1092 デリカシー欠乏症
真菜ちゃんの為にとは言え、知り合いに沢山声を掛けてしまった倉津君と眞子。
っとは言え、相手は仕事をしていて忙しい人間ばかりだから。
即来れる事はないと踏んで、呑気に真菜ちゃんの作った料理を3人で食べていると……ふと真菜ちゃんの服装が気に成った眞子は。
***
「ふぅ。ちょっと多かったけど。……凄く美味しかったよ」
まずはメインの会話を始める前に、恒例のジャブ会話を始めてみた。
だってさぁ。
誰だって、なんの前触れもなくイキナリ服装の指摘なんてされるのは余りにも気分の良いものじゃないでしょ。
特に真菜ちゃんは女の子だしね。
だから、これでのジャブ会話は必須。
けどまぁ、それとは別の話なんだけどね。
真菜ちゃんは運動系の部活をしてるだけの事は有って、顔に似合わず、相変わらず良く食べるね。
だから今の私にとっちゃあ、どんぶり一杯に入った大盛りのラーメンや、タップリ具材は多過ぎるんだよね。
でもね。
折角、真菜ちゃんが一生懸命作ってくれたんだから、スープの一滴も残す訳にもいかない。
幾ら多くても最後まで頑張るしかなかい訳ですよ。
「あぁ、姉様すみません。そんなに多かったですか?」
……ですね。
正直言うと……大分、重たいです。
『ゲップ』です。
まぁ以前の私なら、これ位、なんて事無くペロッと平らげて、まだ足りない位の勢いだったでですが。
この体に成ってからと言うもの、胃が小さくなってしまった今の私には、かなりヘビーでした。
テーブルの上には、食後のデザートなんかも出してくれてますけど、これ以上は本当に無理です。
でも……折角なんで、もぉ少し頑張ります。
「あぁ、うぅん、そっ、そんな事ないよ。こっ、これ位で、丁度良いぐらいだったよ」
……うぷっ。
ヤッパ、もぉデザートは無理。
「うん?なに言ってんだオマエ?そんな訳ねぇだろ。オマエ、普段あんまり飯を喰わねぇじゃんか。そんな奴が、こんなに食える訳ねぇじゃん」
「えっ?」
あぁ、もぉ……お腹が一杯一杯なのは事実だとしても、余計な事を言わなくて宜しい!!
そんな事を言って、一生懸命作ってくれた真菜ちゃんが変に傷付いたら、どうすんのよ?
そこの真琴ちゃん、ちょっと黙らっしゃい!!
「なっ、なに言ってんのよ?こっ、こんなの全然多くないって。ふっ、普通だって普通」
「いや、眞子。オマエ、それ、ぜってぇ嘘だよな。いつも『体型維持』が、どうとかこうとか言って、あまり喰わねぇって崇秀の奴も言ってたぞ。……だからどうせ、真菜が作ったからって、コイツに合わせて我慢して喰ったんじゃねぇのか?コイツ、ホント、良く食うからな」
こ~~~のアホタン!!
余計な事を言うなって、あれ程言ってるのにも関わらず、なんでそんな余計な追撃までするかなぁ!!
普通ならそこで「あぁ、そうなん?」ってだけ言えば、全てが丸く収まってたと言うのに。
即座にコンビニまでダッシュして『デリカシー』ってもんを大人買いしてきなさいな!!
多分、お菓子コーナー辺りで150円位で売ってると思うから!!
まぁ……何所のコンビニのお菓子コーナーに行ってもデリカシーは売ってないけどね!!
あぁもぉ……真琴ちゃんが変な事を言うから、真菜ちゃんが完全に俯いちゃったじゃないのさぁ。
どうするのよ、これ?
「あの、姉様すみません。姉様は、普段から『体型維持』を心掛けていらっしゃると言うのに、私は、なにも考えず、自分の基準で食事を作ってしまいました」
「あぁ……」
「……ですが、喜んで貰おうと思う気持ちは有っても、悪気が有った訳ではありませんので、そこだけはご理解下さい」
「あぁ、うんうん。十分解ってるんだよ。全然、大丈夫なんだよ。真菜ちゃんが、そんな子じゃない事ぐらいは百も承知だよ。心配ないよ」
「ですが……」
「もぉ、真琴ちゃん!!なんで余計な事ばっかり言うのよ!!」
「なんで俺なんだよ?有りのままの事実を、有りのまま言っただけじゃんかよ。真菜が良く食うのは、現実だろうに」
だ~~か~~~ら~~~~ッ!!
そういう、言わなくて良い真実を、軽々しく何度も口に出して言うんじゃないの!!
大体にして真菜ちゃんは、繊細な女の子なんだよ。
そんな繊細な女の子が、大食いみたいに言われて嬉しい訳がないでしょうに!!
そんな言葉で喜ぶ馬鹿はねぇ。
どこかの馬鹿番組に出てる『大食い』しか特技の無いデブ女だけだよ。
女性なのに人前でガツガツ食べて、ミットモナイ姿をTVで晒してもOKだと思ってる女だけだよ。
真菜ちゃんは、そう言う類の変わった人達とは違うんだから、そう言う事は絶対に言っちゃダメ!!
