1138 そんな不幸自慢して、なんの意味があるん?

 眞子の言葉に感銘を受けた倉津君は、素直ちゃんの件で凹んでる気持ちをしまい込んで『逃げない』事を前提に大広間に戻ったのだが。

何故か色んな面で、みんなから攻められる羽目に(半分ネタで)

されど、そんな中にあっても、真上さんだけは倉津君の味方をしてくれるのだが……飯綱ちゃんが(笑)


***


「そぉ?ウチは女の子には全然興味がないから、別に紹介されてもなんとも思うてへんけど。やったら、そんなんどっちでもえぇんちゃうん」


オイオイオイオイ、このチビだけは、なんて無駄なまでに正直な奴なんだよ。

歯に衣は着せねぇスタイルで、自身の思った事をズケズケと、そのまま口にしてきやがんな。


顔に似合わず、とんでもねぇ嫌な女だな。


普通そこは、嘘でも良いから社交辞令で上手く言うもんじゃねぇの?

それが大人の対応ってもんじゃんかよ。



「……飯綱さん」

「大体なぁ、真上。アンタ、大きな勘違いしてんで」

「私が……勘違いですか?それは、なんでしょうか?」

「なに?って、アンタ……。えぇか真上。人と人とが出逢うんわな。基本的には縁のもんなんや。縁があったからこそ、人と人は知り合うんや。ほんだら、なんでウチが、このデカイだけのオッサンにイチイチ感謝なんかせなアカンのよ?感謝すべきは、ウチを此処に呼んでくれた眞子なんちゃうん?このオッサン関係ないやん」


オッサン言うな!!


同い年じゃ、このチビっ子が!!



「そう……ですけど」

「まだ解らんか?ほんだらハッキリ言うたるわ。ウチ、ヤクザが嫌いやねん」

「えっ?」

「そやけど眞子が此処に呼んでくれたから、ウチは此処に来ただけやで。正直、最初からこの2人には、別に興味なんかなかったもん。そやったら、感謝の仕様なんかあらへんがな」


此処がヤクザの本家って言う場所も弁えず、本当に嫌な事をズケズケと言いやがるな。


なんなんだコイツ?


けどまぁ、言い方は悪いにしても……正論ではあるわな。

これは俺自身がいつも言ってる事だが、一般人がヤクザに関わりを持ちたくないのは至極当選の事。


寧ろコイツの態度は、ヤクザを良く理解してるって証拠でもある。


でもな。

俺の事は、どう見てくれても結構だけどよぉ。

真菜だけは、そう言う偏見の目で見てやってくれるな。


コイツは度が付く程の真面目な奴だし、この会自体が、その為の親睦会なんだからよぉ。



「じゃあ、僕も、飯綱さんには嫌われてるって事かい?」

「うん、嫌いやで。ヤクザの康弘はパス。そやけどなぁ、友達としての康弘は、逆に好きやで。嫌いに成る理由なんかなんもないもん」


うん?それって、どういう事だよ?



「それって、まさか……蟹かい?」


蟹?


なんだそりゃあ?

蟹が、この謎を解く重要なキーワードなのか?


益々わかんねぇな。



「まぁね。まぁ、それもあるけどなぁ。現実的な話で言うたら、康弘は、自分がヤクザ言うのを丸々自覚してるやん。その上で、ウチと友達に成ったろうと思うてくれてんやろ。それやったら、なんも隠してへんから、ウチが、ヤクザのややこしい話に、自分から首を突っ込みさえせぇへんかったら、おかしな関係には成らへん。ほんだら、おかしな関係にさえ成れへんかったら、普通の友達関係が成立しても、なんもおかしないんちゃうん言う話」

「まぁ、そうだね」


これって、康弘にヤクザとしては自分に関わるなって釘を刺してやがるのか?


もしそうなら……なんて奴だ。

この女、次期遠藤組組長の康弘が怖くねぇのか?



「そやけど、この2人の場合は違うやろ。この兄妹は、ヤクザの子供やから言うて、変にこんな子供染みたアホみたいな会を設けな友達も作られへん言うヘチョイ根性の持ち主。そんな自分の家庭を嘆く様なショボイ奴とは、ウチは付き合いたくもないねん。だから、この兄弟に興味はないし、そんで感謝もせぇへんって言う結論になる訳……解るか?」


……これってよぉ。

ひょっとして俺じゃなく、真菜の事を指摘してやがらねぇか?


もしそうなら、辞めてやってくれ。


確かにオマエは、そう言う風に『興味ない』って言えば済む話かも知れないけどな。

このヤクザの組長の子供って嫌な壁は、一般人のオマエが思ってる以上に、結構な高さのハードルなんだぞ。


生まれた時から強制的に背負わされた『重い十字架』だと言っても過言じゃねぇ。


そこを解って言ってるのかよぉ?



もし、知らないなら辞めろ。



「おいチビ。オマエなぁ。オマエはヤクザの家に育ってねぇから、そんな事を軽々しく言えるんだろうけどな。この嫌な想いわなぁ。体験した者にしか、わかんねぇ苦痛なんだよ。その辺の事を解って言ってんのか?」

「ふふっ、なにそれ?アンタは、ウチを笑わせたいんか?」

「んだと?」

「アンタ、ホンマにアホなんちゃうん?アンタなぁ。なんや知らんけど、自分の不幸自慢をしたいみたいやけどなぁ。心配せんでも、ウチのオトンも元ド腐れのヤクザや。今でこそ建設のドカタやっとるけど。昔は下っ端ヤクザの性質の悪いドチンピラで、散々人様に迷惑掛けた上に、いっつも違う女のとこに転がり込む様な、ただのロクデナシやってんで」

「なっ……」

「それにウチのオカンもなぁ。そんなオトンに愛想尽かせて、ウチの事を放ったらかしにして、男作って逃げよる様な見事なまでに最低な女やねんけど。……アンタ、そんな親の方がえぇの?なんやったら交換したろか?」


なっ……なんだよそりゃあ?

父親が元チンピラヤクザで、母親が子供見捨てて男作って逃げただと。


このチビ、俺なんかより不幸のドン底じゃねぇかよ。


特に親がチンピラだと子供の頃から後ろ指差されてきた筈だろうし。

なにも後ろ盾が無い分、ギリギリの貧乏生活を余儀なくされていた筈。


なのにコイツの父親は、自分の事バッカリ考えて女遊びに明け暮れていた。


そんな不幸話すら、何食わぬ顔で平然と話しやがったよ。


なんて強いメンタルの持ち主なんだよ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>


飯綱ちゃんが言いたい放題ですね(笑)


まぁそうは言っても

自分の出生を嘆く事っと言う行為は、人間なら大なり小なりあるものなのですが。

事実だけを追求すれば『そんな事は無意味』

実際、出生を嘆いた所で何も変わらないですし、何より、こういうのは後ろ向きな行為でしかないですからね。


それ故に、同じ様な境遇にいる……いや寧ろ、もっと酷い状態にいる飯綱ちゃんは、こんなキツイ言葉を倉津君や真菜ちゃんに投げかけているのかもしれませんしね。


さてさて、そんな中。

このメンタルお化けな飯綱ちゃんの意見を、倉津君は、どういった風に捉えるのか?


そして、それと同時に、同じ様に指摘されている真菜ちゃんには、どの様な影響を及ぼすのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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