1099 想いの伝え方

 眞子争奪戦に於ける相談を、ステラさん達から受けた倉津君。

そして、その中で、彼女達の有り余る熱い気持ちが伝わって来たので、倉津君は、ある回答を導き出した。


***


「なぁなぁ、だったらよぉ。下手な小細工なんかしねぇで、真正面から実力だけでアイツを取りに行けば良いんじゃねぇのか?」


それを決めるのが、その眞子争奪戦とやら言うややこしい企画の趣旨の筈だしな。


結局の所、此処で下手な小細工を打つ事を考えるより。

争奪戦で有無を言わせない様な実力を披露して、争奪戦参加者を全員ぶちのめした方が、アイツも反論出来なくなるんじゃないか?


だから今すべき事は【自分達の全力を出し切る事】だと思うんだよな。



「えっ?」

「そこでアンタ等の意思を、キッチリとアイツに全部伝えりゃ、アイツだって感じる所は有るだろうからよ。なら、小手先の技なんてを考える必要性すらイラネェんじゃねぇの」


実際、此処まで意思を明白にしてりゃあ、実力を見せつけるだけで、その感情が綺麗に眞子にも伝わる筈だと思うしな。

寧ろ、この2人に、これ程の熱い気持ちが有るなら、それが伝わらねぇ方がどうかしてるだろうに。


それでもアイツが、そんなメジャーだのマイナーだのと言うクダラナイ事に拘る様なら。

ひょっとしたらアンタ等にとって、アイツは必要な存在じゃないのかもしれない。

大体にして、その状況で断る様だったら、アイツには、この2人に、それだけ想って貰える価値はねぇんだろしな。


そんな馬鹿と、アンタ等が組む必要性なんて皆無だ。


演奏の腕が有っても、心の無い奴なんてカスだからな。



「そうでしょうか?」

「あぁ、そうに違いねぇよ。現に俺は、出来る事ならオマエ等と一緒に演奏したいと心底思ってるからな。……まぁ、眞子と違って、俺なんぞじゃ迷惑なだけだろうけどよ」


いやはや、此処に関しては非常に残念だな。

俺に、もっと強烈な腕前さえ有れば、この熱いメンバーとの競演を果たせたかも知れねぇのにな……


意識を無くして、昏睡してた1年が悔やまれるな。


……まぁけど、それはそれ。

これは何処まで行っても『俺が一緒に演奏をしてみたい』って願望を心の中で思っただけの話であり。

実際は、それ以前の問題として、俺自身は、まだまだカジ・グチとバンドを続ける予定だから、元々無理な相談ではあるんだけどな。


大体にしてアイツ等は、昏睡してた俺を1年も待ってくれる様な奴らなのに、今更、それを蔑ろにして、見捨てる様な、義理も人情もねぇ様な卑怯な真似なんぞ出来ねぇからな。


だからこれは、本当の俺の願望でしかない。

いや寧ろ、今、この瞬間に思った事でしかないのかもしれない。


まぁ、なんて偉そうな事を言ってはいるんだが。

事実だけを追及するなら、いい加減カジ&グチに見捨てられそうなのは俺の方なんだけどな。


此処だけは、マジでシャレになってねぇ状況。


受験が終わったら、早急になんとかせねば……



「ふむ。だったら鞍馬がダメだった場合、アンタが替わりにやってくれるかい?」

「へっ?」

「鞍馬程の衝撃は無かったにせよ。あたしは、アンタの演奏にも、なにか感じるところがあったんだけど」

「真琴をメンバーにですか?……あぁ、それも悪くないですね。確かに真琴は荒削りでド下手糞なベーシストですが。真琴の音は、決して悪いものではありませんからね。良い提案では有りますね」


へっ?

ちょ……マジで言ってんのか、それ?


けどなぁ。

それ自体は非常に有難い提案ではあるのだけど、さっきの理由もあって、此処でホイホイとその美味しい話に乗る訳にもいかねぇんだわ。


それ故に、此処で浮かれてないで、キッチリその辺りを言って置かねぇとな。



「いや、ちょっと待ってくれ。ステラは知ってると思うが、俺にはよぉ、カジとグチが居るから、全くもって移籍の意思は無いぞ」

「あぁいや、なにもバンドを移籍しろって言ってる訳じゃないんだよ。正規のベースが決まるまでの間だけでも、HELPを頼まれてくれないか?って話を、あたしはしてんだよ」

「おぉ、なるほど、そう言う意味でのHELPって事な」

「そうそう」

「そう言う事情なら、全然OKだ。寧ろ、願ってもない事だからな」

「では、その方向で」


おぉ……なんかよぉ。

この一件、俺に事情を加味してくれた上で、豪く良い方向に話が進んだみてぇなんだが。

オマエさん方、こんな下手糞な俺なんかがHELPに入って、本当に大丈夫なのか?

オマエ等の腕には遥か遠くに及んでねぇ処か……今では俺、カジグチにさえ劣る様な酷い腕前でしかないんだぞ。


そんなんで幸先は大丈夫なんか?


まぁ、それ以前の問題としてだな。

この話自体、眞子が、アンタ等のバンドに参入しなかったらの話な。


メインは、そこだって事を忘れちゃ困るぞ。


実際は……一緒に、やってみてぇけどな。


あぁ、それはそうとよぉ。

そのカジグチの話題で思い出したんだが、その件でステラに対しての疑問が1つだけあるんだよな。


今、この序に、そこも聞いておくか。



「よぉ、ステラ。それはそうとよぉ」

「なにか?」

「いや、オマエよぉ。カジグチとは、もぉ一緒にやらないのか?」


なんだよな。

此処が唯一俺がステラに対して疑問に思っていた事。


それは……


あれ程までにカジグチに入れ込んでくれてたステラなのにも拘らず、カジグチの事をアッサリ引きやがったと言うか……この件に関しては、なんも言う素振りすら見せなかったんだよな。

しかも、それだけに留まらず、現状ではこのミラー姉ちゃんとバンド組む予定さえ立っている状況。


なんか、義理堅いステラにしては、この行動があまりにもおかしいんだよな。


最初に相談を受けた時から、そこに酷い違和感を感じてたんだよなぁ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>


ステラさん達の悩みと言うのは、所謂、裏工作の面の話であって。

表の企画である『眞子争奪戦』が始まってしまえば、実はなんの意味もない話なんですね。


もっと解り易く言えば『早急に眞子のバンドの先を決定して、争奪戦と言う企画を潰す』っと言う話にもなるんですよ。

なので、これ自体は、あまり良い話ではなかったりします。


ただまぁ、ステラさん自身。

普段は超強気な筈なのに、この件に関しては、ミラーさんの引き抜きの件があって、少々弱気に成ってしまい、冷静さを欠いてしまっていたのかもしれませんね。


ナンダカンダ大人びてはいますが、彼女もまた10代の女の子ですので(笑)


けど、倉津君の言葉で、完全に目が覚めたのでもう大丈夫!!

これで普段の超強気なステラさんに戻る事が出来ると思いますです。


さてさて、そんな中。

倉津君が、この話の中で唯一気に成っていた『カジ&グチ君から、ステラさんが手を引いてる件』


果たして、何故、こんな事に成っているのでしょうか?


次回は、その辺を書いて行きたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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