1111 実力は中の下らしいな、俺って……

 エディさんが一番気にしていた『倉津君の実力の話題』が上がった瞬間、何処からともなく現れた情報通のディックさん。

果たして彼は、倉津君の実力を、どう捉えているのか?


***


「はいよ。俺ちゃんですよ。……ってか『萌え萌え美樹ちゃんピィ』久しぶりだな」

「あぁ、はい、お久しぶりではあるんですけど。出来れば、その変な渾名やめてくれませんか」

「なんでだよ?『萌え萌え美樹ちゃんピィ』滅茶苦茶可愛い渾名じゃんかよ」

「……全然、可愛くないし」


確かに、全然可愛くない渾名ッスね。


萌え萌え美樹ちゃんピィ。



「なぁデク。そんな美樹の渾名よりさぁ。彼の説明してくれよ」


うわっ、マジでダメだ、このアンちゃん。

俺が、さっき言った事を全くと言って良い程理解してやがらねぇ。


こりゃあマジで、かなりの末期的な快楽主義者みたいだな。

此処は俺の事なんかに興味持ってねぇで、彼女である美樹さんの事を優先しろっての!!



「あぁ、良いぜ」

「良くないし」

「エド。そこのニィちゃんはな。デビルス・タイガーって通り名で、昨年の4月位に彗星の如く神奈川に現れたルーキーでな。一時は、瞬間的かつ爆発的な人気を得た人材だ。けど、その後、ほぼ一年間、謎の失踪。更にその後、つい最近復帰。あぁ序に言えば、姫ちゃんの親戚でもあり。奈緒ちゃんの彼氏でもあるな」

「ふ~~~ん。そうなんだ。けど、なんで人気が在ったのに失踪なんかしたんだい?」

「あぁ、そいつはな。病院に担ぎ込まれて、意識不明だったらしいぜ」


なんでオマエは、そんな誰にも口外されてねぇ様な俺のプライベートな情報を知ってんねん?


FBIか?

KGBか?



「ほぉ、相変わらずデクは情報通だね。……っで、人気が在るって言ってたけど、実際の音の方は、どうなんだい?」

「まぁそうだな。俺ちゃん的な見立てで言えば。実力は中の下って処だな」

「なぁ~~~んだ。期待してた割に、大した事ないんだね」


だ~か~~ら~~~、俺は最初から、そう言ってんじゃんかよ。


人の話聞け!!


……つぅかツンツン頭。

テメェも、本人を目の前にして、あんま本当の事を言うな!!


凹むわ!!



「だが、実際はそうじゃねぇ。なんて言ったってよぉ。あの仲居間ちゃんが目を付けて、欲しがる様な才能の持ち主らしいからな。まだまだ、隠されたなにかがある筈だぜ」

「仲居間さんが欲しがる才能だって?それ、どういう事だい?」


なにそれ?

そんな話、俺も知らんぞなもし。


話の序でも良いから、そこを俺にも教えてくれ。



「キヒヒヒヒ……そいつは無理な相談だ。なんて言ったって、昨日、奈緒グリのメンバーで話し合った例の件があるからな。ソイツは教えられねぇな」

「デク……まさか」

「ダメダメダメダメ。クラは、私の所有物だから、そんなの絶対にダメだからね」

「いやいや、そいつは奈緒ちゃんが決めるこっちゃねぇ。このニィちゃんが決めるこったろ」


なんの話ッスかね?


また俺の知らない所で、おかしな事になってねぇッスか?



「あのよぉ。スマンが、なんの話してんだ?」

「うん?あぁ、そいつはな。俺達、奈緒グリのメンバーで、来年にな。自分達子飼いのバンドを、個人個人で作ろうって話が、昨日決まったんだよ。んで、俺ちゃんは、個人的にニィちゃんに興味が有って、目を付けてたって話だな」

「はぁ?俺の話は、別に、どうでも良いとしてもよぉ。なんでまた、そんな奇妙な事になってるんだよ?」

「なぁにな。昨日、奈緒ちゃんと、エリアスちゃんと、ホランドの旦那で、姫ちゃんを口説きに行ったんだけどよぉ。それが『メジャーバンドには入らない』って、見事なまでに断られちまってな。……だからよぉ。奈緒グリは、一応メインで活躍するとして、他にもバンドも個人的に作ろうって話になったんだよ。それだとメジャーじゃねぇだろ。……それが事の真相って奴だな」


そんなもん作って、なにする気だよ?


