プロローグ

「わああぁぁぁぁ!!!」


何百年も生きた魔術師は命を落とした。ラゲール王国の生きた厄災、魔術師リュクス・クラウはこの時を境に姿を消した。勇者とも呼ばれるレオナルド・アーレストはリュクスと戦い、勝利した。正確にはこの世界から追い出した。魔法や武術に長けているレオナルドに誰か1人をこの世界から追い出すのなんて造作もないことであったし、それだけリュクスは嫌われていた為、誰もその意見に反対する者はいなかった。

 そんな出来事が起き、史上最悪と罵られていたリュクス・クラウはこの世界から姿を消した。それによって街に活気が戻ったのは言うまでもないが、上層部の人間はそれ以上の安心感を得ていた。


「やっと、やっとだ。アイツがいなくなったぞー!!!」

「そうだ!これから俺たちは怯えて過ごさなくて良いんだ!」

「うおおおおぉぉぉ!!!」

「レオナルド様万歳!レイナルド様万歳!レイナルド様万歳!」


 ご覧の通り街は活気に満ちた。それが幸せの崩壊だということに気が付かずに、だ。


 王宮でもみんなが生き生きと生活していた。ただ1人を除いて……


「リュクス……僕が不甲斐ないばかりに変な魔法をかけられた。ごめんね。本当にごめん」


 少年は「まだ一緒にいたかったのに」「リュクス、僕はどうやって生きていけばいい?」などと溢し、大粒の涙で頬と床を濡らした。いったいいつから泣いていたのかわからないが、目は真っ赤に腫れ、顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。


 これからこの国が迎えるのは破滅。リュクスという存在はそれだけ大事な役目を担っていた。

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