1102 鴨が葱しょってやって来た

 真菜ちゃんに多くの知り合いを紹介する為に、沢山の人に声を掛けたまでは良かったが。

人を迎えるに当たって、流石に上下ともジャージでは流石に不味いので、真菜ちゃんを着替えさせてはみたものの。

その当の本人は、着慣れない服にオロオロするばかりで、自信が持てずに居たら……そこに。


***


「うん?おい、カジ、山中。あそこに居るのって、ひょっとして向井さんじゃないのか?」

「あっ、ホントだな。……しかしまぁ、人を呼び出して置いて、こんな所で、なにやってんだかな?」

「アホ共……女子にはな。女子也の事情言うもんがあるやろうがい。オマエ等イケメンのクセに、ホンマ言う事が野暮いのぉ」

「あぁ、なるほどなぁ。そう言われればそうだな。……ってか、向井さん、クラッさんの所に向ってるみたいだけど、声掛けるか?」

「そやのぉ。行き先が一緒やったら、一緒に行く方がえぇわな」

「ほんじゃま、声掛けるか。……向井さ~~ん」

「うん?」


……っと、少し遠くから、満良くカジ君とグチ君と山中君が現れた。


これはまた、最高とも言うべき、良い鴨が葱を背負って来たもんだね。

真菜ちゃんに自身の可愛さを自覚させる為には、まさに絶好の鴨だ。


なんと言ってもカジ&グチ君は、我が校きってのイケメンコンビ。

そんな彼等が褒めてくれれば、きっと少しは自信が持てるようになるかもしれないからね。



「あっ、カジ君、グチ君、こんにちわ♪」

「ちぃ~~ッス」

「オッス」

「あれ?なんやろな?なんか、俺の名前だけが聞こえへんかった様な気がするねんけどなぁ?気のせいか?……なぁ、眞子ちゃん、なんで、いつもそうやって俺だけ無視するんや?」


なんでって……それはもぉウザイから。


でも、そんな可哀想な事は、口が裂けても言えないので。

別の切り口から、これに対する対応策をお披露目いたしましょうかね。



「えっ?なんでって、関西の人って無視されると美味しいって感じるもんじゃないの?奈緒ネェが、昔そう言ってたよ」


昔、奈緒ネェが山中君(関西人)に対して持っていた印象を、上手く使わせて貰いましたぁ。

確か『無視』とは言って無いけど『美味しくしてあげなきゃイケナイ』って言ってたよね。


だからそれを実践してるだけ。


ダメ?


ダメですね……はい、重々知っております。



「なんやねんな、それ?そんなん全然美味しないちゅうねん。無視されるのなんか一番辛いだけやちゅうねん。俺にも、偶には楽しくトークさせろちゅうねん」


ちゅうねん星人だ。



「あぁ、そうなの?それはごめんね」

「うわっ!!なんや、それ?全然感情が篭ってへんやんけなぁ。その謝罪の言葉からは、謝罪する意思が全然感じられへんねんけど」

「あぁ、そぉ?そう言うつもりは全くないんだけどね。それもまた美味しいかなって」

「なんや知らんけど。姉妹揃って、関西人に対して酷い偏見を持ってんなぁ」


全然してないけどね。


本当は、からかってるだけだから。



「あぁ、それはそうとさぁ。カジ君グチ君、今から真琴ちゃんの所に行く所なの?」

「……結局、無視するんか。そう言うオチか。やる思うたわ」


オチじゃなくて、きっと山中君は、そう言う運命の元に生まれてるんですよ。


Sir-Mrオチ要員。



「あぁ、そうだな。カジとは駅前で約束をしていたんだが。山中とは、偶々、さっき逢っただけだ」

「あぁ、そうなんだ」

「って言うかさぁ。向井さんは、こんな所でなにやってんだ?買い物か?」

「あぁ、いやいや、そうじゃなくてね。この子と、ちょっと用事があってね。外出してただけ」


見て見て、私の妹の真菜ちゃんですよ。


滅茶苦茶可愛いでしょ。


……でも、幾ら可愛いからって、少しでも性的な目で見たら殺すよ。


あの世に直行便ね。



「見かけない顔だな。誰なんだ、その子?」

「あぁっと、この子はね。真琴ちゃんの妹の真菜ちゃんね。私にとっては妹同然の子だから、手を出したらダメだよ」

「妹やと?……あぁ、親戚やから『妹』同然って言う事かいな」

「そぉそぉ、滅茶苦茶可愛いでしょ」

「姉様」


あらら、照れて、私の後ろに隠れちゃったね。


あぁでも、真菜ちゃんは温室育ちで、男の人には、あまり免疫が無いから、ちょっと男の子が怖いのかな?


