1098 責任感

 全米でも大人気のバンドのメンバーであるミラーさんを引き抜いたステラさん。

それ故に思う所があるのか。

眞子争奪戦に関しての相談を倉津君に持ち掛けて来たのだが……


***


「あぁ、構わねぇよ。なんかあんのか?」

「いえ、実はですね。今の様な理由等もありますので、なんとしても鞍馬を、私達のバンドに引き入れたいのですが、真琴、なにか良い案は有りませんか?」


おやおや、これはまた珍しい相談を持ち掛けて来たな。

あの超強気のステラが、そんな弱音にも似た相談をしてくるなんてな。


こりゃあ、この姉ちゃんの件で、相当なプレッシャーを感じてやがるみたいだな。

コイツ……元より責任感も強いしな。


なら此処は、ステラに協力するに限るな。

ステラは、俺にとっちゃあ掛け替えのねぇ女の親友だしな。



「あぁ、そうだよなぁ。確かに、そこまで覚悟があるなら、そりゃあ重要な話に成り得るわな。それに俺としても、見知らぬバンドにアイツを入れるより、知り合いであるオマエ等のバンドに入ってくれた方が色々と安心だしな。アイツは酷い天然だから、このままじゃあ人に利用されかねねぇしな」

「そうですね。鞍馬は元々人が好いですから『誰かに利用されても構わない』と思っている節が見受けられますしね。あぁ言う子を、そう言う目に遭わすのは、流石の私も気が引けますからね」


ソッチも心配してんのな。


本当にオマエさんはお節介だな。


けどまぁこれは、眞子の奴が、それだけステラに可愛がって貰ってるって事の裏返しでも有る訳だし。

此処でも、思ってた以上に良い関係が構築されてるみたいだな。



「だな。……まぁただなぁ。問題は、アイツも変に頑固者だからなぁ。多分、俺の言う事なんか聞きゃしねぇぞ」

「ですね」

「それにな。アイツ、自分自身の口で、何所のバンドでも良いって言ってたしなぁ」

「そうですね。……ですから、私も1つ策を巡らせてみたのですが。これが、意外にも不発だったんですよ」

「策?策って、なにをしたんだよ?」

「いえね。何所でも良いなら、逆に言えば、奈緒の所でも良いのかな?っと思ったのですが。……鞍馬、メジャーバンドだけは、お断りなんだそうですよ」


はぁ?『メジャーはお断り』だと?

それに今、ステラから聞いた話じゃあ、あの馬鹿、天下の【奈緒グリ】からのオファーを蹴ったって言うのか?


一体、なにを考えて生きてやがるんだ?

なにを企んでやがるのかは知れねぇが、全く理解出来ねぇ思考してやがるな。


壊れた脳味噌にも程があるぞ。



「マジ……でか?」

「えぇ、昨晩、奈緒から、その件についての連絡があったのですが。なんでも【奈緒グリ】を超えるバンドを自らの手で作りたいらしくて。奈緒はアッサリ断られたらしいですよ」

「マジで馬鹿じゃねぇのアイツ?今の【奈緒グリ】を越えるなんて早々に出来たもんじゃねぇだろうに」

「いや、けどね。あたしは、そこが唯一、鞍馬につけいる隙だとは思うんだよ」


ほぉほぉ。



「どういうこったよ?」

「普通に考えても【奈緒グリ】を越えたいなら、それ相応の力量が無いと無理なんじゃないかい?素人を集めて、それを達成しようとしてら、それこそ何年掛かるか解ったもんじゃないからね」

「あぁ、確かにそうだな。今のままの条件じゃ、ある意味矛盾が生じちまってるもんな。そこに、眞子も心変わりをする可能性があるって寸法か」

「そう言う事」

「それにアンタや、ステラの腕は強烈だからな。やり方次第では、アンタ等と一緒なら、奈緒グリを越えれなくもないか」

「だろ。だから、どうしてもアンタの口添えが欲しいんだよ」


確かにこれは、面白い提案では有るな。


この面子だと、ボーカルの問題が、まだなにも解決してないにせよ。

この2人は間違いなく、GUILDの上位ランカーだろうしな。

そこに眞子のベースが加われば、強烈なバンドが成立する事は必定だもんな。


けど、一番の問題としては、こんな風に越える好条件は揃っていても、眞子が納得するかどうかだよな。


この2人が上位ランカーである以上、メジャーに匹敵する知名度を持ってるだろうし、このミラーって姉ちゃんに至っては元バリバリのメジャー。


【眞子がバンドに在籍する条件に幾ら矛盾があっても、これじゃあメジャーバンドに入るのと、なんら変わらねぇ状況だもんなぁ】


その事実を踏まえて考えてみると……結構、眞子をステラ達のバンドに入れるのは厳しい状況ではあるな。



「いや、眞子に口添えするのは、俺もアンタ等のバンドに眞子が入って欲しいから、別に構いわしねぇんだけどよぉ。問題は、それをアイツが聞き入れるか、どうかだよな」

「あぁ、ヤッパリ、どうやっても最終的には、そこに行き着くかぁ。……あぁもぉ、こんな事に成るんなら、変にメジャーなんて行くんじゃなかった」


そこまで、俺の姉弟を買ってくれてるのか?


この姉ちゃん、マジで熱いな。



「オイオイ、豪く高い評価をしてくれてるんだな」

「そうだね。あたしも、なんでそこまで鞍馬に固執してるのか自分でも解らないんだけどね。世の中には、出会うべくして出会うメンバーってのが、必ず存在すると思うんだよ。あたしは、それが鞍馬や、ステラだと信じてる。あたしにとって、これ以上のメンバーなんて考えられないからね」

「実に低脳な方が言いそうなアヤフヤな意見ですが。私も、それには賛成なんですよ。鞍馬と、ミラー。私は、このメンバーなら、世界をアッと言わせられる様な気がするんですよ。恐らく、他の人じゃダメなんですよ」


ステラや、この超絶ドラマーの姉ちゃんに、マジでそこまで言わせるか?


スゲェなアイツ。

どこまで人に求められてやがるんだよ。



だったら……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>


ステラさんが倉津君に持ち掛けた相談は、眞子を如何に自身のバンドに引き入れるか?っと言うものだったのですが。

そりゃあまぁ、ミラーさん程の大物を引き抜いての行動ですから、プレッシャーが掛かって、こう成っても然りですよね。


それ程、この提案を、ミラーさんに持ち掛けた者としての責任は重大ですし。


さてさて、そんな中。

ステラさんやミラーさんの意見を聞いて、最後に倉津君が何やら良い案を思い付いた様子なのですが。


一体彼は、何を思い付いたのか?


次回はその辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る