1137 あれ?敵しか居ねぇ??
素直ちゃんの件で、不甲斐ない自分に気落ちせずにはいられない倉津君だったが、自身の妹である真菜ちゃんをみんなに紹介した手前、今はその気持ちを抑え、宴会場に身を投じる。
そして、その結果は……
***
「あぁ、兄様。漸くお戻りに成られたのですね。どちらに行かれていたのですか?」
そんな不安を持ちながらも、話しかけた結果は。
何故か、チヒロンが反応するのではなく、そのやや日焼けして女の子が反応を示してくれたのだが。
あれ?そうやって気軽に話してくれるのは良いが……誰だオマエ?
えっ?
・・・・・・
いやいやいやいや!!ちょっと待てぇ~~~い!!
その喋り方……まさかとは思うが、真菜じゃねぇよな?
この日焼けした上品そうなお嬢様みたいな子が、普段からあのジャージ姿しか見せない様なファッションに疎い真菜だとでも言うのか?
えっ?
いや、マジで……嘘だろ?
でも、今、確実に俺に向かって『兄様』って言ったよな。
これは急いで確認せねば!!
「なっ……なに言ってやがるんだよ。オマエの方こそ、やけに可愛らしい格好してやがるけどよぉ。いっ、一体、眞子と、何所に行ってたんだよ?」
「あぁ、はい。姉様には、先程、崇秀さんの実家に連れて行って貰い。そこで、皆様をお迎えする為にと、姉様が、この様な可愛らしい服を見繕って下さいました。……如何でしょうか兄様?真菜は変ではありませんか?」
やっぱり真菜だ。
……しかしまぁ、これは驚きの変貌だな。
髪型から、服装。
それに、なにやら唇に、なにかしろのリップを塗られているだけにも拘らず。
まさに別人の様に成った真菜がチョコンと可愛らしく座ってやがるんだから、俺としては動揺が隠し切れてない。
此処までの変化を齎すなんて、眞子の奴、一体どんな魔法を真菜に掛けやがったんだ?
服装に無頓着なはずのあの真菜が、なんか、とんでもなく可愛らしい格好をしてるじゃねぇかよ。
しかも、見事なコーディネート。
アイツは、シンデレラに出て来た魔法使いか、なんかなのか?
マジで、おっかねぇな。
「あぁ、そうなんか?それにしても良く似合ってるじゃねぇかよ。マジで良い感じだぞ」
「本当……ですか?」
「うん。マジで似合ってるって。けど、真琴にそこを聞くのは間違いなんじゃない?服装に無頓着な真琴に感想を聞いても、気持ち的に不安になるだけだから辞めときなって。……そんなの無意味なだけだから」
おのれ、毒電波怪獣チヒロンめ。
折角真菜との会話が上手く弾んでたのに、そんな時に、わざわざ『俺の服のセンスの無さを仄めかす』様な事を言ってんじゃねぇぞ。
この有害毒電波障害女だきゃあ、仕舞にゃあ電気会社に売り飛ばすぞ!!
それとなぁ電波ウーマン。
こう見えても俺の服装はなぁ。
馬鹿秀が、いつも適当に見繕ってくれた商品を買ってるから、そんなにセンスは悪くねぇの。
あんま、俺の服飾センスを舐めんじゃねぇぞ!!
(↑偉そうな事を言ってるが、結局、人任せな俺)
「それは言い過ぎだよ、樫田さん。倉津君の服のセンスは、決して悪くないよ」
「だよなぁ、康弘。千尋の馬鹿が言う程、俺のセンスは悪くねぇよな」
「うん。僕は悪くないと思うよ」
「みろみろ。見る奴が見れば、俺のセンスの良さは解るんだよ」
間違いなく、崇秀のコーディネートだけどな。
俺は、ただその服を着ているだけのマネキンに過ぎねぇけどな。
「よく言うよ。確かアンタの服って、殆どヒデが選んでるんじゃなかったっけ?それを、なに偉そうな事をほざいてるのよ。遠藤さん、騙されちゃダメですよ」
「あぁ……そうなんだ。倉津君は、人に選んで貰った服を着てるんだね。なら、あまり感心はしないね」
なんか知らんが、アッサリ敵が1人増えたな。
「まぁまぁ、そんなん言うたりなや。センスが無いんやったら、人に服を選んでもうても別にえぇやんか。モッサイ格好でウロウロされるよりかは数倍マッシやで」
「おぉ……だよな、だよな、チビッ子。ダセェより、まだマッシだよな」
「(ピクッ)チビっ子やて?……まぁマッシ言うてもや。なんかオカンに服を買ってもうてる子供みたいな雰囲気がプンプン匂ってきてるけどな」
ガッ!!折角の味方が……
チビって言うんじゃなかった。
「あぁ、確かにねぇ。それって、母親に、いつまでも服を買って貰ってるニートみたいな感じが滲み出てるね」
……あれ?
チビッ子のみならず、久しぶりに逢った理子さんにまでイキナリ毒を吐かれた上に、速攻で敵に廻っちゃいますか?
