1095 ステラさんとミラーさんの別件

 真菜ちゃんの知り合いを増やす為に開く予定の会合。

そんな中、最初に倉津君の家に訪れて来てくれたのはステラさんとミラーさんだったのだが。

こんなに早くに来てくれたのには、なにやら別件でも用事もある様子。


***


「あぁ?なんの話もなにも、鞍馬争奪戦の話。その話を、鞍馬に早急に付けに来ただけさね」

「眞子争奪戦?なんだそりゃ?」


オイオイ、またあの天然女、俺の知らない所で、なんかやらかしてやがのか?

ホント、次から次へと良くもまぁやるよな。


まぁ……そうは言っても。

それぐらい破天荒な行動力がなきゃ、崇秀の彼女は、どうやっても務まらねぇのかもしんねえな。


なので此処は妙に納得だ。



「その様子、まさかとは思いますが、争奪戦の話を知らないのではありませんよね、ポンコツ?」

「いや、悪ぃが、なんも知らねぇな。最近よぉ、家で勉強バッカさせられてるから、下界の事は、よぉ解らんのだ」

「相変わらず、世間知らずのド低脳ですね。呆れる間抜けさですよ」

「イチイチやかましいわ」


なんでオマエは、直ぐにそう言う嫌な事ばっかり言う訳?

知らない人間が居たら、優しく、親切、丁寧に教えてあげるのが人の在り方ってもんじゃねぇのか?


まぁ……そう言うステラの態度、実際は嫌いじゃねぇんだけどな。

いや寧ろ、そんな親切な態度をステラにイキナリ取られたら、逆に俺が『コイツ、なにかあったんじゃねぇのか?』って心配になってしまうがな。


まぁそれになによりだな。

ステラは、こうやってなんだかんだ文句を言いながらでも、最後にはキッチリ説明はしてくれるからな。


実は親切設計(笑)



「……っで、結局よぉ。その眞子争奪戦とかぬかす、ややこしそうな企画ってのは、なんなんだよ?」

「本当に知らないんですね。ハァ~~~もう心底呆れましたよ。……良いですかポンコツ。アナタの親戚である鞍馬は、今、世間で最も話題になってるベーシストなんですよ。その話題に成っている人間が、どこかのバンドに所属する事を前提にして、GUILD内でメンバー募集が掛かっていれば、その誰しもが、鞍馬の動向を気にしない筈がないでしょうに。それにですね。我々は、鞍馬をウチのバンドに引き入れる為に、此処に来たんですよ」


ほらな。


あぁ……それはそれとして、それの話が眞子争奪戦の概要だった訳な。

そう言われてみりゃあ、そんな話があった様な気がしないでもないな。

って言うか。

翌々考えると、あの俺が毎日立ち上げてる『眞子のPVソフト』の根本って、そこだったよな。


豪い勢いでボケをかましてもうたわ。


けど、ステラの言い分を聞いたはにじゃ、なんかスゲェ事になってるんだな。

アイツって、海外からオファーが来るぐらい、そんなに凄いベーシストなんだな。


……まぁ確かにな。

文化祭で一緒に演奏した時、アイツのベースの腕は、他に類を見ないぐらい圧巻の演奏してやがったけどよぉ。


アイツさぁ、それに反して、人間的にはかなりの天然な奴だぞ。

そこがあるから、どうしても、そこまでスゲェ様には見えねぇんだけどなぁ。



「へぇ~~~、そうなんだ」

「ポンコツ。なんですか、その微妙な反応は?また脳味噌がショートしてるんですか?そろそろプラグの付け替えの時期が来てるなら付け替えて差し上げましょうか?」

「いや、ショートはしてねぇし、まだプラグの付け替えは必要ねぇけどよぉ。オマエが言う程、眞子って、そんなにスゲェのか?」

「えぇ、鞍馬は凄いですよ。此処に居るミラーなんて、今のバンドを捨ててまで、鞍馬との競演を望んでますからね。それ程の逸材です」

「あぁ、そうなのか。そりゃあ、なんかスゲェな」

「……ポンコツ。貴方、本当に、その意味が解って、その言葉を吐いているのですか?」

「いや、幾らなんでもそれ位は解ってるつぅの。要は、そこに居る姉ちゃんが、今まで所属してたバンド辞めて、眞子と一緒にやりたいって事だろ?それぐらいなら十分解ってんよ」


まぁ、あれだな。

俺が想定するにだな。

この間のウチの学校であった大人の穢れた文化祭で。

この姉ちゃんが、眞子になにか感じるものがあって、今のバンドを脱退してまで、眞子とバンドを組みたいっと思ったって事だろ。


ただ、それだけの事なんじゃねぇの?



「ハァ……どうやら真琴は、まだ、この事態の重要性を、なにも把握出来ていない様子ですね」

「なにがだよ?ちゃんと解ってるつぅの」

「ハァ……このポンコツだけは、どの口が、そんな言葉を吐くのですか?」

「この口だが」

「ハァ……もぉ、本当にアナタと言う人は、全く持って困り果てた人ですね。真琴。因みにですが、アナタは【Kimera(キメラ)】と言うバンドを、ご存知ですか?」


【Kimera】?


あぁ、それなら一応程度になら知ってるぞ。

まぁ直接的な事は、1年間も昏睡なんてボケた事をかましてたから、よくはシラネェんだがな。


ホント一応程度になら知ってる。



「おぉ、勿論知ってるぞ。全米で【奈緒グリ】の一番のライバルって言われてるバンドだよな。俺、あそこのバンドの曲、結構好きなんだよな」


まぁ、実際はだな。

さっきも言った理由から『曲しか聞いた事がねぇ』ってのが、俺の隠し様の無い事実なんだがな。

それだけに、どんな奴等が演奏してるのかまでは全く知らねぇ。


けど、敢えて言うなら、アレンジが上手い連中ではあったな。

使い古された単純な循環コードを上手くアレンジして、今っぽい曲に書き換えるセンスはピカイチだと思ったからな。


ただまぁ、今の俺じゃあ頑張っても、その程度の認識しかねぇけどな。



「ハァ……そうですか。では、ハッキリ言いますが、その【Kimera】の曲のアレンジをして居たのは、アナタの目の前に座ってるミラーですよ。ご存知でしたか?」

「はい?なんですと?」


なんだと?


オイ、今、なんつったオマエ?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>


真菜ちゃんの知り合いを増やす会に来てくれたのは良いのですが。

ステラさんとミラーさんが早くに来た理由は、どうやらそこだけではなく。

眞子争奪戦の件も絡んで来てるみたいですね。


それにしてもミラーさん。

今、全米でナンバー2と言われる人気の【Kimera】を脱退してまで眞子との共演を望んでいる様なのですが。

倉津君には、この姿が、どう言う風に映るのでしょうね?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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