子は真菜を引き連れて【奈緒グリ】【Fish-Queen】と渡り歩いた後。
あまり面識がない筈の【3B-GUILD】の元に行き、真菜を出汁に使って上手く中に入り込み。
あれよあれよと言う間に、なにやら3Bの連中と和気藹々と話し込んでる様子だ。
しかしまぁ、あの性格にして人当たりが良いんだな。
誰1人として、嫌な顔をする奴が居ないでやんの。
本当に何者なんだよアイツは?
……なんて、チビッ子と真菜の動向を気にしながら、近くに居る連中と少し話し込んでいたんだが……
此処で突如、障子が開き。
俺の心境は一転し、全く余裕がなくなる。
何故なら……素直が帰って来たからだ。
俺は、咄嗟に素直に声を掛け様としたんだが。
結局はなにも言葉が浮かばずに、ただ素直を見ているだけしか出来なかった。
すると素直は、俺と1度だけ目を合わせたものの。
その以降は、コチラを一切気にした様子も見せずに奈緒さんの元に向い。
なにやら奈緒さんに耳打ちをした後、一度だけ頭を下げて、3B-GUILDの方に向かって行った。
そして、なにかを耳打ちされた奈緒さんは徐に立ち上がり、廊下へと消えて行った。
一体、なにが有ったんだろうか?
……だがな。
疑問に思えど、素直や、奈緒さんに直接事情を聞く訳にも行かず。
俺は……針の筵に座らされている気分に成っていった。
そこに山中が……
「マコ、気にすな。あれは、女同士のケジメの話や。男のオマエが下手に干渉する所やないで」
「そうなのか?……けどよぉ、放って置いて大丈夫なものなのか?」
「放って置いても構へん。第一そんな心配せんでも、奈緒ちゃんは出来た子や。此処でワザワザ厄介事を持ち込んでまで、話をややこしい方向に持って行く様な真似はせぇへんやろ。奈緒ちゃんを信用せぇ」
結局、人任せか……
本当に俺は情けねぇ生き物だな。
なに1つとして自分では解決出来ずに、人に迷惑ばっかり掛けている。
なんなんだよ俺は?
「ハァ……また此処でも奈緒さんに頼るしかねぇのかよ。情けねぇなぁ」
「まぁ、そう嘆くな。頼れる人間が居る言う事は幸せなこっちゃで。……任せられる事は、そいつに任せて、己がせなアカン事に集中せぇ。それが助けてもろてる人間の礼儀ちゅうもんやで」
「俺がしなきゃ成らない事って言うのは、さっき、あのチビが言ってた事か?」
「そや。アリスの事で落ち込んどるのは、よぉ解るけどな。今のオマエには、此処に居る全員を呼び出した責任ちゅうもんがある。やから、まずはその責任を果たしてから自分の事を考え。それも礼儀の1つや」
礼儀か。
ホントそうだよな。
此処で俺が凹んで嘆いていても、誰も楽しくなんて成らないだろうし、寧ろ、ただの鬱陶しいだけの存在に成り果てるだけだもんな。
そんな奴なら、この場には相応しくない。
だったら、まずはそう言う立場にならない為にも、定義されている問題を早期に解決すべきだよな。
「そうだな。最低限度、此処に居る連中には目一杯楽しんで貰って、真菜の良い印象持って貰わなきゃなんねぇもんな。それが出来なきゃ話にもなんねぇよな」
「そういうこっちゃな。……ホンで、なんぞ面白い考えでもあるんか?」
「……悪ぃが、全くねぇな。正直言って、なんも出てこねぇ。プッスンプゥだ。けどまぁ、なんとかなんじゃねぇの」
「出たで、適当」
いや、ホント、いい加減でスマンな。
俺はいつも、こうやって適当に生きてるからな。
……けど、逆に言えばだな。
こうやって行き当たりバッタリで生きてるからこそ、意外と、こう言うピンチな場面には対応出来たりするんだぞ。
まぁつっても、今現在では、なにも思い付いてねぇから、まずは周りの会話に耳を傾けて、なにかヒントに成るもんを探ってみる事にするわ。
この場合、今、みんなが、なにを求めてるかが最重要ポイントだからな。
……ってな訳で早速、さり気なくではあるんだが、此処に居る連中の会話を一通り聞いて廻ったんだが。
矢張り、音楽関係に身を置いてる人間が多いだけの事は有って、話されているメインの内容の大半が『音楽関係』の話。
なら、もぉ答えは簡単だ。
そこをヒントに、なんか適当に面白い事を考えたら良いだけだからな。
チョロイ、チョロイ。
……っと、思って居たら、意外にも、俺の近くから、その最有力候補が挙げられた。
「ねぇ~~~、真琴ぉ~~~。この家って、無駄に大きいんだからさぁ。カラオケとか無いの?そろそろ、話をするだけじゃあ飽きて来たんだけど」
そぉ……カラオケ。
どんな大人数でも直ぐに盛り上がれるし、何をするにも対応がしやすい。
その上、此処に居る人間の大半は音楽関係者が多数。
なら、カラオケで盛り上がらない理由なんてものは、どこにも存在しない筈。
まぁ序に言えば。
今組んでいるバンドや、ユニット同士で唄わずに、メンバーをバラバラにして歌を唄えば、個人的な親交を深める要因になりそうな気がしないでもないしな。
まさに一石二鳥、ナイスな提案だ電波ウーマン!!