アンタ等さぁ、十分に実力も、人気も兼ね揃えてるのに。

今更、なんの為に、そんな馬鹿げた真似をする必要が有るんだよ?


訳わかんねぇな。



「あぁ、因みにだけど。ウチの【Fish-Queen】も、兄貴君の事を狙ってるんだけどね」

「へっ?またなんで、そんな珍妙な真似を?」

「えっ?だってさぁ。最初は眞子を狙ってたんだけど。眞子がメジャーはダメって言うから方向転換しただけの話。ウチのバックバンドも、そろそろ音に重厚さが欲しいからね」

「イヤイヤイヤイヤ、だったら、もっとマシな奴を入れた方が良いんじゃないんッスか?俺なんか、いつも行き当たりバッタリだし。本当に味噌ッ粕ッスよ」

「えぇ~~~!!あたし達は、兄貴君が良いのにぃ。なんでそんな事を言っちゃうの?」


いや……なんでって。

そりゃあ美樹さん、俺の実力が、全くと言って良いほど伴ってねぇからッスけど。


所詮、中の下ッスから。



「ちょっと、ちょっと。なんで、みんなしてクラを狙ってる訳?」

「そりゃあ奈緒ちゃん。仲居間ちゃんが目を付けたとあっちゃあ、誰でも興味が湧くわな。自軍に引き入れたいのは当たり前じゃん」

「あぁ、じゃあ、僕も参戦する」

「なっ!!ちょっとダメだって、クラは私のモノなの。それにクラにはね。やって貰わなきゃ成らない約束が有るから、そんなのダメ」


??



あっ……あれか。



「やって貰わなきゃ成らない事?なんだいそれ?」

「えぇっとね。クラにはね。自分で最強のバンドを作って、私を迎えに来て貰わなきゃイケないの。これ、約束だから、みんなの意見は却下ね」


ヤッパ、そこッスね。


まぁそれ以前にッスな。

バンドの誘いは、俺から頼み込むものであって。

人から誘って貰って、人のバンドに参入する訳にはいかないッスからね。


故に、奈緒さんの意見通り、みんな却下ッスな。



「うわっ!!エゲツねぇ。独占する気かよ」

「当然でしょ。それでも、もしクラとやりたいって言うなら、自軍に引き入れるんじゃなくて、頼み込んで、クラのバンドに入れて貰いなよ」

「あぁ、ソイツは微妙だなぁ。実力が中の下じゃあ、頭を下げる気にはなれねぇな」


まぁ、そらそうだわな。


なんでもそうだけどよぉ。

世の中、実力の有る奴が、なんでも偉いんだもんな。


……なんて呑気に思っていたら。



「あの、向井さん。それって本当に頼み込めば、真琴君のバンドに入れて貰えるんですか?」


うわっ!!なんで此処に来て素直?

話が拗れて、ややこしくなるから、余計な事を言うのだけは辞めとけな。


つぅかよぉ。

おまえさぁ、今でも十分な地位を確立してんだから、アホな事を考えるなよ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>


倉津君を自分のバンドに入れたい人や、一緒にバンドをやりたい人って、意外と一杯居たりするんですよね♪

まぁ、一年昏睡してたとは言え。

それ以前は短期間で、あちらこちらでトラブルを巻き起こし、色んな伝説を作って来ているのですから、そう成っても当然なのかもしれませんしね(笑)


さてさて、そんな中。

その「倉津君と一緒にバンドをやりたい人筆頭の素直ちゃん(奈緒さん除く)」が此処で登場した訳なんですが。


これはもう、明らかに危険信号。

果たして、この素直ちゃんの宣言が、物語にどう言った影響を及ぼすのか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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