1139 自身の出生を嘆かず、もっと前向きに

 ヤクザの子供だから敬遠されてる事を懸念して、みんなに集まって貰ったこの懇親会。

されど、それを否定するかの如く飯綱ちゃんは「情けないやっちゃなぁ」っと言い始める。

何故なら彼女も同じ様な境遇の中、人に頼らず、自身の力で切り開いてきたからだ。


***


「・・・・・・」

「ふん。その様子やと、漸く解ったみたいやね。要は、自分の不幸自慢なんか、なんの自慢に成れへん言うこっちゃ。無駄に同情を買おうとしてるだけにしか過ぎんからね。それを男のクセに自慢たらしく不幸自慢なんかしてんちゃうで。……それと序に、そっちの妹」

「えっ?」

「アンタも今の話で思う所があんねんやったら、変に眞子に迷惑掛けんとってな。寧ろ、上辺だけで、あの子と付き合って、知り合い作る為だけに利用するやったら、尚更、関わらんとってな。眞子を騙す様な真似したら、ウチが許さへんで」

「あっ……違ッ……」


いや、不幸自慢の話は、俺が100%悪かったと認めるけどよぉ。


真菜の件は、本当に違うぞ。

コイツは、そんなセコイ事を考えて、眞子の事を『姉様』って呼んでる訳じゃねぇからな。

寧ろ、心の底から眞子を『自分の姉』だと思ってる様な純粋な奴だからこそ、そう言ってる訳だからな。


だから、せめて、そこでけは誤解しないでやってくれ。


俺がそう思っていたら、千尋と山中が……



「飯綱。言い過ぎ。ちょっと言葉が過ぎるよ」

「ホンマやで。幾らなんでも、それは言い過ぎやろ。年下相手に、もぉ辞めたれや」


そう言って真菜のフォローをしてくれた。



「なにがやのん?こんなもん、なんも言い過ぎちゃうわ。現に、この子は、眞子を上手く利用して知り合い作ろうとしてるやんか。それやったら、何所が言い過ぎなんよ?」

「あのねぇ、飯綱。それは利用してるんじゃなくて、親戚お姉ちゃんに甘えてるだけでしょうに」

「あぁ、そうなん?……妹、ホンマにそうなん?ウチと、千尋、ドッチの言うてる事が合ってるん?なぁ、教えてやぁ」

「飯綱さん。そんなに真菜さんを追い込まなくても」

「へぇ?……ウチ、なんも追い込んでへんやん?ただ質問してるだけやんか。『甘えてる』だけなんか『利用してるんか?』って聞いてるだけやん」

「うぅ……」


それが酷過ぎるんだよ。

利用なんかしてなくても、ヤクザの娘ってだけで、そう言う風に疑われて、全く説得力が無くなる。

昔から真菜は、そう言うレッテルを張られて、そこを痛感させられて来たから言葉にならねぇだけなんだよ。


だからもぉ……本当に辞めてやってくれよ。



「……私……私は!!眞子姉様を利用しようなんて微塵も思っていません!!姉様の優しさに甘えていたのは事実かもしれませんが、利用しようなんて思った事は1度たりともありません!!失礼にも程が有りますよ!!」


真菜……



「あぁ、そうなん?ほんだら信用するわ。疑ってゴメンな」

「えっ?あの……えっ?……」

「うん?なんやのその反応は?なんで、そんなおかしな反応するんよ?」

「えっ?なにがって……」

「なんや、よぉ解らん子やな。なにをそんなに悩んでるんよ?アンタが、自分自身の口で『眞子を利用してへん』って言うたんやろ。そやから、ウチが間違ってたから謝っただけの話やん。それの何を悩む事があるんよ?」

「いや、オマエ……それって、それ以前に……」


いや、確かによぉ。

言ってる事も、謝罪してる事も、なにも間違っちゃあいねぇ行為ではあるんだけどよぉ。


オマエの態度だけは、なんか違わねぇか?

なんで謝ってる人間の方が、そんなに横柄で傲慢な態度に成るんだよ?


……訳がわからねぇ?



「なんやアンタ等、ホンマ、よぉ解らんケッタイな兄妹やな。えぇかアホ兄妹?ウチはな。眞子に対する妹の本音が聞きたかってん。だから、さっきの質問をした。ほんでこの子は、ウチの話を聞いた上で『眞子を利用してへん』って言うてんやろ。ほんだら、ヤクザの娘の真菜やのうて、1個人の真菜として、これからも眞子と付き合いを持ちたいって気持ちを証明したのも同然や。……それって、ウチと、康弘の関係と同じやからな。ほんだら、ウチが妹の事を誤解してたんやから、素直に謝らなどないするんよ?それが勘違いした者の筋の通し方ちゅうものちゃうんかいな」


理に適ってるのに、無茶苦茶な言い分にしか聞こえねぇな。


まぁ多分、このコイツ特有の偉そうな態度が、そう思わせるんだろうな。



「あぁ……」

「そやけどなぁ妹。アンタが、そうやって眞子に甘えるのは、なんぼでも甘えたらえぇねんけどな。出来ればそんな真似はせずに、自分の道は自分で切り開いて行きや。今さっきみたいに眞子に対して必死になれる熱い気持ちが有んねんやったら、誰にも頼らんでも、友達ぐらい、なんぼでも出来んねんから。……そう言う所は、あんまり人に甘えたらアカンよ」


……ハンパねぇ。


言い分は理に適って居ても、なんか無茶苦茶に聞こえるんだが。

その答えが口に出して言えるって事は、このチビッ子は、それらもキッチリ理解してる証拠。


コイツ、言うだけの事はあって、奈緒さんや、崇秀や、眞子同様に洞察力がハンパねぇな。

ただ、此処に呼び出されて来ただけなのに、今、此処にある全ての状況を、完全に把握してやがるしな。


だってよぉ。

コイツに、この場で与えられたキーワードは。

『此処がヤクザの本家』『真菜の親睦会』『俺や眞子の友達を呼んだ』

……の、たった3つだけしかねぇんだぞ。


そのたった3つのキーワードを組み合わせて。

真菜の心理を探り当てた上に、上手く康弘まで利用しやがったんだから、コイツは相当な切れ者。


オマケに、康弘には『ヤクザとしては関わるな』って釘まで刺しやがったんからな。



コイツだけは……マジでハンパねぇな。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>


自分の事であれ、身内の事であれ、張られたレッテルは自らの力で覆すもの。

飯綱ちゃんは、その事を倉津君や真菜ちゃんに伝えたくて、こんな話をしたみたいですね。


言葉はキツイかもしれませんが「出生を嘆いていても何も変わらないのも、また事実」

実際、飯綱ちゃんは、これ等を覆して来たのですから、この言葉は間違ってないと思います。


それに倉津君自身も、飯綱ちゃんの話に納得してる様なのですが。

実は、それを実行してきたからこそ、今は、こうやって多くの人に慕われる様に成ってる訳ですからね。


まぁ彼の場合は、天然なのかもしれませんが(笑)


さてさて、そんな中。

飯綱ちゃんの言葉は、真菜ちゃんに、どう言った影響を及ぼすのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来てくださいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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