1112 素直ちゃんの将来を考えれば

 意外な事に倉津君の演奏やパフォーマンスを買ってる人間が多く、自軍に引き入れたいと考えてる人も多い。

しかし奈緒さんは、それ等の勧誘を許さず。

『そんなにクラと一緒にやりたいんだったら、頼み込んで、自分をクラが作るバンドに入れて貰ったら』っと言い放ったのだが。


それを聞いてしまった素直ちゃんが……


***


「さぁ?それはクラが決める事だからねぇ。私には解らないよ」

「……そうですか」

「でも、素直」

「あっ、はい」

「そうやってクラのバンドに入れて貰らいたいって気持ちを前面に押し出すのは良いんだけど。それ以前にさぁ。3B-GUILDは、どうするつもりなのよ?流石にプロでやってる以上、掛け持ちって訳にもいかないと思うんだけど」


確かに、そうだよな。

今の素直の言動で、コイツが俺と一緒にバンドをやりたいって気持ちは、良く伝わって来たんで嬉しい言葉ではあるんだが。

プロのユニットのメンバーとして3Bに在籍してる……いや、メンバー処か3Bのリーダーとして在籍してる以上、その上で俺と一緒にバンドをやるなんて、ハッキリ言えば無理・無茶・無策・無謀。


第一、普通に考えても、会社がそんな馬鹿な真似を許してくれる筈がないし、3Bのメンバーも、そんな素直の自分勝手な行動を許すとは思えないんだがなぁ。



「あぁ、向井さん、それならご心配なく。問題ないです」

「って言うと?」

「僕は、今年の12月で3B-GUILDを卒業する予定になってますから、そこら辺の問題は既に解決済みですよ」


なっ、なぬ?


素直が3Bを辞めるだと?



「それにですね。これからの3B-GUILDは、来年の4月からユニット名をHIS-GUILDに改名して、全国からメンバーを募る予定らしいんですよ。だから、僕1人ぐらい抜けても問題無いです」


なっ、なっ、なぬ?

俺の知らねぇ間に、3B-GUILDは、そんな大規模な展開をするのか?


……あぁけど、どうせ、これの仕掛け人は、あのアホだな。


じゃあ、放っとこ。


いやいや、そうじゃなくてだな。

そうやってユニットとしての展開の仕方は良いとしても、なんで敢えて素直が3B-GUILDを辞めるなんて話になってるんだ?


そう言う展開をする予定があるなら尚更、そこに現リーダーが不在に成るって言うのは、どう考えても不味いんじゃねぇのか?



「あぁ、そうなんだ。じゃあ良いんじゃない。そうやって素直がフリーになる以上、私がトヤカク言う筋合いはないからね」


つぅか、なに言ってんッスか、奈緒さん?

んなもん100%納得しちゃいけない案件に決まってるじゃやないッスか!!


そこは筋合いとか云々以前の問題として、そんな馬鹿な真似を素直にさせて、どうするんッスか?


いやまぁ、そりゃあな。

さっき話していたステラとミラー姉さんの話も、そう言った感じの内容ではあったんだが。

あの場合は『眞子と言う確固たる存在の強さ』があればこそ、ミラー姉さんの話も納得出来なくもない話には成かもしれないんッスけど。

その対象が俺みたいに『成功する、なんの根拠もない様なボンクラな存在』に成った場合、それに賭けるのとでは、余りにも話の内容が違い過ぎるんッスよ。


それ故に、3B、あるいはHISで約束された成功を手放させてまで『俺とバンドを組む』なんて事は、素直のやるべき事じゃない筈。



「イヤイヤイヤイヤ、ちょっと待て、ちょっと待て素直」

「あぅ、はい」

「オマエのさぁ、そうやって俺と一緒にやりたいって気持ちは嬉しいんだけどな。なんの為にオマエは、そんな馬鹿な真似をしようとしてるんだ?誰がどう考えても、3BがHIS-GUILDに成ってからもズッと続けた方がよくねぇか?」

「嫌です。僕は、元々真琴君と一緒にバンドがやりたいかったんですよ。だから、今後HIS-GUILDに展開し様が、そこに在籍する気持ちはありませんし、なんの未練は有りません」


アホかオマエは!!

そんな『俺と一緒にやりたい』なんて、訳のわからん子供みたいな理由だけで3B-GUILDを簡単に辞め様としてんじゃねぇよ。

大体こんななぁ、メリットが希薄で、リスク塗れの真似をして、なんの意味があるんだよ?


ちょっとは冷静に成って、頭を冷やせつぅの。


どう考えても、それ……まともな神経の人間がやる事じゃねぇぞ。



「オイオイ、素直。そりゃあダメだ。……つぅかよぉ。大体にしてだな。オマエが今まで持ってた、アイツ等に対する仲間意識は何所に行っちまったんだよ?アイツ等と苦楽を共して来たからこそ、今の栄光を手に入れられたんじゃねぇのか?それを簡単に捨てるなんて、余りにも薄情ってもんじゃねぇのか?」

「そんな事……言われたって。僕は、HIS-GUILDに在籍するよりも、真琴君と一緒にやりたいって気持ちの方が強いんですから、しょうがないじゃないですか。わかって下さいよ」


あぁヤベェ。

今の素直の余計な一言で、由佳とか、舞歌とか、木根とか3B-GUILDの連中が『何事かと?』っと言う表情でチラッとコッチを見たぞ。


まぁ、アイツ等との距離を考えても、今の話が筒抜けになった訳じゃないだろうけど、こりゃあ、流石に此処で話をするのはマズイ展開だな。

このまま此処で話してたんじゃあ、これからの素直の言動次第では、いずれアイツ等にも、なにか伝わってしまいそうだし。

なにより、そんな事に成っちまったら、今後、素直の3B-GUILDでの立場が無くなっちまう可能性すらある。


流石にそれは頂けない。

なら、折角、真菜の為に此処に集まって来てくれたみんなには悪いが、俺と素直は席を外した方が良いだろう。



「あぁ、もぉ、オマエだけは……オイ、素直、ちょっとコッチ来い」

「えっ?」

「あの、奈緒さん、すみませんが、ちょっと席を外しますんで、少しの間、此処をお願いしても良いッスか?」

「うん、OK。素直とはジックリ話し合っておいで」

「ホント、いつも、すんません。迷惑掛けるッス」


俺は、そう奈緒さんに言い残して、素直を自分の部屋に連れて行った。


オマエさんが納得するまで説教タイムだ!!


この馬鹿者が!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>


素直ちゃんは、相変わらず一途ですね(笑)


まぁ勿論そうは言っても、彼女のしている話と言うのは、かなり極端な話ですし、無謀な話でもあるので、こうやって倉津君が拒否反応を示す気持ちも解らなくもないです。


早い話『お互いを大切だと思えるから、こう言うややこしい状況に成ってる』訳ですよ。


ただまぁ、なんと言いますか。

例えそうであっても、こう言う決断を下している素直ちゃんの気持ちを、倉津君がまだ見過ごしてる可能性があるかも知れません。

普通に考えても『今ある栄光を捨ててまで、倉津君との関係を優先する』っと言う決断は、生半可な気持ちで出来るものじゃありませんからね。


果たして素直ちゃんには、どの様な思惑があってのこの行動なのか?


次回は、その辺を詳しく書いて行きたい……っと言いたい所なのですが。

こう言った大きな問題が出た以上、時系列的に眞子や真菜ちゃんの件も、このまま放置する訳にもいきませんので。

申し訳ありませんが、次回は、外から帰って来た子の2人の話を書こうと思います。


そんな感じですが、良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る