1100 カジ&グチの行方

 ステラさんの悩みであった眞子の件は「小手先の技を使わずに全力で争奪戦を取りに行く」っで解決したのだが。

それとは別に、以前一緒にバンドを組んでいたカジグチの件が、ステラさんにしては少々疎かに成ってる様な気がした倉津君は……


***


「あぁ、その件に関しましては、少々仲居間さんとの取引が有りまして」

「取引とな?」

「えぇ、ですから今現在は、その取引のせいで、あの2人と私はバンドを組む事が出来無い状態ですね」

「はぁ?そりゃあ一体どういうこったよ?」

「いえ。どう言う理由かまでは知りませんが。鞍馬の争奪戦が終わるまでは、ノータッチにしとけって言う話なんですよ」

「うん?なんでまた、そんな奇妙な話になってるんだ?」

「いえ、それが皆目」

「そうか……にしてもよぉ。オマエが、そんなに簡単に食い下がるのも変じゃねぇか?いつもなら、もっと食って掛かるのによぉ」


おかしいなぁ。

ステラが、そう簡単に誰かの言う事を聞くとは思えないんだがな。

コイツって、自分が納得出来無い事には、なにが有っても納得しない様な人間の筈だしなぁ。


特に崇秀関連の話ともなれば、余計に言う事を聞かなかった様な気がする。


って事は、俺が昏睡してる間に、この2人に何かしろの変化があったって事か?



「そうなんですが。仲居間さんは、なんでも、そうやった方が、あの2人に【必ず良い事が起こる】って言い切りましたからね。偶には、そこを信じるのも悪くないと思いまして」

「アイツが起す良い事なぁ。……それ、俗世間一般じゃ、絶対にロクデモナイ事としか言わねぇぞ」

「そうですね。恐らくはロクデモナイでしょうね。ですが、仲居間さんに任せておけば、カジとグチ、あの2人に、なにかしろの光明が見えて来るのも間違いないんじゃないですか?……仲居間さんは、人としては、見るも無残な程、最低最悪な人間ですが。人に悪影響を及ぼす事や、誰かを貶める様な真似だけはしません。此処だけは確実だと言い切れますからね」

「あぁ……まぁなぁ」


確かになぁ。

あのアホンダラァは、人をコケにするのは好きだけど。

誰かの足を引っ張ったり、仲間を笑い者にする様な馬鹿な真似だけは絶対にしないからな。


今までの経緯からしても、そこだけは信憑性が高いと言えば高いな。


けどまぁ、あれ程、敵対心を持っていたステラが、まさか此処までキッチリとアイツを信用してるとはな。


ある意味、これは驚愕の事実だな。


まぁまぁ、そんな訳なんで。

ステラが、カジグチを放置してる理由自体は『崇秀との取引』と言う、なんともアヤフヤナ意見ではあったのだが。

これ以上追求しても、他には何も出来来そうにないので、ここはもう納得するしかなさそうだな。


なんて思っていたら……



「なんだい、なんだい?アンタ、顔に似合わずやけに心配性なんだね」

「ほっ、ほっとけ」


……っとまぁ、突然、少々呆れ顔で、ドラムの姉ちゃんに、そう言われたんだがな。


申し訳ないんだが【顔に似合わず心配性】とか言ってくれるな。

大体にしてだな、ダチを心配してるだけの話なのに顔の良し悪しは関係なくねぇか?


厳つい顔の人間にも、人並みの人権ぐらいくれ。


……ってかよぉ。

これも前からよく言われるんだが【俺って、そんなに心配性】なのかな?


俺的には、この程度の心配なら極普通の事だと思ってるんだが……



「まぁまぁ、そんなにあの2人が心配なら。鞍馬の件がダメだった時は、アンタ同様、そのカジとグチって奴等も、あたし達と一緒に練習すりゃあ良いんじゃないのかい?その2人って確か、文化祭で一緒に演奏してた、あの2人の事なんだろ」

「へっ?あぁ、まぁそれはそうなんだけどよぉ。……そんな軽いノリみたいな感じで決めちゃって大丈夫なのかよ?」

「一緒にやって、なにが悪いんだい?演奏を一度でも一緒にやりゃあ、知り合いだろうに。それに今のあたしは【Kimera】のマーニャ=ミラーじゃない。ただのドラマーでしかないんだしね」


うわっ!!うわっ!!この姉ちゃんも、有名なのを傘に掛けない奴だな。

まぁ以前、奈緒さんの家で話した時から、こんなフランクな感じではあったんだが。

何所の誰とも、まだあんまり知らない筈のカジグチにまで、こんな優遇された待遇を与えるなんざ中々出来たもんじゃねぇぞ。


ホント、この姉ちゃんだけは、気持ちの良い姉ちゃんだよ。


けどな。

女である、この姉ちゃんやステラに此処までの覚悟を見せられたんじゃあ、俺ももうハンパな真似は許されないよな。

この気持ちに少しでも応えられる様に、受験が終わったらガシガシにベースを弾き捲くって、早期に、この失った1年を一気に取り戻してやらなきゃな。

そんで、出来る限り、誰の足を引っ張らない様にしないとイケナイ。


最低限度、俺自身にも、そのぐらいの気概や礼儀は必要な案件だと思う。


……まぁそんな訳でだ。

なんか知らんが、俺には好条件な事バッカリを提示して貰って、眞子の帰りを3人で炬燵に入りながら待つ事になった。



あぁ、それはそうとよ。

これは、その覚悟の話とは全然関係ない話なんだがな。

そうやって3人で炬燵に入りながら、寛いで眞子の待ってる訳なんだが。

その一緒に炬燵に入ってる相手が女性である事には、俺自身、酷い違和感があるな。


正直、奈緒さんや、真菜や眞子以外の女性で、こんなゆったりとした光景を、実家で目の当たりに出来る日が来るなんて思ってもみなかったからな。


しかも相手は、日本人ではなく外人ですぜ、外人!!

それもただの外人じゃなく、炬燵に入ってるのが美少女な外人な訳ですぜ!!


ヤバイ……

今更なんだが、なんか変に意識しちまったのかして、妙にこの状況に緊張して来た(笑)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>


少々アヤフヤナ理由ではあったのですが。

どうやらステラさんは、崇秀との取引があって、カジ&グチ君の事を保留にしてたみたいですね。


まぁそうは言っても、お節介なステラさん。

表に出ない部分でカジ&グチ君を支えてくれてたから、彼等も文化祭で活躍出来る位には成長してた訳なんですけどね(笑)


さてさて、そんな中。

ステラさんの悩みをある程度解決した所で、一旦は倉津君サイドのお話は終了。


次回からは、真菜ちゃんを連れだした眞子サイドの話が始まるのですが。

コチラは、一体、どうなっているのか?


眞子は、真菜ちゃんを自身の理想通りに上手く変身させる事が出来たのでしょうか?


その辺を次回は書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る