1115 この場を上手く回すには

 集合時間の見極めを誤った眞子。

それ故に、真菜ちゃんの紹介会は謝罪から始まってしまったのだが、そこはなんとかクリアし、まずは千尋さんに紹介。

だが、千尋さんの傍に居たホランドさんを見た真菜ちゃんが、なにやら一目惚れした様子。


これは不味いと思い……


***


「あぁ、そう言えば、あれですよね。さっきから千尋さんと、ホランドさんって手を繋いでますよね。お付き合いを始めたんですか?」

「うっ!!馬鹿言ってるんじゃないの。私と、ホランドさんは、そう言う関係じゃないって、偶々、手が重なってただけでしょ。偶々よ偶々」

「あぁ、そうだな。それは眞子の大きな誤解だ。私は、千尋とは付き合っていない。私が愛するのは君だけだ」


ブッ!!

上手く誤魔化されると思ったのに、なんて事を真菜ちゃんに言ってくれるんですか?


これじゃあまるで、所謂1つの『自爆』って奴じゃないですか!!


もぉ……朴念仁のホランドさん、マジで死んでくれませんか?

そんな事を言われたら、真菜ちゃんの私に対するイメージが悪くなるじゃないですかぁ。

ちょっとは気を遣って下さいよぉ。



「あぁ……姉様ですか……」


あ~~~ん、真菜ちゃ~~ん、ごめんなさ~~~い。

どなたでも良いんで、今さっきの言葉をキャンセルして下さい。


無しの方向にしてぇ~~~!!


……って誰も助けてくれませんね。

はい、自分でなんとかします。



「あぁ大丈夫、大丈夫。ホランドさんはね。私を、からかってるだけなんだよ。心配ないよ」

「本当ですか?姉様は、ホランド様の事を、なんとも思われていないのですか?」


うわっ。

真菜ちゃん……それ、ストレート過ぎるよ。

それだと『好きです』って、自ら宣言してるのと同じだよ。


そんなんで大丈夫なの?


……あぁでも、本来の中学生って、こんなものなのかなぁ?

なんか私の周りに居る人が、妙に大人びた人ばっかりだから、なんか私自身が大きな勘違いをしてるのかもしれない。



「うん、なんとも思ってないよ。勿論、ホランドさんの音楽も、人柄も好きだけどね。恋愛になると完全に対象外だね」

「ブッ!!また、そう言う事をストレートに言うだろ君は」


だって、本当の事なんですもん。


私は嘘は言ってませんよ。



「どうしてですか?」

「そりゃあ、私の彼氏は崇秀だからだよ。崇秀以上の男性なんて、私の中じゃ、この世に存在しないからね。だから私の中では、崇秀以外の男性は誰も存在しない。だったら、私の恋愛対象には成らないって話にならないかな?」


さぁ、これでどうだい?


二の句も出まいて。



「ぐっ」

「まぁ、そらそうやろな。あんな規格外の化物に愛されとったら、多少出来る程度の男じゃ満足出来んわな」

「ぐっ」


ナイス山中君!!流石、関西の人だ。

良いタイミングで、最高に良い言葉を放り込んでくれたよ。


後で、なんかお礼するね。


でも、それとは別の話だけど……崇秀は化物じゃないよ。



「もぉ、山中君!!さっきも言ったけど、崇秀は化物じゃないから。……それにあれだよ。2人で居る時は超優しいんだよ。なんて言いますか、一緒に居るだけでドキドキするぐらい優しくしてくれるんだよね。もぉね、もぉね。崇秀の事しか考えられなく成っちゃうぐらい優しくされるんだよね。あぁ、それでね、それでね……」


折角のチャンスだから、偶には私にも、いっぱい惚気させておくれ。


御代は一切要りませんから。

なんなら話を聞いてくれたら、お金払いますから。


貧乏だから、話を聞いて貰っても500円位しか払えませんけど……



「あの……姉様」

「なになに?もっと崇秀の事を知りたいの?良いよ、良いよ。幾らでも話してあげるよ。真菜ちゃん聞いてくれる?」

「あぁ、いや、あの……」

「あのね、あのね、真菜ちゃん。崇秀ってね。普段、意地悪ばっかり言うんだけどね。2人で居るとね。もぉね、もぉね、いつも至れり尽くせりなんだよね。手料理を作ってくれたりもするし。私が風邪を引かない様に、いつも気を遣ってくれたりするんだよ。あぁ、でもね、意地悪を言う崇秀も好きなんだよ。あれね。なんか違う意味でドキドキするんだよね。それでね、それでね……」

「こら、アカンわ。眞子ちゃんが完全に壊れとるわ」

「あぁ、酷い事になってるね。……真菜」

「あぁ、はい。なんでしょうか、樫田さん?」

「惚気馬鹿の眞子は放って置いて、向こうに行こうか。千尋お姉さんが、他の人も紹介してあげるからさ」


あれ?あれあれ?

なんでまだ話の途中なのに、千尋さんは真菜ちゃんを連れて何処かに行こうとしちゃうんですかね?


これはひょっとして、もぉ聞いてくれない方向なんですかね?


別に遠慮しなくても良いんですけど。

……って言うか、偶には、私の惚気話も、いっぱい聞いて下さいよ。



……なんて思ってる間に、私の周りに居た筈の人が、みんな移動しちゃったよ。


あれ?なにこれ?



……なんてね。


どうやら、私の馬鹿惚気話が功を奏したのか、これでさっきのホランドさんの件は上手く誤魔化せたみたいだね。


取り敢えず、これで、ホランドさんの件は有耶無耶に出来たし。

この後の事にしても、欲豚ネェさんが、ちゃんと真菜ちゃんを構ってくれてるみたいだから。

これで、此処に来てくれた全員に、真菜ちゃんを紹介してくれるのは確実だろう。


あのお姉さんさえ付いててくれれば100%此処は安心だ。



さて、そうなると後の問題は……

さっき私達と入れ違いに大広間を出て行った真琴ちゃんと、素直ちゃんの件に絞られる。


実は、此処に入って来た時から、ズッと、そこが気になってしょうがなかった。


それ程、あの雰囲気は尋常じゃなかった。


だから此処は、真菜ちゃんの件が万事上手く行きそうだから、この期はソッチに1度、私の思考を移動させて貰おうと思う。


少々荒っぽい投げっぱなしに成っちゃいますけど。

ちょっとの間だけ、千尋さん、後の事は、宜しくお願いしますね。



私は、そう思いながら……コソッと大広間を後にした。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>


少々自爆したとは言え、なんとかホランドさんの件は、崇秀を出汁に使って上手く誤魔化しましたね。


そりゃまぁ、誰も「他人の惚気話」なんて聞きたくもないでしょうから、この誤魔化し作戦は中々理に適ってると思います(笑)


さてさて、そんな中。

これで漸く、真菜ちゃんの件も上手く動き出しましたので、次は倉津君と出て行った素直ちゃんの一件を解決しなければいけません。


まぁ、今現在、眞子自身が状況も掴めておりませんし、今の眞子に直接関係のある話ではないのですが。

さっきの雰囲気からして、またややこしい事に成っているのは一目瞭然ですし。

なによりこの一件は、眞子にとって、倉津君としての過去の自分が行って来た行動のツケを払うべき雰囲気も醸し出していましたので、次回からは、倉津君、眞子、素直ちゃんの3人での話し合いが始まります。


果たして、その話し合いはどう言う方向に進んでいくのか?


そんな感じなんで、良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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