……って、一瞬思ったんだけどな。
ある理由があって、この提案はダメだと気付いた。
理由はこれ(↓)
「カラオケなぁ。……まぁ一応、有る事には有るんだけどよぉ。あると言っても、ほぼ、おっさん達が喜んで唄う様な糞古臭い演歌しかねぇぞ」
問題は、これなんだよな。
「うわっ!!最悪。なにそれ?なんでカラオケが有るのに演歌しかないのよ?」
「いや、なんでって聞かれてもよぉ。この家に若い奴なんか早々に来ねぇし。基本的には組の幹部のオッサンしか集まって来ねぇからよぉ。若い奴が唄う歌なんぞ一曲たりともねぇんだよな」
事実、オッサン共のムサ苦しい会合後の宴会で流れる曲は古臭い演歌のみ。
POPやロックな曲を唄う様なファンキーなオッサンは、誰1人としてイネェ。
まぁそれ以前にだ。
下手に、そんなもんを唄ったら、ソイツは大顰蹙を買って、相模湾に簀巻きにされて身投げする羽目になる。
けど、そんな慢性化した雰囲気を打開する為に、時折、コンパニオンのネェちゃんを呼ぶ時も有るみたいだけどよぉ。
そんな時に決まって流れる曲は、これまたカビの生えた様な、オッサン達の青春時代を彩る様な古臭いデュエットばかり。
曲の大半が『銀座の恋の物語』とか『北空港』とかで、昭和臭がプンプンする選曲しかない。
まぁ精々頑張った所で『ロンリーチャップリン』や『麦畑』が関の山。
そんで、この精々頑張った新しくもない新しい曲が流れたら『○○ちゃん。新しい曲知ってるなぁ』とか言い出す非常に情け無い状況だからな。
そんな理由から、ウチにはカラオケはあるが、最新の曲なんてありゃしねぇって結論に至っちまう訳なんだよな。
「えぇ~~~っ、有り得ないし!!せめて友達の曲ぐらい入れて置きなさいよ」
「アホか。ウチのオッサン等が、3B-GUILDの曲とかを唄って踊ってたらドン引くわ!!そんなもん、薄気味悪いだけだろうに」
「あぁ……そりゃあ嫌だね。それだけは本当に有り得ない光景だわ」
「だろ」
……ってな訳で、結構、機材は揃っているんだが却下な訳だ。
ショボボボボ……
「まぁそやけど、このままちゅうのもなんやな。……ほんだら、例の奈緒ちゃん等とコンパした、あのおかしな兄ちゃんが居るカラオケボックスとかは、どうやねんな?」
「あぁアソコなぁ。まぁ使えなくはねぇけどよぉ。大部屋つっても、この大人数は流石に無理だぞ。精々1部屋10人位しか入れねぇからな」
「使えないね」
「俺に言うなよ。大体なぁ。40人以上も入れるカラオケボックスの大部屋なんか、新宿に一軒有るか、どうかの話だぞ。この地域で、んなもん作っても、採算が全く取れねぇんだよ」
ヤクザの考えは、常に基本が商業ベースだからな。
儲からない事には、一切合切手出さないのが基本中の基本。
無論、それに伴って無駄なチャレンジなんてものもしない。
順当に利益換算出来る物だけを作るのが、ヤクザの掟だ。
「まぁ、合わないよね。そんな大部屋とかって、それこそ同窓会ぐらいでしか需要がないもんね」
「確かに、誰も借りひんな。それに、そんな大人数自体が集まる事すら、最近は滅多にあらへんもんなぁ」
「まぁ、そう言うこったな。……けどよぉ。逆に言えば、場所さえ有れば、この面子ならカラオケの機材もイラネェって事なんじゃねぇのか?」
おぉ……俺、冴えてるな。
今、何気に言った言葉なんだが。
確かに楽器さえあれば、この面子なら、カラオケの機材なんて必要ねぇじゃんかよ。
楽器を弾ける奴が、全曲『生演奏』すりゃあ良いだけの事なんだからよぉ。
だったらこれって、ナイス・アイディアじゃね。
つぅか寧ろ……贅沢の極みだな。
「おっ!!マコ、それえぇやんけな。それで行こうや」
「まぁ、待てって。幾ら良いアイディアとは言え、場所も、楽器も今から用意せにゃ成らんから、流石に、直ぐには無理だぞ」
「あぁ、そうかぁ。その両方を、同時に探すのは至難の業やな。ちょっと無茶か」
惜しいよな。
つぅか折角だから、この馬鹿馬鹿しい夢を、なんとかして実現してみたいもんではあるんだよな。
……っとなると、手段は1つしかねぇな、こりゃあ。
……頭痛ぇ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>
今回の飯綱ちゃんの課題に対して悩んだ挙句出した答えは『生演奏のカラオケ』
音楽関係の芸能人が多数いるだけに、これは中々良いアイディアに恵まれたものですね♪
ただ、そうなると後は『それを大人数でも実現出来る場所の確保』が問題。
倉津君は、何やら、これに対して心当たりがあるみたいなのですが。
果てして彼は、なにを思いついたのか?
そして、何故、嫌な顔をしているのか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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