第4話 一才の誕生日2

 料理がどんどん並べられていく。ピザやチキン、ナゲットやポテト他にも沢山の料理が並べられた。どれもこれも美味しそうだ。ケーキも母さんが朝から沢山焼いていたし、プリンやゼリーも下準備をしていて、固まるのを待っている状態だ。

 赤子に戻ったせいで一緒に料理をすることはできなかったけど、大きくなったら一緒に料理をさせて貰おう。これでも一人暮らしをしていた為、ある程度料理はできるのだ。そしたら久々に向こうの料理を作ってもいいかもしれない。

 ま、それができるのは何年後になるかって話だよね。

 基本的の料理は小さい頃から学んでいたけど、貴族などは台所にすら立たせて貰えないのだ。俺の母は不思議な考えの持ち主だったから色々体験させてもらえたという部分も多かった。

 平民も貴族も大体の人間が料理を小さい頃から教わることはない。それに男は畑仕事や街の守備などの仕事をしていて、家事をすることが殆どない為家事について教わることはほぼない。それでも独身男性として生きていく……つまり冒険者や騎士などの職業に就く予定の者は基本的なことだけ教わったりもする。

 冒険者や騎士は命をかけた仕事な為、いつ帰らぬ人になるか分からない。だから結婚する場合は同じ冒険者同士や騎士同士で行うことが多い。

 男女別に生活していて訓練も男女別な騎士は未婚の人間が多い様だが。


「涼、こっちにおいで」

「うー!」


 呼ばれたので素直に従おう。恐らく台所にいるのだと思う。俺は台所を目指してよちよちと歩く。やっと最近歩ける様になったのだ。腹筋や背筋などを鍛えるのはもう少し大きくなってからかな。歩ける様になったからと調子に乗って腹筋や背筋をやろうとしたら全く体が持ち上がらなくてちょっと凹んだ。

 まだまだ危ない歩き方だけど、頑張って歩いていくからちょっと待っててくれ。

 この短い足ではどう頑張っても少し時間がかかってしまう。今まで身長が180くらいあったのでこの小さな体での目線はとても違和感しかない。と言っても、最近までずっと寝っ転がっていたのだ。最初見ていた景色よりは多少高くなっただろう。


「おぉ、すごいわ涼。もう歩けるのね!」


 後ろでなんか喋っているが気にしない。俺は呼ばれているのだ。ほんの数年メートルなのに疲れた……


「まんま!」


 俺は母さんに向かってジャンプする。ちゃんと受け止めてもらえるのはわかっているので安心して飛び込む。


「ん。きた」

「うん、ありがとう。じゃぁ、ケーキの飾り付けをしましょう」


 ケーキの飾り付け!?

 俺はいちごやチョコをケーキの上にのっけた。そして最後にはちゃんと蝋燭も一本。若干手に生クリームがついた気がするけど見なかったことにしよう……美味しそうなケーキが出来上がった。俺の飾り付けもまぁまぁな出来だと思う。でも、王宮で食べたケーキの方が綺麗でおいしく見えたのは気のせいではないだろう。まだ上手に手を動かすことができなくてもどかしいけど、手がうまく動かせないなりに頑張ったと思う。


「上手にできたわね。じゃぁ、これは冷蔵庫にしまっておきましょうか」

「ん!」


 母さんは魔道具の様な機械の中にケーキを入れた。リュクスの時はあれも自分で作ってみたりしたっけ?結構複雑な回路を組んで作る魔道具だったので少しだけ大変だったのは覚えている。それでも魔法の袋よりよっぽど作るのは楽だったけど。あれは大変だったなぁ。もう作りたくないかもしれない。それでも便利だからついつい作りたくなっちゃうんだけどね。それに材料費の割にいい値段で売れるし。


「あっち!」

「ん?あぁ、もう少しこっちで待っててちょうだい」


 母さんは何故僕が父さん達の方へに行くのを妨げるのだろうか?


「なんで?」

「うーん、まだ秘密よ。もう少ししたらわかるから。ちょっと待ってて。じゃ、その間にこれを作りましょう?」


 そう言って取り出したのは組み立てる式の椅子だ。少し前に家に届いて一回組み立てたけど、もう一度閉まってしまったから使わないのかと思った椅子だ。

 俺に手伝えることがアツと思えないんだけど……ま、それでも周りをうろちょろしてるだけで楽しいからいいか。

 少しだけ狭い台所だけど、椅子を組み立てるのはそんなに大変ではなかった。意外と早く組み立て終わったし。


***


「あ、そろそろ向こうに行こうか。涼、おいで」

「ん」


 俺は言われた通りに行動する。一体どんなプレゼントをくれるのだろうか。(大人の間というやつかなんとなくそうだと思った)楽しみすぎて早足になりすぎたか。くそっ。まだ転けるのには対応できない。

 頭でわかっていても体を動かすのは別だ。

 ずでん、とこけたが顔だけは守る。こんなところで鼻血出すのはゴメンだ。そこで目にしたのは大きな箱。中に何が入っているのか分からないけど、とても大きな箱だ。そして、パァンとクラッカーが鳴った。俺の頭に降ってきたのは紙吹雪やロングテープなど、キラキラした細かいのが沢山降ってきた。

 昔のアレンがいる感覚で、掃除しないと。と思ったが、自分がまだ一才なのを思い出して。そんな心配はせずに楽しむことにした。


「きゃはは!」


 俺が喜んでいる時の声を出せば大人達は安心したような。そして温かい目で俺のことを見た。

 こけてどうなるかとも思ったが、祝って貰えた。嬉しい。祝われるのはこんなに嬉しいのだと初めて知った。アレンがいくら友人とはいえ王族である。王族からそう簡単に俺みたいな不審人物に物をあげるわけにいかないからプレゼントはも貰った事がなかった。オルゴールや不思議な魔道具はもらったりもしたけど、あれは明らかにプレゼントではない。だいぶ心臓に悪かった。この話はまた今度しようか。


「お誕生日おめでとう。涼」

「あいがと」

「うん、よくできました」

「さぁ、昼食にしようか。お腹が空いただろう?」

「そうね。沢山用意したから沢山食べてちょうだい」


 結果的に言えばパーティーは楽しく終える事が出来た。サプライズの箱にはとっても楽しそうなおもちゃが入っていた。積み木の様な感じだ。積み木やパズルや、形合わせゲームとしても使える万能な積み木。そう、積み木は木でできていた。それは当たり前だろう。だが、俺が異常なほどに喜んだのは素材が良かった。何故なら檜の木を使っているからだ。檜の木は魔法を使用する初級冒険者が必ず持っていると言える。簡易杖に使われている素材だからだ。魔法石や魔法鉱石などと組み合わせて使っていた。

 俺も最初は簡易杖だったんだ。懐かしいなぁ。

 妄想に浸ってしまったが、周りの人物に現実に引き戻され、俺は念願のチキンを食べる事が出来、満足だった。


***


 パーティーが終わってからは貰ったおもちゃで遊んだり、お昼寝をしたり、こんなのんびりとした時間を過ごせるのは今のうちだろうから。今のうちに楽しんでおこうと思ってぐーたら生活している。それでもまぁ、貴族正しく生きていると思う。


 俺は早々にませ木の器となり得る物を探さねばならない。そうしないと元の世界に戻れない。きっと向こうの世界ではアレンが死にそうになりながら結界の維持をしているだろうから。

 ま、俺が渡して行ったのは魔力増幅剤。本来手に入らない素材を使用している為、なかなか作ることはできないのだが、森の資源のお陰で大分量が作れた。この理由が森の近くに住んでた大半の理由である。

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