ホント……次に余計な事を言ったら、マジで『シバク』よ。
「あのねぇ、真琴ちゃん。真菜ちゃんは運動部なんだから、よく食べて当たり前でしょ。いっぱい食べて、いっぱい運動して、カロリーを消費する事は、人としての理想的な形なの。私みたいに部屋に引き篭もってバッカリの省エネモードで、勉強してるだけの女とは違うの。……それともぉ1つ。私は、体型維持の為に食事を制限してるんじゃないの。ただ単に、胃が小さくて、あんまり食べれないだけなんだからね。そこを変に勘違いしないでよね」
半分事実の半分嘘。
あんまり食べれないのは、胃が小さいからしょうがないのも事実なんだけどね。
お豚ちゃんになるのが嫌なので、余り食べないのも、これまた現実だからね。
だから、解答としてはハーフ&ハーフ。
「いや、けどよぉ。馬鹿秀が……」
「崇秀が……なによ?崇秀がなんか言ったら、真琴ちゃんは、なんでも信じるって言う訳?そうじゃないよね。違うよね」
「いや、そりゃあ、そうだけどよぉ。なんつぅか、アイツが言うと妙にリアルじゃんかよ」
まぁ、確かにね。
確かに普段の私なら、なにも言う事無く、そこは絶対的に真琴ちゃんの意見に賛成してる処だろうね。
でも、今日はダメ。
理不尽な話なのかも知れないけど。
この一件は真菜ちゃんが絡んでるから、なにが有っても認めない。
「うるさいよ。ナンデモカンデモ簡単に信用しないの。大体ねぇ真琴ちゃん。私だって、美味しい物を出されたら、普通に食べたいの。それが真菜ちゃんの一生懸命作ったものなら、尚更、全部食べたいじゃない。だから、無理なんかなにもしてないし、真菜ちゃんは大食いじゃないからね。解った?……解ったら返事わ?」
「……なんか、納得イカネェなぁ」
大人しく納得しなさいつぅの。
そこは反論をせずに、素直に納得しなさいつぅの。
私の意見を変に疑わないの。
このバカチン。
「あぁッそ。そう言う事を言っちゃうんだ。私の大切な妹の真菜ちゃんを、そうやって虐めるんだ。なんて酷い兄なんだろ」
「なんも虐めてねぇだろ。ただの事実じゃんかよ」
「あぁっそ。まだ懲りずにそう言う事を言うんだ。……もぉ良いよ。こんなわからず屋、放って置いて真菜ちゃん行こ」
ふふっ……やったね!!
会話のジャブのつもりで始めた適当な会話だったんだけど。
翌々考えたら、これって、真菜ちゃんを連れ出して、服装をチェンジする絶好のチャンスじゃん。
この機会を上手く使って、真菜ちゃんを、崇秀の家に連れて行けば。
この健康的な真菜ちゃんの魅力を100%引き出す事も不可能じゃない筈だしね。
これは絶好の好機だ。
そう思った私は、キョトンとしている真菜ちゃんの手を引いて、半ば強制的に立たせる。
「えっ?あの、姉様どちらに?」
「うん?あぁ、真菜ちゃんは、なにも心配しなくて良いんだよ。人が来る前に、ちょっとだけ、私と、お出掛けしよっか」
「あの、ですから、どちらに?」
「ヒ・ミ・ツ」
「えっ?秘密なんですか?」
そんな、少し不安な表情を浮かべる真菜ちゃんを連れて、真琴ちゃんの部屋を後にする。
だって此処は、ゴチャゴチャ説明せずに、問答無用に連れ出した方が手っ取り早いからね。
後は、此処を立ち去るだけでOK。
あぁっと、その前に……いらない事ばっかり言った真琴ちゃんには、最後の一言だけは言って置かなきゃね。
「あぁ、真琴ちゃん」
「なっ、なんだよ?」
「食事の後片付けヨロシクね。……じゃあね」
罰ゲームを与えます。
愚か者には、これを忘れちゃイケマセン。
真菜ちゃんを虐めた罰だから、必ずやって置く様に。
「最悪だよコイツ。喰うだけ喰って、洗い物は放置かよ。……なんかやる事、成す事、段々、誰かさんに似てきやがったな」
なんか言った?
もしなんかクレームを言ったとしても、そんな話は聞かないよ。
寧ろ、文句を言わずに、無心でこの罰ゲームを受けなさい。
これは真琴ちゃん自身が撒いた種への罰ゲームなんだからね。
あぁ因みにだけど、私と、崇秀は、ちっとも似てないよ。
自分の食べた洗い物を、人に任すなんて真似、崇秀は、絶対しないからね。
そこんとこ宜しく。
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【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ♪<(_ _)>
倉津君、相変わらずの「ノンデリカシー」ですね(笑)
まぁまぁそれが功を奏して、今回は眞子の思い通りの展開(?)に成った訳なので。
取り敢えず、今回のノンデリカシーは、良かったのかもしれませんね(笑)
さてさて、そんな中。
ノンデリカシーを発動した罰として『食器を洗って置く事を命じられた』倉津君。
果たして、ちゃんと洗いに行くのか?
次回は、その辺の事を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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