特に、この関西男は、なんか怖いよね。


解る解る。



「ふ~~ん。向井さんもそうだけど。倉津の一族は、みんな可愛いんだな」

「真琴ちゃんも?」

「いやいや、悪いが、ソッチの趣味はない。クラッさんは、ただ厳ついだけだな」

「だよね。……あぁ、そうだ真菜ちゃん。こちらが梶原君。それで、コチラが山口君。真琴ちゃんと、私の同級生ね」

「また俺だけ無視しよった。……眞子ちゃん、一応言うとくけどなぁ。それ、全然美味ないからな」

「そうなのですか?お初にお目に掛かります。私、倉津真琴の妹、倉津真菜と申します。皆様には、兄が、いつもお世話になっております」


安全だと思ったのか、私の後ろから出てきて『ペコ』っと挨拶をする。


あぁでも……ヤッパリ真菜ちゃんは丁寧だね。

こう言う挨拶の仕方って、ちょっと堅苦しい感じはするんだけど、決して相手の持って貰う印象は悪くないんだよね。


なら私も、今度どっかで使おうっと。


はい、そこ、性悪とか言わない様に!!



「あっ、あぁ。なんかクラッさんの妹にしては、やけに古風な子なんだな」

「でしょ」

「えっ?私、古風なのでしょうか?」


うん、間違いなく古風だね。


まぁ、そう言う風に、義母である友美さんが育ててるから、自然に、そうなっちゃうんじゃないかな。


あぁ、因みになんですけどね。

真菜ちゃんは、義母である朋美さんの影響もあってか。

テニス以外にも『お華』とか『三味線』とか『日本舞踊』とか言う、日本の伝統文化はかなりの得意分野なんですよ。


ヤクザの組長の娘とは言え、結構な、お嬢様ですしね。



「あぁ、いや、正確に言うと古風って言うか、やけに丁寧な話し方をする子だな」

「そう……なのですか?」

「そうだよ。真菜ちゃんの言葉使いは、凄く綺麗だよ」

「あぁ、確かに、綺麗な言葉遣いだな。それに凄く可愛いんだな」


惚れましたか?


けどダメです。

絶対に交際は許しませんよ。


高嶺の花としてみる位なら良いけど。



「でしょでしょ」

「いや、ホンマ、可愛いわ。ちゅうか、あれやな。ドッチかって言うたら、可愛い言うより綺麗系やな」


おやおや、流石、淫獣と言われた男。

女の子の将来を見る目は有りますね。


まぁ現実的な話を言ったら。

真菜ちゃんや、真琴ちゃんの本当のお母さんって言うのは、その美貌をフルに使って、銀座で数十年間、恐ろしい様な売り上げを叩き出し続けてた伝説のママ。

その遺伝子を綺麗に引き継いでいる真菜ちゃんが、綺麗に成るのは必然ってもんなんですけどね。


でも、妊娠するから、あんまり私の真菜ちゃんを見ない様に。


……山中君は童貞かも知れないけど。



「うん、そうだね。私なんかとは違って、真菜ちゃんは、きっと将来、凄く綺麗な子に成るだろうね」

「えっ?えぇっと」

「そやけど、あれやな。こんな綺麗な子がマコの妹とは到底思えんな。それこそ眞子ちゃんの妹って言うた方が、なんぼか納得出来るで」

「えっ?ホント?だったら凄い嬉しいな」

「ホンマやけど……また、なんでそんな喜ぶんやな?」


コチラにも色々事情があるんですよ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>


真菜ちゃんは元の素材が良いので、矢張り男性陣からは褒め言葉しか出ませんでしたね♪

しかも、その見た目だけではなく。

言葉遣いも綺麗な子ですから、ある意味、これは当然の評価と言っても良いのかもしれませんが。


まぁ、そうは言いましても。

家の中では、身内である倉津君にだけは、かなり厳しい言葉を投げ掛けてましたから。

案外、慣れて来たら、少しは態度や口調が変わるのかもしれませんけどね(笑)


さてさて、そんな中。

山中君に『真菜ちゃんが、眞子の妹って言った方がしっくりくる』っと言われた眞子は、かなりの有頂天になりそうな雰囲気なんですが。


果たして、その言葉1つで山中君に対する眞子の態度が変わるのか?


次回は、その辺を書いて行こう思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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