これが噂の同調圧力って奴ですかい?
けど、それにしてもおかしいなぁ?
此処には、誰1人として、俺の味方が存在してくれないのか?
俺の味方は、一体、何所に出掛けちまったんだ?
……あぁそうだ。
理子さん序で、ちょっと前の話をぶり返すけどよぉ。
例の『理子さんのお母さんで、ウチと康弘の馬鹿親父2匹が揉めてた件』なんだがな。
うちと、遠藤の所の馬鹿親父の両方が、理子さんのお母さんから手を引いて、罷り也にも事無きを得たんだよな。
あの馬鹿親父共、康弘の計画通り『合成写真』にまんまと騙されやがったからな。
アイツ等、かなり天然のアホだぞ。
なに……どうでも良いって?
あっそ。
「あの~~~っ、理子さん。久しぶりに逢うって言うのに、イキナリ、それはねぇんじゃねぇッスかね?神が哀れむ悲しさですよ」
「ふぅ……悲しいのはコッチの方よ。何所に息を潜めて潜伏してたのかは知らないけど、連絡もなしに失踪するなんて。ホント、久しぶりに逢うよね」
この様子じゃあ、あの無駄な1年の経過は理子さんに伝わってねぇのな。
……んで、毒を吐かれてりゃ世話ねぇな。
「あれ?ひょっとして、連絡無しに1年も消えてて怒ってますか?」
「怒ッテナイヨ(棒読み)」
それ……確実に怒ってますなぁ。
けどそれには、眞子の件を含めて、俺にも複雑な事情ってもんが……
「まぁ、えぇやんけな。このアホの服装も、存在も、今と成っては別にどうでもえぇんちゃうんかいな。そんなマコのアホ話より、今はマコの妹に注目したりぃな。みんな、その為に、時間裂いてまで、此処に集まったんやろ」
「まぁ……ねぇ」
おぉ……ナイスフォローだな劣等生兄弟!!
オマエなら、きっと良い助け舟を出してくれると信じてたぞ。
……っと、いつもなら傲慢な事を考えるのだが。
心を入れ替えた俺としては「いや、ホント、いつもフォローしてくれてすまんねぇ山中よ」って感じだな。
「そやろ。だからアホは無視したらえぇねんって」
「あぁ、アンタ、えぇ事言うねぇ。流石、関西人やわ。ホンマその通りやわ。今この場で、このアホのオッサンの相手にすんのは、お門違いやわね。……ちゅうこって、もぉアンタはイランから、どっか行き」
……酷ぇ。
気落ちしてるのを出来るだけ表に出さない様に、必至に頑張ってるって言うのによぉ。
服装でも、存在でも、結局、なにもかもが全否定かよ。
今の心境で追い討ち喰らったら、やるせないわ。
けど……今のパワーアップしたオィちゃんは、そんな程度の事じゃあ挫けねぇよ。
アホ扱いされるのだけは、毎度の事なだけに慣れてるからな。
簡単には、へこたれねぇよ。
「酷ぇ言い草だな」
「なんでやのさぁ?アンタが、その眼鏡の姉ちゃんを、目的有り気で此処に呼んだんやろ。ほんだら、此処に来てくれた目的はアンタの妹がメインやん。……ほら見ぃ、アンタ、完全にイランやんか」
コイツ……
……あぁ、確かに、そうですな。
目的は『真菜のお披露目』だから、理子さんが此処に来てくれた理由は、妹を見に来てくれたって事だよな。
俺は関係有りませんな。
けど、せめて『いらん』って言葉だけは辞めてくれ。
今、否定されるのが、非常に辛い立場だからよぉ。
やめれ。
「飯綱さん。必要の無い方なんて、この世には居られませんよ。倉津さんは、此処に居られる真菜さんを、我々に紹介して下さった方じゃありませんか。もし倉津さんが居られなければ、我々は真菜さんとは知り合いに成れなかったのですから、私は、倉津さんは必要な方だと思いますが。……如何でしょうか?」
あぁ……こんな所にも、1人だけ同調圧力にも屈しない俺の味方に成ってくれる人が居た。
真上さんは、ヤッパリ神の一族ッスな。
なにがあっても、弱者の味方で、弱者を救済して下さる。
それになにより、このチビッ子みたいに、絶対に意地の悪い事を言わないもんッスね。
心が安らぐッス。
癒されるッス(´;ω;`)ブワッ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>
余計な感情が表に出ない様に頑張った倉津君なのですが。
そうやって余計な感情が表に出なくても『余計な一言が出てしまう』のも、また倉津君。
見事なまでに周りに敵を作ってしまいましたね(笑)
まぁ、そうは言っても。
こうやって自身がネタにされる事で、周りに溶け込めてるのは有難い事。
案外、みんな、倉津君から何かを感じ、気を使ってくれてたのかもしれませんしね。
さてさて、そんな中。
責められてる哀れな倉津君を見てられなくなった真上さんがフォローをしてくれてる訳なんですが。
果たして、このフォローが、この場ではどの様な影響を及ぼすのか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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